
ハラスメントとは、人を困らせたり動揺させたりする振る舞いという意味であり、英英辞典はこれを「圧力をかけて相手を悩ませる行為」「敵にくり返し攻撃を加える行為」などに分けて立てています。
英語の harassment をそのままカタカナにした語で、Wiktionary は日本語の「ハラスメント」を harassment から借りた語として載せました。
この記事では、ハラスメントの意味を英英辞典の語義ごとに切り分け、中期フランス語 harassement にさかのぼる語源、軍事で使うときの語義、sexual harassment や workplace harassment といった組み合わせ、そして強勢の位置が二通りある発音までを整理します。
根拠にしたのは Cambridge Dictionary・Oxford Learner’s Dictionaries・Wiktionary の記述だけです。
ハラスメントとは何か(結論)
ハラスメントとは、誰かを困らせたり、動揺させたりする振る舞いを指す言葉です。
Cambridge Dictionary は harassment を不可算名詞 [ U ] とし、学習者向けのレベルを C1 と示しています。
定義は「behaviour that annoys or upsets someone(誰かを困らせる、または動揺させる振る舞い)」。
この定義のすぐ下に最初の例として挙がっているのが、sexual harassment(性的な嫌がらせ)という組み合わせでした。
日本語への訳語としては、Cambridge Dictionary の翻訳欄が「いやがらせ」を、Wiktionary の翻訳欄が「嫌がらせ」を挙げています。
ハラスメントの語義の数は辞書ごとに違う
Cambridge Dictionary の見出しの項(Cambridge Advanced Learner’s Dictionary)が立てる語義は一つだけ。
American Dictionary の項(Cambridge Academic Content Dictionary)も語義は一つで、言い回しが少しだけ違います。
Business English の項(Cambridge Business English Dictionary)は、語義を二つに分けました。
Oxford Learner’s Dictionaries は二つ、Wiktionary は三つの語義を立てています。
辞書が増えるにつれて、人を困らせる振る舞いという語義に、法律の札の付いた語義と、軍事の語義が加わっていきます。
この記事では、辞書が立てる順に一つずつ見ていきましょう。
ハラスメントの例文を Cambridge Dictionary で読む
Cambridge Dictionary の見出しの項には、五つの例文が並んでいます。
一つ目は「最近、大きく報じられた性的な嫌がらせの事件の結果として、人々の態度は変わりつつあるようだ」。
二つ目は「性的な嫌がらせの申し立てを受けて、三人の海軍士官に対して懲戒の手続きが取られることになった」です。
三つ目の「職場での性的な嫌がらせは、ささいな問題ではない」も、sexual harassment を主語に置いた文でした。
四つ目は「法律は今では、人々を嫌がらせから守ることができる」、五つ目は「その嫌がらせとされる行為は、二年にわたって行われた」となっています。
五つのうち三つが sexual harassment を使っており、この組み合わせがいかに基本の形かが見えてくるでしょう。
ハラスメントのアメリカ英語の定義
American Dictionary の項の定義は「behavior that annoys or troubles someone(誰かを困らせる、または悩ませる振る舞い)」です。
見出しの項と比べると、綴りが behaviour から behavior に変わり、upsets(動揺させる)が troubles(悩ませる)に置き換わっています。
発音は /həˈræs·mənt , ˈhær·əs·mənt/ の二つが並べられました。
例文は「職場での性的な嫌がらせについての苦情は、ここ数年で増えている」という一文。
この例文の中で、同辞典は sexual harassment を「不快な性的な誘いかけや行為」と言い換えて説明しています。
ハラスメントのビジネス英語の語義は LAW の札つき
Cambridge Dictionary の Business English の項は、一つ目の語義に LAW(法律)の札を付けています。
定義は「人に精神的または感情的な苦しみを与える違法な振る舞い」。
その中身には「正当な目的のない、望まれない接触のくり返し・侮辱・脅し・身体に触れること・不快な言葉づかい」が含まれます。
例文は「その会社は、職場での嫌がらせと人種差別の訴えを調べた」と「嫌がらせの被害者は、損害賠償を得るために裁判所で訴えを起こすことができる」の二つです。
ここで訳しているのは英英辞典の定義文と例文であり、特定の国の法律の条文ではありません。
ハラスメントのビジネス英語の二つ目の語義
Business English の項の二つ目の語義には、札が付いていません。
定義は「誰かに対する、脅すような、または相手を困らせたり動揺させたりする振る舞い」です。
見出しの項の定義に「threatening(脅すような)」が加わった形と読めます。
例文はインターネット上での嫌がらせを扱った一文で、harassment online という語順。
同じ項には「to be subject / subjected to harassment(嫌がらせを受ける)」という型も載っています。
さらに See also の欄には、racial harassment と sexual harassment の二つが並んでいます。
ハラスメントの「圧力をかけて悩ませる行為」の語義
Oxford Learner’s Dictionaries の第一の語義は、「相手に圧力をかけたり、不快なことを言ったりしたりして、その人を困らせる、または悩ませる行為」です。
Cambridge Dictionary が「振る舞い」と言うところを、Oxford Learner’s Dictionaries は「the act(行為)」という語を使っています。
困らせ方として「圧力をかけること」と「不快なことを言う・する」の二つを具体的に挙げているのが、この定義の特徴でしょう。
示されている組み合わせは sexual/racial harassment(性的な/人種的な嫌がらせ)。
もう一つが workplace/street harassment で、同辞典は「職場で/路上で起きるもの」と説明を添えました。
