目的語とは、動詞が表す動作が及ぶ相手や中身を示す語句のことで、英語では object と呼びます。
日本語なら「を」や「に」が付くので目印がありますが、英語の目的語には印が付きません。かわりに置かれる位置が決まっていて、ふつうは動詞のすぐうしろに来ます。この記事では、目的語の定義と見つけ方から、直接目的語と間接目的語の違い、目的語になれる語の種類、前置詞の目的語、そして object という単語の語源までを順にたどります。
目的語とは何か(結論)
目的語とは、節を組み立てる五つの主要要素の一つで、動詞の動作が向かう先を表す部分です。残りの四つは主語・動詞・補語・修飾語です。
Cambridge の文法解説では、目的語は典型的には名詞句、つまり名詞や代名詞とその前後に付く語のまとまりであり、節の中では通常動詞のあとに続くと説明されています。Everyone likes her. の her、She knows everyone. の everyone、They didn’t take their mountain bikes with them. の their mountain bikes が、いずれも目的語に当たります。
辞書の側から見ると、目的語は「動詞の動作によって影響を受ける名詞や名詞句、または前置詞のあとに続く名詞や名詞句」と定義されています。I like ice cream. という文でいえば、ice cream が動詞 like の目的語です。日本語の学校文法では「何を」「誰を」に当たる部分、と言い換えると輪郭がつかみやすくなります。
目的語の見つけ方は「動詞に何を・誰をと尋ねる」
目的語を探す手順は単純です。まず動詞を見つけ、その動詞に「何を」「誰を」と尋ねて、答えになっている語句を拾います。
Did you enjoy the film? なら、enjoy に「何を」と尋ねた答えが the film です。I can’t find her name on the list. では find の答えが her name、Suzanne took my car keys. では took の答えが my car keys になります。答えになる語句がなければ、その文には目的語がありません。
| 例文 | 動詞 | 目的語 |
|---|---|---|
| That computer hasn’t got a mouse. | has got | a mouse |
| Nobody writes letters these days. | writes | letters |
| Does she play tennis? | play | tennis |
| We really enjoyed the evening. | enjoyed | the evening |
疑問文になっても、動詞と目的語の並びは崩れません。Does she play tennis? では助動詞 does が主語の前に出るだけで、play tennis の順序はそのまま残っています。日本語のように助詞で役割を示さないぶん、英語では語順そのものが目的語の印になっていると考えてください。
目的語を取る動詞と取らない動詞(他動詞と自動詞)
目的語を必要とする動詞を他動詞、目的語を取らない動詞を自動詞と呼びます。どちらに属するかは動詞ごとに決まっています。
| 種類 | 代表的な動詞 | 例文 |
|---|---|---|
| 他動詞として使うことが多い | ask、attend、believe、buy、consider、contact、describe、discuss、enjoy、expect、find、get、join、like、lose、love、make、need、receive、say、suggest、take、use、want、watch | Did you enjoy the film? |
| 自動詞として使うことが多い | appear、arrive、come、cough、die、disappear、fall、happen、lie、live、rain、rise、sneeze、snow、wait、work | Paula smiled and left. |
他動詞のうしろには前置詞を挟まずに目的語を置きます。The book emphasises the role of the arts in society. が正しい形で、emphasises on とは言いません。この点は日本語話者がつまずきやすいところで、「〜について強調する」という訳に引きずられて余計な前置詞を入れてしまう例が典型です。
同じ動詞が両方の使い方を持つこともあります。I just can’t eat hot food. と What time do you want to eat?、He drives a van for a delivery firm. と I learnt to drive when I was twenty. のように、目的語があってもなくても意味はほとんど変わりません。いっぽう He opened the door and walked in. と The door opened slowly. のように、目的語の有無で主語と動詞の関係そのものが変わる動詞もあります。
目的語になれる語(名詞・代名詞・動名詞・不定詞・that節)
目的語になれるのは名詞だけではありません。代名詞、動名詞、to 不定詞、that 節、wh 節も目的語の位置に入ります。
| 形 | 例文 | 目的語の部分 |
|---|---|---|
| 名詞句 | Suzanne took my car keys. | my car keys |
| 代名詞 | Yes I had them earlier. | them |
| -ing 形 | I always enjoy cooking. | cooking |
| to 不定詞 | She hopes to go to university next year. | to go to university next year |
| that 節 | I know (that) you’re telling the truth. | (that) you’re telling the truth |
| wh 節 | I can’t believe what he told me. | what he told me |
どの形を取るかは動詞ごとに決まっています。afford、agree、decide、hope、learn、manage、offer、plan、promise、refuse、want などは to 不定詞を続け、admit、avoid、deny、dislike、enjoy、finish、imagine、keep、mind、practise、risk などは -ing 形を続けます。I always enjoy cooking. は正しく、I always enjoy to cook. とは言いません。
