接尾辞とは、単語の後ろに付けて新しい語を作る文字や文字のまとまりのことです。英語では suffix と呼び、-ing、-tion、-ful のように前にハイフンを置いて表記します。
接尾辞のやっかいなところは、意味を足すだけでなく品詞そのものを変えてしまう点にあります。同じ語幹から名詞も形容詞も動詞も作れるので、どの接尾辞がどの品詞を生むかを知っていれば、知らない単語でも役割が読めるようになります。この記事では、接尾辞の定義と語源を押さえたうえで、品詞別の一覧、綴りの変化、そして -ing・-tion・-ful の成り立ちを順に整理します。
接尾辞とは何か(結論)
接尾辞とは、語の末尾に付いて別の語を作る要素で、いちばんの役割は「その語がどの品詞なのかを示すこと」です。
forget と use に -ful を付ければ forgetful、useful という形容詞になります。state と govern に -ment を付ければ statement、government という名詞になり、complicate と create に -ion を付ければ complication、creation という名詞になります。もとの語の品詞が何であれ、付いた接尾辞のほうが出来上がりの品詞を決めています。
この性質は読解でそのまま使えます。語尾が -ment で終わっていれば名詞である可能性が高く、commitment や contentment のように意味を知らない語でも文の中での働きが先に分かります。sweet に -ness が付いた sweetness は形容詞から名詞へ、slowly の -ly は副詞であることの目印、-less は名詞を「〜のない」という形容詞に変える、というのが典型的な動き方です。
接尾辞という名前の語源
suffix という語が名詞として記録に現れるのは1778年で、18世紀後半の比較的新しい用語です。近代ラテン語 suffixum にさかのぼります。
suffixum はラテン語の動詞 suffigere の中性過去分詞形で、suffigere は「下に留める、留め付ける」を意味しました。分解すると sub-(下に、下から)と figere(留める、固定する)の二つです。figere は「突き刺す、固定する」を表す印欧祖語の語根 *dheigw- にさかのぼります。
英語の動詞 suffix はもともと1600年ごろに「下に置く」という意味で使われており、文法用語としての用法は名詞と同じ1778年に現れました。suffixal、suffixation という派生形も同じ流れの語です。名前の芯にあるのは「語の末尾に留め付けられたもの」という物理的な像で、そのまま働きを言い当てています。
接尾辞と接頭辞・接辞の違い
付く位置と、変えるものが違います。接尾辞は末尾に付いて品詞を変え、接頭辞は先頭に付いて意味を変えるのが基本です。
| 呼び名 | 英語 | 付く位置 | おもに変えるもの | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 接尾辞 | suffix | 語の後ろ | 品詞 | useful、statement、happiness |
| 接頭辞 | prefix | 語の前 | 意味 | impossible、pre-war、overcook |
| 接辞 | affix | 前後をまとめた総称 | — | 上の両方を含む |
| 接中辞 | infix | 語の内部 | — | 英語では例が少ない |
接頭辞は反対の意味を作ったり(possible → impossible、able → unable)、否定を表したり(payment → non-payment)、時や場所や程度を示したり(war → pre-war、terrestrial → extraterrestrial、cook → overcook)します。品詞はふつう変わりません。unable は able と同じ形容詞のままです。
語の作り方には、接頭辞・接尾辞のほかに品詞転換(conversion)と複合(compounding)があります。名詞の email や microwave がそのまま動詞として使われるのが品詞転換、back と ache が結び付いて backache になるのが複合です。接尾辞はこの四つのうちの一つという位置付けになります。
名詞を作る接尾辞の一覧
名詞を作る接尾辞はもっとも数が多く、動作・状態・人・集団のどれを表すかでゆるやかに分かれます。
| 接尾辞 | 名詞の例 |
|---|---|
| -age | baggage、village、postage |
| -al | arrival、burial、deferral |
| -ance / -ence | reliance、defence、insistence |
| -dom | boredom、freedom、kingdom |
| -ee | employee、payee、trainee |
| -er / -or | driver、writer、director |
| -hood | brotherhood、childhood、neighbourhood |
| -ism / -ist | capitalism / capitalist、socialism / socialist |
| -ity / -ty | brutality、equality、cruelty |
| -ment | amazement、disappointment、parliament |
| -ness | happiness、kindness、usefulness |
| -ship | friendship、membership、workmanship |
| -sion / -tion / -xion | expression、population、complexion |
