
エンパワーメントとは、自分の望むことをする自由と力を手に入れていく過程であり、同時に、誰かにその力や権限を渡す行いを指す言葉です。
英語の empowerment をそのままカタカナにした語で、語源は動詞 empower に名詞を作る接尾辞 -ment が付いた形。
この記事では、エンパワーメントの意味を英英辞典の語義から整理し、empower + -ment という語源、人事と経営で「社員に決めさせること」を指す用法、オックスフォードが formal の札を付けた「権限を与える」の語義、南アフリカの政策を指す使い方、そして辞書が示す発音と強勢の位置までを順に見ていきます。
根拠にしたのは Cambridge Dictionary・Oxford Learner’s Dictionaries・Wiktionary の記述だけです。
エンパワーメントとは何か(結論)
エンパワーメントとは、①自分のやりたいことをやる自由と力を得ていく過程、②ある集団に自由や権利をより多く与えること、③力や権限を与えられている状態、この三方向を指す言葉です。
英英辞典はこの語を不可算名詞として立てています。
Cambridge Dictionary の定義は「自分の望むことをする、あるいは自分に起きることを自分で決めるための、自由と力を得ていく過程」。
例として female / youth empowerment(女性の・若者のエンパワーメント)と political / economic empowerment(政治的な・経済的なエンパワーメント)が並びました。
同辞典の例文は「ワールド・ワイド・ウェブの思想の一部は、個人のエンパワーメントである」。
力を得る側から見ても、力を渡す側から見ても同じ語で言えるところが、この言葉のいちばんの特徴になります。
エンパワーメントの語義はケンブリッジでどう書かれているか
Cambridge Dictionary は empowerment を noun [ U ]、つまり数えられない名詞としています。
発音はイギリス英語が /ɪmˈpaʊə.mənt/、アメリカ英語が /ɪmˈpaʊ.ɚ.mənt/。
定義の中心に置かれているのは process(過程)という語で、一度きりの出来事ではありません。
freedom and power(自由と力)を得る方向と、to control what happens to you(自分に起きることを自分で決める)方向、この二つの言い方で説明されました。
自分の人生の決定権を自分の手に取り戻していく、という含みが読み取れるでしょう。
同辞典はこの語を SMART Vocabulary の「Freedom to act(行動する自由)」の仲間に入れています。
エンパワーメントの語源は empower+-ment
Wiktionary は empowerment の語源を empower + -ment と記しました。
動詞 empower に、名詞を作る接尾辞 -ment が付いた形です。
ラテン語やギリシャ語までさかのぼる説明は、三つの辞典のどれにも載っていません。
Cambridge Dictionary の「More meanings of empowerment」の欄も、この語を empower の項の名詞として扱っています。
辞書の見出しの並びは emporium → empower → empowered → empowering → empowerment → empress の順。
動詞 empower から育った枝が、名詞の empowerment だと分かります。
エンパワーメントの -ment が示す「行い」と「状態」
-ment は、動詞をその行いや結果の状態を表す名詞に変える接尾辞です。
empower が「力や権限を与える」なら、empowerment は「力や権限を与えること」そのもの。
Wiktionary が立てる四つの語義のうち三つめは The state of being empowered、つまり「力を与えられている状態」でした。
行いと状態の両方を一語で受け持つのが、この語の読みにくさの正体かもしれません。
接尾辞が一つ付くだけで、品詞も意味の幅も変わります。
英語の単語はこの仕組みで増えていく。
-ment のほかにどんな接尾辞が働いているかは接尾辞の意味と一覧にまとめました。↓

エンパワーメントは数えられない名詞
Cambridge Dictionary は見出しの語義に noun [ U ] と記し、Business English の項でも同じく noun [ U ] と記しています。
Oxford Learner’s Dictionaries の表記は [uncountable]。
三つの辞典のどこにも複数形 empowerments は載っていません。
「エンパワーメントが2つある」という言い方は、辞書の記述からは出てこない形です。
数えずに of でつなぐのが辞書の示す使い方で、the empowerment of the individual(個人のエンパワーメント)がその代表例。
Wiktionary はこの語を4音節の語に分類しました。
| 項目 | 辞書の記述 |
|---|---|
| 品詞 | 名詞(不可算 [ U ]/[uncountable]) |
| 語源 | empower + -ment(Wiktionary) |
| 発音(英) | /ɪmˈpaʊə.mənt/(Cambridge)//ɪmˈpaʊəmənt/(Oxford) |
| 発音(米) | /ɪmˈpaʊ.ɚ.mənt/(Cambridge)//ɪmˈpaʊərmənt/(Oxford) |
| 札 | HR(Cambridge Business English)/formal(Oxford の第2語義) |
