
エンパシーとは、相手の立場に自分を置いて想像することで、その人の気持ちや経験を分かち合う力のことです。英語の empathy をそのままカタカナにした語で、英英辞典はこれを能力(ability)として定義しています。
この記事では、エンパシーの意味を英英辞典の語義からたどり、ドイツ語 Einfühlung の訳語として1908年に作られたという成り立ち、シンパシーとの線引き、辞書が示す発音と使う型までを整理します。エンパシーとシンパシーはどちらも語源にギリシャ語 pathos「感情」を含みますが、頭に付く語が違い、そこが意味の違いになっています。
エンパシーとは何か(結論)
エンパシーとは、相手の状況にいたらどうかを想像して、その人の気持ちや経験を分かち合う力です。Cambridge Dictionary はこの語にレベル C2 を付けています。
Cambridge Dictionary は empathy を不可算名詞 [ U ] として示し、「その人の状況にいたらどうだろうと想像することによって、他人の気持ちや経験を分かち合う能力」と定義しています。
Oxford Learner’s Dictionaries は「他人の気持ちや経験などを理解する能力」と定義しています。
どちらの定義も ability という語で始まっています。感情そのものではなく、感情に届く力として立てられているのが特徴です。
Cambridge のレベル C2 は、辞書が付ける段の中でいちばん上です。日常語ではなく、書き物や専門的な話に出てくる語だと辞書が示しています。
Oxford はこの語を Personal qualities(人の性質)という話題に分類し、そこでの段を c1 としています。
Cambridge は語義の欄に Compare sympathy(sympathy と比べよ)という指示を置いています。辞書自身が、この2語を並べて見るよう促しています。
エンパシーの語源は1908年に作られた訳語
Online Etymology Dictionary によれば、empathy は1908年の語です。ドイツ語 Einfühlung をまねて作られた、かなり新しい語です。
元になった Einfühlung は ein「中に」と Fühlung「感じること」から成る語です。
同辞典は、この Einfühlung を1858年に作ったのはドイツの哲学者ルドルフ・ロッツェ(1817〜1881)だと記しています。
ロッツェがこの語を作ったのは、ギリシャ語 empatheia「情熱、感情の状態」の訳語としてでした。
その empatheia は en「中に」と pathos「感情」から成ります。pathos はさらに印欧祖語の語根 *kwent(h)-「苦しむ」にさかのぼります。つまりエンパシーの芯にあるのは「感情の中に入る」という形です。
同辞典は、この語がもともと芸術鑑賞の理論から出た用語だと記しています。鑑賞は、見る人が自分の人格を対象に投げ入れられるかによって決まる、という考え方です。
引用されているのは心理学者エドワード・ブラッドフォード・ティチェナーの講義録です。重力や慎み、誇り、礼儀、威厳を見るだけでなく、心の筋肉でそれを感じたり演じたりする、という文です。
ティチェナーはそこで「これは empathy の単純な例だろう。Einfühlung の訳語としてこの語を作ってよいなら」としています。訳語が生まれた瞬間が記録されています。
エンパシーとシンパシーの線引き
シンパシーは相手の苦しみに対する理解といたわりで、エンパシーはその人の立場に立って気持ちを分かち合う力です。辞書のレベルも、初出の年も違います。
| 語 | 定義の要点 | レベル | 初出 |
|---|---|---|---|
| empathy | 相手の状況を想像して気持ちや経験を分かち合う能力 | C2 | 1908年 |
| sympathy | 他人の苦しみへの理解といたわり(その表明) | B2 | 1580年代 |
Cambridge Dictionary は sympathy の UNDERSTANDING の語義を「他人の苦しみに対する理解と気づかい(またはその表明)」と定義し、レベル B2 を付けています。
Oxford は sympathy を「誰かをかわいそうに思う気持ち。相手の問題を理解し気にかけていると示すこと」と定義しています。
語源をそろえると違いがはっきりします。Online Etymology Dictionary によれば sympathy は1580年代の語で、ギリシャ語 sympatheia「共に感じること、感情の共同体」から来ています。syn-「共に」+ pathos「感情」です。empathy は en「中に」+ pathos なので、共に感じるか、中に入って感じるかの差になります。
同辞典によれば、sympathy の最初の意味は「あるもの同士の親和性」で、体と魂、人とその衣服のような関係を指しました。
中英語では、ひとつの心や体が別のものに及ぼすほとんど魔術のような影響を指す語としても使われました。傷から出た血の付いた布に当てると傷が治るという薬に、この語が使われたと同辞典は記しています。
「感情の一致、好みや傾向の一致」という意味が付くのは1590年代です。
エンパシーの発音は /ˈem.pə.θi/ で頭を強く読む
empathy は第1音節を強く読みます。カタカナの「エンパシー」は最後を伸ばしますが、英語の最後は短い /i/ です。
| 辞書 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary | /ˈem.pə.θi/ | /ˈem.pə.θi/ |
| Oxford Learner’s Dictionaries | /ˈempəθi/ | /ˈempəθi/ |
二つの辞書で、しかもイギリス英語とアメリカ英語で、表記が完全に同じです。地域差がない語です。
真ん中の /pə/ は弱く短く置きます。「パ」とはっきり言わず、曖昧母音にします。
いちばん外しやすいのは θ です。/θi/ は舌の先を上下の歯で軽くはさんで息だけを出す音で、カタカナの「シ」とは別の音です。ここを「シー」にすると別の語に聞こえます。
Cambridge の American Dictionary も /ˈem·pə·θi/ と同じ形を示しています。
なお sympathy は /ˈsɪm.pə.θi/ で、こちらも英米で同じ表記です。後半の /pə.θi/ が共通しています。
ホスピタリティの意味と語源も同じ英英辞典と語源辞典で調べてまとめています。

エンパシーの英語 empathy は数えられない名詞
empathy は不可算名詞です。Cambridge Dictionary は [ U ]、Oxford Learner’s Dictionaries は uncountable と示しています。empathies という複数形は辞書に載っていません。
前置詞は三つの型があります。Oxford は empathy (with somebody/something)、empathy (for somebody/something)、empathy (between A and B) を並べています。
| 型 | 指すもの | 辞書の例 |
|---|---|---|
| empathy with ~ | 誰・何に寄り添うか | the writer’s imaginative empathy with his subject |
| empathy for ~ | 誰・何に向けた共感か | empathy for other people’s situations |