-ism と -ist は対で覚えると効率がよく、-ism が思想や主義そのものを、-ist がその思想を奉じる人を指します。capitalism と capitalist、socialism と socialist の関係がそれです。-ee と -er も対になりやすく、employee は雇われる側、employer は雇う側を表します。
形容詞を作る接尾辞の一覧
形容詞を作る接尾辞は「〜に満ちた」「〜のない」「〜できる」のように、名詞や動詞との関係を型で表します。
| 接尾辞 | 形容詞の例 |
|---|---|
| -able / -ible | drinkable、portable、flexible |
| -al | brutal、formal、postal |
| -en | broken、golden、wooden |
| -ese / -i / -ian / -ish | Japanese、Iraqi、Canadian、Spanish |
| -ful | forgetful、helpful、useful |
| -ic | classic、Islamic、poetic |
| -ive | active、passive、productive |
| -less | homeless、hopeless、useless |
| -ly | daily、monthly、yearly |
| -ous | cautious、famous、nervous |
| -y | cloudy、rainy、windy |
-ese、-i、-ian、-ish は国や地域に関わる形容詞を作る一群です。Chinese、Vietnamese、Pakistani、Yemeni、Malaysian、Peruvian、British のように、どの接尾辞が付くかは国ごとに決まっており規則では決められません。-ish には childish のように「〜っぽい」という意味を足す用法もあります。
動詞と副詞を作る接尾辞の一覧
動詞を作る接尾辞は四つ、副詞を作る接尾辞は三つに絞れます。数が少ないぶん、見つけたときの判定は確実です。
| 品詞 | 接尾辞 | 例 |
|---|---|---|
| 動詞 | -ate | complicate、dominate、irritate |
| 動詞 | -en | harden、soften、shorten |
| 動詞 | -ify | beautify、clarify、identify |
| 動詞 | -ise / -ize | economise、realise、industrialize |
| 副詞 | -ly | calmly、easily、quickly |
| 副詞 | -ward(s) | downwards、homeward(s)、upwards |
| 副詞 | -wise | clockwise、anti-clockwise、edgewise |
-ise と -ize は綴りの選択に地域差があり、-ise はイギリス英語で、-ize はアメリカ英語でよく使われます。どちらか一方だけが正しいわけではありませんが、一つの文章の中では揃えるのがふつうです。-en は golden のように形容詞を作る用法と、harden のように動詞を作る用法の両方を持つので、文中での働きから判断します。
接尾辞が付くと綴りが変わる
接尾辞は語の末尾に食い込むため、もとの語の綴りを変えてしまうことがよくあります。型は四つに整理できます。
| 変化 | もとの語+接尾辞 | 出来上がり |
|---|---|---|
| 語末の -e が消える | complicate、create + -ion | complication、creation |
| -y が i になる | beauty、duty + -ful | beautiful、dutiful |
| -y が i になる | heavy、ready + -ness | heaviness、readiness |
| -le が il になる | able、possible + -ity | ability、possibility |
| -t が ss になる | permit、omit + -ion | permission、omission |
綴りの変化は耳で覚えた発音とずれることが多く、書くときの事故になりやすい部分です。規則として丸ごと暗記するより、学習者向けの英英辞典で派生形の綴りを確かめる習慣を付けるほうが早く確実になります。
接尾辞 -ing には三つの系統がある
-ing は見た目が一つでも、由来の異なる三つの接尾辞が現代英語で同じ形に落ち着いたものです。
一つ目は動詞に付いて「その動作・結果・産物・材料」を表す名詞を作る -ing で、古英語の -ing、-ung に、さらに古くはゲルマン祖語の *-unga-、*-inga- にさかのぼります。オランダ語の -ing やドイツ語の -ung が同じ系統の語尾です。初期にはひとまとまりの完了した動作や習慣的な動作を表しましたが、中英語から現代英語にかけて使い道が大きく広がりました。
二つ目は現在分詞を作る -ing で、こちらは古英語の -end、-ende が中英語で置き換わった形です。印欧祖語の *-nt- にさかのぼり、ラテン語の -ens、-ans やギリシャ語の -ōn と同じ系統になります。三つ目は Birmingham や Nottingham のような地名に残る -ing で、共通の出自や集団を表す古英語の語尾です。
名詞を作る -ing のほうが歴史的に古く、現在分詞の -ing が後からそれに形を合わせました。living language の living は現在分詞由来の形容詞、living at home は動作を表す名詞用法と、同じ形が別の働きをするのはこの合流のためです。現代の文では、どちらの -ing なのかを形からは決められないので、文中の位置で判断することになります。
接尾辞 -tion と -ful の成り立ち