| 同義語 | authorization(Oxford の第2語義に synonym として) |
| 派生語 | disempowerment・youth empowerment・black economic empowerment |
| よく組む語 | economic・female・patient(Cambridge のコロケーション欄) |
| 音節 | 4音節の語(Wiktionary の分類) |
エンパワーメントのオックスフォードの第一の語義
Oxford Learner’s Dictionaries の第一の語義は「誰かに、自分の人生や自分が置かれている状況を、もっと自分で動かせるようにしてやる行い」です。
主語は力を渡す側に置かれています。
示されている形は female / black / personal empowerment(女性の・黒人の・個人としてのエンパワーメント)。
例として the empowerment of the individual(個人のエンパワーメント)も挙がりました。
同辞典はさらに see also black economic empowerment と添え、別の見出しへ送っています。
ケンブリッジが「力を得ていく過程」と書いたところを、オックスフォードは「力を持たせる行い」と書いた。
エンパワーメントの第二の語義は formal な「権限を与えること」
Oxford Learner’s Dictionaries の第二の語義には (formal) の札が付いています。
定義は「誰かに、何かをする力や権限を与える行い」。
そして同辞典は synonym authorization と記しました。
authorization は「権限を与えること、許可」を表す語です。
つまり硬い文脈のエンパワーメントは、心の問題ではなく手続きの話になります。
契約書や規程の中で見かけたら、この語義で読むのが安全でしょう。
エンパワーメントは人事では社員に決めさせること
Cambridge Dictionary の Business English の項には HR(人事)の札が付いています。
定義は「ある集団に、より多くの自由や権利を与えていく過程」です。
例文は「この経営の進め方は、社員が自分で決められるようにすること(エンパワーメント)を重く見ている」。
決めるのは上ではなく、仕事をしている本人だという設計。
決める権利を渡されると、仕事は「言われたこと」から「自分の仕事」に変わります。
その切り替わりを別の角度から言うのが当事者意識という言葉。
英語でどう言うかはオーナーシップの意味と語源で確かめられます。↓

エンパワーメントは経済の政策にも使われる
Cambridge Dictionary の Business English の項のもう一つの例文は、政府の政策についてのものです。
「政府の経済的エンパワーメントの計画は、貧しい地域で雇用を作り、生活の水準を上げることを目指している」。
ここでのエンパワーメントは、個人の気持ちではなく地域の経済力を指しています。
同辞典のコロケーション欄にも economic empowerment が筆頭で挙がりました。
その例文は「まず、意識・関心とそれに続く動きは地域に根ざしたもので、主に開発・雇用・経済的エンパワーメントへの地元の要求に関わっている」。
お金と仕事の話として使われる場面が、辞書の例文の中でもかなりの幅を占めています。
エンパワーメントのウィクショナリーの4つの語義
Wiktionary は empowerment に四つの語義を立てました。
一つめは「個人や集団が政治的・社会的・経済的な力を手にすること」。
二つめは「他の人が自分の力を見つけて自分のものにしていくのを支える過程」です。
三つめは「力を与えられている状態(一般的に、または特定の事柄について)」。
四つめは南アフリカの札が付いた「黒人の地位向上を促す政府の計画」です。
一つめは結果、二つめは支援、三つめは状態、四つめは制度。
エンパワーメントは「支える過程」でもある
Wiktionary の二つめの語義は、力を渡すのではなく、相手が自分で見つけるのを支える過程としてのエンパワーメントです。
この語義に添えられた The New York Times の2021年の記事の一節は、リーダーの新しい型を説明したもの。
「対照的に、新しい型はエンパワーメントについてのものだ、聞くことであって、話すことではない、思いやり・共感・謙虚さのことだ、力は分け合ったときに大きくなると理解することだ」。
同辞典はもう一つ、The Guardian の2024年の記事も引いています。
「それでも、異性愛の女性が先に動かなければならないという理由で、かつて自らを女性のエンパワーメントの灯台と位置づけた出会い系アプリの Bumble は、流れを読み落としたように見える」。
同じ語が、経営論でも社会批評でも使われていると分かります。
エンパワーメントは南アフリカでは政府の政策を指す
Wiktionary の四つめの語義には South Africa の札が付いています。
定義は「黒人の地位向上を促す政府の計画」です。
派生語の欄にも black economic empowerment が挙げられ、同じく南アフリカの札が添えられました。
Oxford Learner’s Dictionaries もこの語を独立した見出し black economic empowerment noun として立てています。
Cambridge Dictionary のコーパス例文にも「次の段階に残るには、明確で満足できる黒人エンパワーメントの戦略も持たなければならない」という一文があります。
地名の札が付く語義は、その国の文脈を知らないと読み違えやすいところ。