| empathy between A and B | 二者の間に生まれる共感 | The empathy between the two women was obvious. |
Oxford の collocations 欄には、付く形容詞として deep(深い)、great(大きい)、genuine(本物の)が並びます。
動詞も欄に出ています。feel(感じる)と have(持つ)です。Both authors have the skill to make you feel empathy with their heroines.(どちらの作者も、主人公に共感させる腕を持っている)が例です。
否定の言い方もよく出ます。She shows a lack of empathy for other people’s situations.(彼女は他人の状況への共感の欠如を見せる)です。
エンパシーを使った英語の例文とよくある間違い
辞書に載っている形をそのまま借りるのが、いちばん外さないやり方です。feel empathy with ~ と develop empathy between ~ の二つを覚えておけば、場面はほぼ足ります。
Oxford の例文には He had a deep empathy with animals.(彼は動物への深い共感を持っていた)があります。人以外にも使えます。
同辞典の Nurses should try to develop empathy between themselves and their patients.(看護師は自分と患者との間に共感を育てるべきだ)は、between の型の例です。
The campaign’s aim is fostering greater empathy between drivers and cyclists.(その運動の目的は、運転者と自転車利用者の間により大きな共感を育てることだ)という例文も載ります。
間違いの一つ目は複数形にすることです。不可算なので empathies とはしません。
なお sympathy のほうは複数形が辞書に載っています。Oxford は plural sympathies を示し、offer our deepest sympathies(心からのお悔やみを申し上げる)という形を挙げています。
二つ目の間違いは、お悔やみの場面で empathy を使うことです。Cambridge は offer/send your sympathies を「誰かの親族や友人が亡くなったときに悲しみを伝える」言い方として立てており、この型は sympathy のほうにあります。
エンパシーについてよくある質問
中に入って感じるか、共に感じるかが違います。
Cambridge Dictionary は empathy を「その人の状況にいたらどうだろうと想像することによって他人の気持ちや経験を分かち合う能力」(C2)、sympathy を「他人の苦しみに対する理解と気づかい」(B2)と定義しています。
語源でも差が出ます。
empathy はギリシャ語 empatheia(en「中に」+ pathos「感情」)から、sympathy は sympatheia(syn「共に」+ pathos)からで、頭の語だけが違います。
ドイツ語 Einfühlung の訳語として1908年に作られた語です。
Online Etymology Dictionary によれば、Einfühlung は ein「中に」+ Fühlung「感じること」で、1858年にドイツの哲学者ルドルフ・ロッツェ(1817〜1881)がギリシャ語 empatheia「情熱、感情の状態」の訳語として作りました。
empatheia は en「中に」+ pathos「感情」で、pathos は印欧祖語の語根 *kwent(h)-「苦しむ」にさかのぼります。
もとは芸術鑑賞の理論の用語でした。
両方あり、between も使えます。
Oxford Learner’s Dictionaries は empathy (with somebody/something)、empathy (for somebody/something)、empathy (between A and B) の三つを並べています。
例は the writer’s imaginative empathy with his subject、empathy for other people’s situations、The empathy between the two women was obvious. です。
二者の間に生まれるものとして言うときは between を使います。
語末の θ です。
Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries はどちらもイギリス英語・アメリカ英語ともに /ˈempəθi/ と示しており、地域差がありません。
強いのは第1音節で、語末は短い /i/ です。
/θ/ は舌の先を歯で軽くはさんで息だけを出す音なので、カタカナの「シー」で置き換えると別の音になります。
真ん中の /pə/ も弱く短く置きます。
メンターの意味と語源も同じ英英辞典と語源辞典で調べてまとめています。

エンパシーのまとめ
エンパシーとは、相手の立場を想像してその人の気持ちや経験を分かち合う力です。Cambridge Dictionary はレベル C2 の不可算名詞とし、Oxford Learner’s Dictionaries も「他人の気持ちや経験などを理解する能力」と定義しています。
語源はドイツ語 Einfühlung の訳語として1908年に作られた語で、さかのぼるとギリシャ語 empatheia、つまり en「中に」+ pathos「感情」になります。シンパシーが syn「共に」+ pathos であるのと、頭の語だけが違います。
英語で使うときは、複数形にしないこと、with と for と between を使い分けること、そして語末の /θ/ を息の音で出すことの三つを押さえておけば、意味がそのまま届きます。
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エンパシーの参考文献
empathy の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。
- Cambridge Dictionary|empathy(Advanced Learner’s・American Dictionary を含む)(Cambridge Dictionary)
- Oxford Learner’s Dictionaries|empathy(名詞)(Oxford Learner’s Dictionaries)
- Online Etymology Dictionary|empathy(Online Etymology Dictionary)
- Cambridge Dictionary|sympathy(Cambridge Dictionary)
- Oxford Learner’s Dictionaries|sympathy(Oxford Learner’s Dictionaries)
- Online Etymology Dictionary|sympathy(Online Etymology Dictionary)
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