-tion はラテン語由来の名詞語尾、-ful はもともと独立した英語の単語という、まったく別の出自を持ちます。
-tion は、それ自体が一つの接尾辞というより、語形成要素の -ion が -t や -te で終わる語幹や別の接尾辞に付いたときに生まれる音のまとまりです。-ion はラテン語の -ionem、-io にさかのぼります。語幹の末尾が -s- のときはラテン語で規則的に -sion になり、mission や passion がその形です。中英語では古フランス語を経て -cion と綴られることが多く、のちに -tion へ整えられました。ただし coercion や suspicion の -c- は語幹の側に属するもので、この整理の対象外です。
-ful は形容詞 full が前の名詞と一体化して語尾になったもので、古英語では -full、-ful と綴られました。ドイツ語の -voll、古ノルド語の -fullr、デンマーク語の -fuld が同じ系統です。意味は「〜に満ちた、〜を持つ、〜を特徴とする」で、handful や bellyful のように「入る量」を表す用法もあります。
古英語や中英語では、full を語の頭に付けるほうがむしろ一般的でした。古英語の fulbrecan(violate)、fulslean(kill outright)、fulripod(mature)、中英語の ful-comen、ful-lasting、ful-thriven がその名残です。多くの -ful 形容詞は歴史のどこかで「〜に満ちた」という受身寄りの意味と「〜を引き起こす」という能動寄りの意味の両方を持っていました。
覚えておきたい接尾辞の語源
よく出会う接尾辞のうち、-ness、-less、-er、-ly の四つは由来を知っておくと意味の見当が付きやすくなります。
| 接尾辞 | もとの形 | 芯にある意味 |
|---|---|---|
| -ness | 古英語 -nes(s)、ゲルマン祖語 *in-assu- | 動作・性質・状態を表す抽象名詞を作る |
| -less | 古英語 -leas、leas(free from, devoid of) | 欠いている、できない |
| -er | 古英語 -ere、ゲルマン祖語 *-ari | それに関わる人(ラテン語 -or に対応) |
| -ly | 古英語 -lic / -lice | その性質を持つ、そのやり方で |
-less は loose や lease と同じ印欧祖語の語根 *leu-(ほどく、切り分ける)にさかのぼります。「自由な、欠いている」という語感が、hopeless や useless の「〜がない」につながっています。-er は本来ゲルマン系の語に付く語尾で、ラテン語由来の動詞、とくに -ate で終わる動詞は -or を取ることが多いのですが、eraser や laborer のような例外も多数あります。
接尾辞から単語を作るときの手順
作りたい品詞から接尾辞を選び、綴りの変化を当ててから、辞書でその形が実在するかを確かめる。この三段階で進めます。
たとえば use を出発点にすると、形容詞にしたければ -ful を足して useful、その否定にしたければ -less を足して useless、名詞にしたければ -ness を重ねて usefulness になります。接尾辞は一つとは限らず、use → useful → usefulness のように積み重なることがあります。
気を付けたいのは、規則どおりに組み立てた形が必ず実在するとは限らない点です。名詞を作る接尾辞は複数あり、-ment、-ness、-ity、-tion のどれが選ばれるかは語ごとに決まっています。組み立てた形を思い付いたら、そのまま使わずに英英辞典で見出し語になっているかを確かめるのが、遠回りに見えていちばん速い方法です。
接尾辞についてよくある質問
目的によって違います。文の構造を読み解くなら品詞を決める接尾辞のほうが役に立ち、単語の意味を推測するなら意味を足す接頭辞のほうが手がかりになります。読解では両方を同時に見るのが実際の使い方になります。
両方です。もともと別系統の語尾で、動作を表す名詞を作る -ing のほうが古く、現在分詞の -ing が後からその形に合流しました。現代英語では形が同じなので、文中での働きから判断します。
どちらも正しい綴りです。-ise はイギリス英語で、-ize はアメリカ英語でよく使われます。一つの文章の中でどちらかに揃えることのほうが大切です。
組み立ての練習としては有効ですが、そのまま文章に使うのは避けたほうが安全です。同じ品詞を作る接尾辞が複数あり、どれが選ばれるかは語ごとに決まっているため、辞書で見出し語になっているかを確かめてから使います。
接尾辞のまとめ
接尾辞とは、語の末尾に付いて新しい語を作る要素で、いちばんの働きは品詞を示すことです。-ment や -ness や -tion は名詞を、-ful や -less や -ous は形容詞を、-ate や -ify は動詞を、-ly や -wise は副詞を作ります。語頭に付いて意味を変える接頭辞とは、付く位置も変えるものも違います。
接尾辞が付くと綴りが変わることが多く、-e が落ちる、-y が i になる、-le が il になる、-t が ss になるという四つの型を押さえておくと書き間違いが減ります。-ing は名詞を作る系統・現在分詞の系統・地名に残る系統の三つが合流した形、-tion はラテン語の -ion が -t で終わる語幹に付いた形、-ful は形容詞 full が語尾になった形です。組み立てた語形は最後に英英辞典で実在を確かめる、というひと手間が精度を決めます。
接尾辞の出典
接尾辞の定義、品詞別の一覧、綴りの変化、語源は以下の英英辞典、語源辞典、および Cambridge の文法解説で確認しました。

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