エンパワーメントと一緒に使う英単語
Cambridge Dictionary のコロケーション欄が挙げるのは economic・female・patient の三つです。
female empowerment の例文は「悲哀の場面は、女性のエンパワーメントの場面の一つである(ただし家父長制の中での話だが)」。
patient empowerment の例文は「彼らの議論の一部は、患者の参加・患者の自律・患者のエンパワーメントというホスピスの理想に忠実であり続ける可能性に触れている」。
見出しの語義の例としては female / youth empowerment と political / economic empowerment が並びました。
Oxford Learner’s Dictionaries が示す形は female / black / personal empowerment。
何についてのエンパワーメントかを前に一語置いて絞る形が、この語の基本の使い方です。
エンパワーメントの派生語は disempowerment
Wiktionary の派生語の欄には disempowerment が挙がっています。
dis- が付いて、力を奪うこと、力を失っている状態を表す語になりました。
同じ欄に並ぶのは youth empowerment(若者のエンパワーメント)と black economic empowerment。
Cambridge Dictionary の見出しの並びから拾える同族の語は empower(動詞)・empowered(形容詞)・empowering(形容詞)です。
Wiktionary の子孫の欄によれば、ドイツ語は Empowerment をそのまま英語から借り入れました。
英語の形のまま他の言語に入っていく語でもあるのです。
エンパワーメントと「行動する自由」の仲間の語
Cambridge Dictionary はこの語を SMART Vocabulary の「Freedom to act(行動する自由)」に分類しています。
同じ一覧に並ぶのは agency・agentic・agentive・locus of control・free hand・free rein・free pass・free-form など。
licence / license・manumission・voluntarily・untrammelled・unobstructed・unmolested も同じ仲間に入っています。
(as) free as a bird・at leisure・live your own life・free from something といった慣用句も並びました。
agency は「自分で動ける力」、locus of control は「自分に起きることを何が決めると感じているか」を指す語です。
エンパワーメントは、この「縛られずに動ける」という意味の輪の中にある語だと分かるでしょう。
エンパワーメントの英語 empowerment の発音は /ɪmˈpaʊə.mənt/
Cambridge Dictionary はイギリス英語を /ɪmˈpaʊə.mənt/、アメリカ英語を /ɪmˈpaʊ.ɚ.mənt/ と示しています。
Oxford Learner’s Dictionaries の表記は /ɪmˈpaʊəmənt/ と /ɪmˈpaʊərmənt/。
Wiktionary は /ɪmˈpaʊ.əɹ.mənt/ と表記し、音声はイングランド南部のものを載せました。
強勢は第二音節の /ˈpaʊ/ にあります。
つまり「エン」ではなく「パウ」を強く読む形。
カタカナの「エンパワーメント」は頭から読み始めがちですが、辞書の表記では一文字目に強勢はありません。
エンパワーメントの発音で気をつける点
第一音節は /ɪm/ で、「エン」ではなく「イム」に近い音です。
第二音節の /paʊ/ は二重母音で、power や how と同じ響き。
第三音節はイギリス英語が /ə/、アメリカ英語が /ɚ/ で、アメリカ英語では r が響きます。
Wiktionary の表記 /ɪmˈpaʊ.əɹ.mənt/ も r を書き入れた形です。
最後の /mənt/ は弱く、「メント」と伸ばして読む音ではありません。
Wiktionary はこの語を4音節の語に分類しており、カタカナの「エ・ン・パ・ワー・メ・ン・ト」とは数が合わないところにも注意したいところ。
エンパワーメントは他の言語ではどう言うか
Wiktionary は「力を与えること」の語義について各国語の訳を並べています。
フランス語は autonomisation、スペイン語とポルトガル語は empoderamiento・empoderamento、イタリア語は conferimento di potere。
ドイツ語は Empowerment・Ermächtigung・Bevollmächtigung、スウェーデン語は bemyndigande・fullmakt です。
「力を与えられている状態」の語義には、イタリア語の responsabilizzazione・emancipazione、エストニア語の võimestus・võimestumine が挙げられました。
Cambridge Dictionary の訳語欄は、中国語を「賦權(権を与える)、使有能力(力を持たせる)」、スペイン語を empoderamiento と示しています。
訳語が「権限を与える」側と「力を持つようになる」側に分かれているのは、英語の語義そのものが二方向を持つからでしょう。
エンパワーメントの実例は学術の文章に多い
Cambridge Dictionary は English Corpus から採った例文を15本並べています。