hate、like、love、prefer のように両方を取る動詞もあり、-ing 形は行為そのものに、to 不定詞は好みや結果のほうに重心が寄ります。I love cooking Indian food. は作る過程を楽しんでいる言い方、We prefer to drive during the day whenever we can. は習慣としての選択を述べる言い方です。
直接目的語と間接目的語の違い
直接目的語は動詞の動作が影響を与える物や人、間接目的語はその直接目的語を受け取る側で、たいてい人か動物です。
They gave her a present when she left. では、渡された物である a present が直接目的語、受け取った人である her が間接目的語です。Can you get me some butter? なら some butter が直接目的語、me が間接目的語になります。動作の対象と受け手が別々に言い表されている形だと考えてください。
間接目的語には二つの決まりがあります。一つは、間接目的語は必ず直接目的語とセットで使うこと。もう一つは、間接目的語は必ず直接目的語より前に置くことです。She gave the dog its dinner. や Do I owe you some money? がその並びで、the dog と you が受け手に当たります。
目的語が二つ並ぶ第4文型と to・for を使った書き換え
間接目的語と直接目的語が並ぶ形は、to または for を使った前置詞句に置き換えられます。この場合は直接目的語のほうが先に来ます。
| 間接目的語+直接目的語 | 直接目的語+前置詞句 |
|---|---|
| He always gives the class too much homework. | He always gives too much homework to the class. |
| I never buy her flowers. | I never buy flowers for her. |
| I gave my brother an old jacket of mine. | I gave an old jacket of mine to my brother. |
| Edith found us an excellent violin teacher. | Edith found an excellent violin teacher for us. |
どちらの前置詞を使うかは動詞で決まります。to を取ることが多いのは bring、give、lend、offer、owe、promise、show、teach、tell、write、for を取ることが多いのは buy、find、get、make、order、save です。二つの目的語を取る動詞としては、ほかに ask、charge、fine、hand、leave、pay、send、serve、wish なども挙げられています。
Can I ask you a question? や They charged me £150 for three hours.、Buying things on the Internet saves people a lot of time. は、いずれも目的語が二つ並んだ形です。受け手を強調したいときは前置詞を使う言い方が選ばれやすく、どちらも文法的には正しい形として並存しています。
前置詞の目的語とは
前置詞のうしろに置かれる名詞や名詞句も目的語と呼ばれます。動詞の目的語と区別して、前置詞の目的語と言います。
辞書の定義でも、目的語は「動詞の動作の影響を受ける」ものと「前置詞に続く」ものの二通りが挙げられています。Thanks again for everything you did for me. の for me は、前置詞 for が代名詞 me を目的語として取っている形です。
前置詞とセットで使う動詞では、前置詞のあとに必ず目的語が必要になります。I don’t listen to the radio much. の the radio、It depends on the weather. の the weather がそれに当たります。句動詞も多くが目的語を取り、We won’t give out your email address to other companies. や They’ve put the price of fuel up again. のように、離れた位置に目的語が入ることもあります。
目的語になる代名詞の形(目的格)
代名詞が目的語になるときは、主語で使う形ではなく目的格の形に変わります。I は me、he は him、they は them になります。
| 主語の形 | 目的語の形 | 数 |
|---|---|---|
| I | me | 単数 |
| you | you | 単数・複数 |
| he / she / it | him / her / it | 単数 |
| we | us | 複数 |
| they | them | 複数 |
目的格が使われるのは、動詞のうしろと前置詞のうしろです。Paula’s coming to visit us in September. の us は動詞 visit の目的語、for me は前置詞のあとの目的語です。you と it は主語の形と目的語の形が同じなので、変化を意識する必要はありません。
-ing 形の前に意味上の主語を置くときにも目的格が使われます。Do you mind me being here while you’re working? や I don’t want to risk him losing his job. がその例です。日本語に訳すと主語のように見える部分でも、英語の形としては目的格が選ばれます。
目的語と補語の見分け方(イコールで結べるかどうか)
動詞のうしろの語句が主語とイコールで結べるなら補語、結べず別のものを指しているなら目的語です。
be、appear、become、look、seem のような連結動詞は目的語を取りません。This is Lucy. She’s my sister-in-law. の my sister-in-law は she と同じ人物を指しており、I felt really tired. の really tired も主語の状態を述べています。どちらも目的語ではなく、主語について情報を足す補語です。