ハラスメントは軍事では「くり返しの攻撃」
Oxford Learner’s Dictionaries の第二の語義は、「敵にくり返し攻撃を加える行為」です。
示されている形は guerrilla harassment of the enemy(敵へのゲリラ的なくり返しの攻撃)。
Wiktionary も三つ目の語義に military(軍事)の札を付け、「敵の部隊を消耗させるために、小規模な攻撃をくり返し用いること」と定義しています。
用例として引かれているのは、The Battle of Samar という戦いを解説した動画の一節で、航空機が「必死の harassment attacks(くり返しの攻撃)」を仕掛ける場面です。
派生語の欄には harassment and interdiction という形も載っています。
日常の嫌がらせとは別に、こうした軍事の語義があることは覚えておきたい点です。
ハラスメントの Wiktionary の語義
Wiktionary の第一の語義は「心配と苦痛を引き起こす、しつこい攻撃と批判」。
第二の語義は「わざと行う、しつこいつきまといや威圧」です。
第二の語義の用例には、学校で起きた性的な嫌がらせの報告への対応を扱ったニュース記事の一節が引かれています。
翻訳欄の見出しでは、第一の語義が「persistent attacks and criticism causing worry and distress」、第二の語義が「deliberate pestering or annoying」とまとめられました。
persistent(しつこい)と deliberate(わざとの)という二つの語が、この辞典の語義を分ける目印になっています。
ハラスメントの語源は中期フランス語 harassement
Wiktionary の語源欄は、harassment を中期フランス語の harassement からの借用語としています。
同じ欄は続けて、英語の中では harass に -ment が付いた形と分析できる、と記しました。
Cambridge Dictionary の見出し語の一覧には、harassment の前に harass・harassed・harasser・harassing が並んでいます。
今回参照した Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries の記述には、語源の説明は載っていません。
harass と -ment のように、語の後ろに付いて品詞を変える部品があります。
その働きは接尾辞とは?意味と一覧で確かめられます。↓

ハラスメントの英語 harassment の発音は二通り
Cambridge Dictionary はイギリス英語を /ˈhær.əs.mənt/ と /həˈræs.mənt/、アメリカ英語を /həˈræs.mənt/ と /ˈher.əs.mənt/ と示しています。
Oxford Learner’s Dictionaries の表記は音節の区切りの点を除けばほぼ重なり、違いはアメリカ英語の二つ目が /ˈhærəsmənt/ になっている点だけです。
Wiktionary の表記は /həˈɹæsmənt/ と /ˈhæɹəsmənt/。
強勢の位置は、第一音節に置く形と、第二音節に置く形の二通りです。
/ˈhær/ を強く読むか、/ˈræs/ を強く読むかの違い。
どちらも辞書に載っている発音なので、片方だけが正しいわけではありません。
ハラスメントの発音で気をつける点
二つの辞書は、並べる順番をイギリス英語とアメリカ英語で入れ替えています。
Cambridge Dictionary も Oxford Learner’s Dictionaries も、イギリス英語では第一音節に強勢のある形を先に、アメリカ英語では第二音節に強勢のある形を先に置きました。
Wiktionary は、第一音節に強勢を置く /ˈhæɹəsmənt/ に dated(古い)の札を付けています。
Cambridge Dictionary のアメリカ英語には、語頭を /ˈher/ と読む形も載っているのが目を引くところ。
なお Business English の項は、イギリス英語の表記を /ˈhærəsmənt/ 一つだけにしています。
ハラスメントは数えない名詞
Cambridge Dictionary は三つの項すべてで harassment を [ U ](不可算)としています。
Oxford Learner’s Dictionaries の表記も [uncountable] です。
辞書の例文を見ても、sexual harassment・the alleged harassment・some form of harassment のように、harassment の前に a は付いていません。
| 項目 | 辞書の記述 |
|---|---|
| 品詞 | 名詞(Cambridge は [ U ]・Oxford は [uncountable]) |
| レベル | C1(Cambridge) |
| 札 | LAW(Business English の一つ目の語義)/military(Wiktionary の三つ目の語義) |
| 語義の数 | Cambridge 1・American 1・Business English 2・Oxford 2・Wiktionary 3 |
| 同義語 | torment・molestation(Wiktionary) |
| 語源 | 中期フランス語 harassement からの借用(Wiktionary) |
| 関連語 | harass・harassed・harasser・harassing |
数えられる名詞と数えられない名詞の見分けは、a や -s の付け方に直結します。
基本の考え方は可算名詞とは?にまとめています。↓

ハラスメントと一緒に使う英単語
辞書の例文と組み合わせ欄から拾える形は、何の嫌がらせかを前に置くものが中心です。
sexual harassment・racial harassment・workplace harassment・street harassment・guerrilla harassment。
動詞と組む形としては、Business English の項の be subject / subjected to harassment が載っています。
名詞と of でつなぐ形も多く、allegations of sexual harassment(性的な嫌がらせの申し立て)・claims of workplace harassment(職場での嫌がらせの訴え)・complaints of sexual harassment(性的な嫌がらせの苦情)・victims of harassment(嫌がらせの被害者)は、どれも例文に出てくる形。