「その過程で、ある意味は増幅され──たとえば患者の参加とエンパワーメントという考え──他の意味は端に追いやられる」はその一つ。
「実際、以前は権利を奪われていた集団の政治的エンパワーメントは、彼らをより恒久的で強い力にし、逆行に抗わせる」という例文もあります。
医療の現場についての例文は「ほとんどの医療の現場で、我々は市民のエンパワーメントという掲げられた理想からは遠い」です。
「個人のエンパワーメントは、生活の質を高めるための重要な道具である」という一文も並びました。
学術の文章で、政治・医療・教育・福祉のどの分野にも現れる語だと分かります。
エンパワーメントで間違いやすい点
一つ目は、強勢とカタカナのずれです。
強勢は第二音節 /ˈpaʊ/ にあり、頭の「エン」を強く読むと辞書の音から離れます。
二つ目は、気持ちの話だと思い込むこと。
Oxford Learner’s Dictionaries の第二の語義は formal の札が付いた「権限を与える行い」で、同義語は authorization でした。
三つ目は、数えてしまうこと。
三つの辞典はいずれもこの語を不可算名詞としており、複数形は載っていません。
エンパワーメントについてよくある質問
動詞 empower に、名詞を作る接尾辞 -ment が付いた形です。
Wiktionary の語源欄には empower + -ment と記されています。
ラテン語やギリシャ語までさかのぼる説明は、Cambridge Dictionary・Oxford Learner’s Dictionaries・Wiktionary のどれにも載っていません。
Cambridge Dictionary の「More meanings of empowerment」の欄も、この語を empower の項の名詞として扱っています。
辞書の見出しの並びも empower → empowered → empowering → empowerment の順です。
その語義は辞書に立っています。
Oxford Learner’s Dictionaries の第二の語義は (formal) の札つきで「誰かに、何かをする力や権限を与える行い」と定義され、同義語として authorization が挙げられています。
ただしこれは二つめの語義です。
第一の語義は「誰かに、自分の人生や自分が置かれている状況をもっと自分で動かせるようにしてやる行い」で、Cambridge Dictionary の見出しの語義は「自由と力を得ていく過程」です。
硬い文脈では「権限を与えること」、一般の文脈では「力を得ていく過程」と読み分けるのが辞書に沿った理解になります。
辞書の記述からは複数形は出てきません。
Cambridge Dictionary は見出しの語義と Business English の項のどちらでも noun [ U ] と記しています。
Oxford Learner’s Dictionaries の表記は [uncountable] です。
辞書が示す形は the empowerment of the individual のように of でつなぐもので、empowerments という形は三つの辞典のどこにも載っていません。
Wiktionary は empowerment の四つめの語義に South Africa の札を付け、「黒人の地位向上を促す政府の計画」と定義しています。
同辞典の派生語の欄にも black economic empowerment が南アフリカの札つきで挙がっています。
Oxford Learner’s Dictionaries はこれを独立した見出し black economic empowerment noun として立て、第一の語義から see also で送っています。
Cambridge Dictionary のコーパス例文にも「次の段階に残るには、明確で満足できる黒人エンパワーメントの戦略も持たなければならない」という一文があります。
エンパワーメントのまとめ
エンパワーメントとは、自由と力を得ていく過程という意味であり、ある集団に自由や権利を与えていく過程という意味であり、力や権限を与えられている状態という意味でもあります。
語源は動詞 empower に接尾辞 -ment が付いた形で、辞書がさかのぼるのはここまで。
芯にあるのは「決める力がそちらへ移る」という向きです。
英語で使うときに押さえておきたいのは、強勢が第二音節 /ˈpaʊ/ にあること、数えない名詞なので of でつなぐこと、そして硬い文脈では authorization と同義の「権限を与えること」を指すことの三つ。
人事の文書で見かけたら、それは社員が自分で決められるようにすることを言っています。
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日本語と英語でずれるビジネス用語を、同じ英英辞典で確かめられます
語源・発音記号・例文つき
エンパワーメントの参考文献
empowerment の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と辞書で確認しました。
- Cambridge Dictionary|empowerment(Cambridge University Press 公式辞書)
- Oxford Learner’s Dictionaries|empowerment(名詞)(Oxford University Press 公式辞書)
- Wiktionary|empowerment(Wiktionary 英語版)
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