いっぽう Everyone likes her. の her は everyone とは別の人物で、動作が及ぶ相手にあたるので目的語です。まず動詞が連結動詞かどうかを見て、次にうしろの語句が主語と同じものを指しているかを確かめる。この二段階で、目的語と補語はほぼ確実に切り分けられます。
目的語 object の語源はラテン語 obicere(前に投げる)
object は14世紀後半の英語で「感覚でとらえられる、手に触れられるもの」を意味しました。ラテン語で「前に投げる」を表す動詞にさかのぼります。
経路は古フランス語の object と中世ラテン語の obiectum で、obiectum は「(心や目の)前に置かれたもの」という意味です。もとはラテン語 obicere(差し出す、対置する、行く手に投げ置く)の過去分詞にあたり、obicere は ob(前に、〜に向かって、〜に対して)と iacere(投げる)に分解できます。iacere は「投げる、押しやる」を表す印欧祖語の語根 *ye- に由来します。
| 時期 | object が表した意味 |
|---|---|
| 14世紀後半 | 感覚でとらえられるもの、物体 |
| 15世紀初頭 | 目的、狙いとするもの |
| 1500年ごろ | 障害、妨げ |
| 1580年代 | 認識の働きが向かう先 |
| 1729年 | 文法用語としての目的語 |
文法用語としての object、つまり「動詞の動作が及ぶ対象を表す文の要素」という意味が記録されるのは1729年からです。目の前に投げ置かれたもの、という原義が、動詞の動作がぶつかる先という働きにそのまま重なっています。異議を唱えるという意味の動詞 object は1400年ごろに現れ、こちらはラテン語 obiectare(反対して投げつける)から来ています。
目的語 object の発音は名詞と動詞で変わる
object は品詞によってアクセントの位置が変わる単語です。名詞は前、動詞はうしろにアクセントが来ます。
| 品詞 | 意味 | イギリス発音 | アメリカ発音 |
|---|---|---|---|
| 名詞 | 物体、目的、文法の目的語 | /ˈɒb.dʒekt/ | /ˈɑːb.dʒekt/ |
| 動詞 | 反対する、異議を唱える | /əbˈdʒekt/ | /əbˈdʒekt/ |
文法用語として読むときは名詞なので、先頭にアクセントを置きます。動詞の object は「反対する」という意味で、Would anyone object if we started the meeting now? や He objects to the label “magician”. のように、object to や object if の形で使われます。
Oxford の辞書では、object は品詞によって発音が変わる語のグループに入れられており、同じ仲間として export、import、present、record、subject などが挙げられています。つづりが同じでも読み分けが必要なので、音読するときは意味のほうから品詞を判断してください。
目的語についてよくある質問
動詞のうしろの語句が主語と同じものを指していれば補語、別のものを指していれば目的語です。She’s my sister-in-law. は同一人物なので補語、Everyone likes her. は別人なので目的語になります。be、appear、become、look、seem などの連結動詞は目的語を取りません。
いいえ。目的語を取らない動詞を自動詞と呼び、appear、arrive、happen、rain、wait などがこれに当たります。Paula smiled and left. のように目的語なしで文が完成します。逆に他動詞は目的語がないと意味が完成しません。
間接目的語が先です。She gave the dog its dinner. のように、受け取る側である the dog が先、渡される物である its dinner があとに来ます。順序を入れ替えたいときは She gave its dinner to the dog. のように前置詞を使います。
はい。辞書の定義でも、前置詞に続く名詞や名詞句は目的語に含まれます。It depends on the weather. の the weather は前置詞 on の目的語です。代名詞が来るときは for me のように目的格になります。
目的語のまとめ
目的語とは、節を作る五要素の一つで、動詞の動作が及ぶ先を表す語句です。ふつうは動詞のうしろに置かれ、多くは名詞句の形を取ります。
探し方は、動詞に「何を」「誰を」と尋ねて答えを拾うだけです。目的語を必要とする動詞が他動詞、取らない動詞が自動詞で、両方の使い方を持つ動詞もあります。目的語になれるのは名詞句と代名詞のほか、動名詞、to 不定詞、that 節、wh 節で、どの形を続けるかは動詞ごとに決まっています。
動作の対象が直接目的語、それを受け取る人が間接目的語で、二つ並ぶときは間接目的語が先に立ち、to や for を使った形に書き換えられます。前置詞のうしろに来る名詞も目的語と呼ばれ、代名詞は me、him、us のような目的格になります。補語との境目は、主語とイコールで結べるかどうかで判定できます。語源をたどれば object はラテン語の obicere にさかのぼり、ob(前に)と iacere(投げる)から成る「目の前に投げ置かれたもの」が原義で、文法用語としての用法は1729年から記録されています。
目的語の出典
目的語の定義、直接目的語と間接目的語の区別、他動詞と自動詞の一覧、代名詞の目的格、発音、語源は以下の英英辞典、語源辞典、および Cambridge の文法解説で確認しました。
- Cambridge Grammar|Objects
- Cambridge Grammar|Subjects
- Cambridge Grammar|Verb patterns: with and without objects
- Cambridge Grammar|Verb patterns: verb + infinitive or verb + -ing?
- Cambridge Grammar|Pronouns: personal (I, me, you, him, it, they, etc.)
- Cambridge Dictionary|object
- Oxford Learner’s Dictionaries|object (noun)
- Online Etymology Dictionary|object

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