the alleged harassment(嫌がらせとされる行為)のように、形容詞を前に置く使い方もあります。
ハラスメントから生まれた派生語
Wiktionary は派生語として antiharassment・cyberharassment・harassment and interdiction・harizzment・nonharassment・overharassment・sexual harassment・street harassment・textual harassment を挙げています。
Cambridge Dictionary の「ほかの意味」の欄には、sexual harassment・anti-harassment・racial harassment の三つが並びました。
anti-harassment は、Wiktionary ではハイフンなしの antiharassment という綴りで載っています。
並んだ派生語の多くは、anti-・non-・over-・cyber- のような要素を前に付けた形でしょう。
各派生語の語義そのものは今回の一次ソースに載っていないため、ここでは一覧にとどめます。
ハラスメントの同義語と関連語
Wiktionary が同義語として挙げるのは torment と molestation の二つです。
Cambridge Dictionary は SMART Vocabulary の「人や動物をひどく扱うこと」という分類に harassment を入れています。
同じ分類に並ぶのは abuse of power・abuser・anti-harassment・ill-treat・ill-treatment・victimization・victimize など。
ほかに a raw deal・at the hands of someone・put someone through something といった成句も、同じ一覧に入っています。
Cambridge Dictionary では harassment が、人をひどく扱う語のまとまりの一つとして整理されていることが分かります。
ハラスメントは各国語でどう訳されるか
Cambridge Dictionary の翻訳欄では、中国語(簡体字)が「骚扰行为」、スペイン語が acoso、ポルトガル語が assédio、フランス語が harcèlement、ドイツ語が die Belästigung です。
日本語の訳は「いやがらせ」。
Wiktionary は、harassment を借りてできた語として日本語の「ハラスメント」とロシア語の хара́ссмент を挙げています。
ロシア語の翻訳欄では、хара́ссмент に neologism(新語)の札が付いていました。
多くの言語が自分の言葉で訳しているなかで、日本語とロシア語は英語の音をそのまま借りた形も持っている、という並びです。
ハラスメントについてよくある質問
Wiktionary の語源欄は、中期フランス語の harassement からの借用語としています。
同じ欄は、英語の中では harass に -ment が付いた形と分析できるとも記しています。
今回参照した Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries の記述には、語源の説明はありません。
辞書には、第一音節に強勢を置く形と、第二音節に置く形の二通りが載っています。
Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries は、イギリス英語では /ˈhærəsmənt/ 系を、アメリカ英語では /həˈræsmənt/ 系を先に示しています。
Wiktionary は /ˈhæɹəsmənt/ に dated(古い)の札を付けています。
どちらも辞書に載っている発音です。
Cambridge Dictionary は harassment を [ U ]、Oxford Learner’s Dictionaries は [uncountable] としています。
どちらも数えない名詞という扱いです。
辞書の例文でも、harassment の前に a は付いていません。
人を困らせる振る舞いのほかに、軍事の語義もあります。
Oxford Learner’s Dictionaries は第二の語義を「敵にくり返し攻撃を加える行為」とし、guerrilla harassment of the enemy という形を示しています。
Wiktionary も military の札を付けて、「敵の部隊を消耗させるために、小規模な攻撃をくり返し用いること」と定義しています。
ハラスメントのまとめ
ハラスメントとは、誰かを困らせたり動揺させたりする振る舞いという意味であり、相手に圧力をかけて悩ませる行為という意味でもあります。
軍事の文脈では、敵にくり返し攻撃を加えて消耗させる行為も指します。
語源は Wiktionary によれば中期フランス語 harassement からの借用で、英語の中では harass + -ment と分析できる語。
英語で使うときに押さえておきたいのは、数えない名詞であること、sexual・racial・workplace など何の嫌がらせかを前に置くこと、そして強勢の位置が二通りあることの三つです。
辞書によって語義の数も言い回しも違うので、迷ったら英英辞典の定義を並べて読むのが近道でしょう。
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日本語と英語でずれるカタカナ語を、同じ英英辞典で確かめられます
語源・発音記号・例文つき
ハラスメントの参考文献
harassment の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と辞書で確認しました。
- Cambridge Dictionary|harassment(Cambridge University Press 公式辞書)
- Oxford Learner’s Dictionaries|harassment(名詞)(Oxford University Press 公式辞書)
- Wiktionary|harassment(Wiktionary 英語版)
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