インフルエンサーとは、人の意見や行動を動かせる人のことです。英語の influencer をそのままカタカナにした語で、英英辞典ではSNSで活動する人を指す語義に加えて、人の振る舞いに影響を与える人、そして何かに影響を与えるもの、という三つの語義が立っています。
この記事では、インフルエンサーの意味を英英辞典の語義からたどり、占星術の言葉だった influence までさかのぼる語源、今の意味になった年、influence との線引き、辞書が示す発音と数え方、そして fluent と同じ語根を持つという意外なつながりまでを整理します。日本語ではSNSの人だけを指しますが、英語はもっと広く使う語なので、一度そろえておくと英語の記事を読むときに迷いません。
インフルエンサーとは何か(結論)
インフルエンサーとは、SNSで活動していて、人の意見を動かしたり、ある暮らし方をまねるよう、あるいはある商品を買うよう仕向けたりできる人のことです。Cambridge Dictionary はこの形を第一の語義に置いています。
品詞欄は [C]、数えられる名詞です。添えられた例文は、3月になってようやく彼女は仕事を辞め、インフルエンサーとしてのキャリアに専念できるようになった、という文です。定義のすぐ下には influencer marketing という組み合わせも並んでいます。
Oxford Learner’s Dictionaries の定義は少し違う角度から入ります。誰か・何かに影響を与える人やもの、とくにSNSで勧めることによって商品やサービスの買い手候補に影響を与えられる人、という書き方です。例は the social media feeds of fashion influencers(ファッション系インフルエンサーのSNSのフィード)です。
Cambridge Business English Dictionary はさらに広く、MARKETING の分野表示とともに、他者の行動や意見に影響を与える能力を持つ人または集団、と定義しています。インフルエンサーとは、購買の意思決定への効果が何らかの形で大きい、あるいは権威のある個人のことだ、という例文が添えられています。
つまり英語の influencer の芯は「人を動かせる存在」であって、SNSはその代表例にすぎません。日本語のインフルエンサーがSNSの人に限られているのに対し、英語は個人でも集団でも、さらには人ですらないものにも使えます。
インフルエンサーの語義は三つ|SNS・人・もの
Cambridge Dictionary は influencer に三つの語義を立てています。日本語が受け取っているのは、そのうち一つめだけです。
| 語義 | 辞書の定義 | 例文 |
|---|---|---|
| ①SNSの人 | SNSで活動し、人の意見を動かしたり、特定の暮らし方や商品へ導いたりできる人 | her career as an influencer full time |
| ②影響を与える人 | 人の振る舞いに影響を与える人 | an important influencer of young people |
| ③影響を与えるもの | ほかの何かに作用するもの | an important influencer of economic growth |
②の例文は、彼女は優れた指導者であり、若者に大きな影響を与える人物だった、という文です。SNSとは関係なく、人格の影響力そのものを指しています。若手デザイナーにとってファッションウィークは、ニューヨークに集まる業界の influencers と会える好機だ、という例文も同じ語義です。
③がいちばん日本語から遠い語義です。中国はそれら発展途上の地域における経済成長の重要な influencer である、という例文が載っています。国が主語になっていて、人ではありません。ここでは「影響を与える要因」に近い訳がはまります。
日本語に近い文もあります。インフルエンサーであることは今や趣味ではなく一人前の職業選択だ、という例文です。Oxford Learner’s Dictionaries もこの語を Jobs のトピックに入れ、C1 の印を付けています。
インフルエンサーの語源は占星術の「星から流れ込む力」
もとをたどると、influence は占星術の用語でした。Online Etymology Dictionary は14世紀後半の意味を、星が特定の位置にあるときに流れ出て、人の性格や運命に作用する霊妙な力、としています。
経路は古フランス語 influence(13世紀)で、その意味も「人の性格と運命に作用する、星からの放射」でした。同じ語には「水の流れ、流れ込むこと」という意味もあったと記されています。
さらにさかのぼると中世ラテン語 influentia(流れ込むこと)、そしてラテン語 influere(流れ込む、注ぎ込む)に行き着きます。割ると in-(中へ)+fluere(流れる)です。インフルエンサーの正体は、外から中へ流れ込んでくる何かでした。
意味が人に移るのは16世紀です。同辞典は、人が目に見えない影響力を及ぼすという意味が1580年代からで、この用法は中世ラテン語にすでにあった、と記しています。目に見えない手段で効果を生み出す能力、という意味は1650年代からです。
おなじみの慣用句もここから来ています。under the influence(酒などの影響下で=酔って)という言い方は1866年から記録があります。Cambridge Dictionary も under the influence を慣用句として立て、under the influence of her father(父親の影響下にあって)という例を載せています。
インフルエンサーが今の意味になったのは2010年
influencer という語自体は新しくありません。Online Etymology Dictionary は1660年代からとし、動詞 influence から作られた行為者名詞だと記しています。
では今の意味はいつからか。同辞典ははっきり書いています。インターネット特有の意味での influencer は2010年から。そして広告業界の業界語としては2000年から使われており、その活動と人のつながりが商品の話題を生み、流行を動かす少人数の集団を指していました。
この考え方の出どころも示されています。同辞典は、マルコム・グラッドウェルが2000年に出した『ティッピング・ポイント』で発展させられた概念だ、としています。SNSより先に、本と広告の世界で言葉ができていたわけです。
同辞典が引いている当時の記事も残っています。2001年8月4日のトロントの新聞の記事で、フォードが新型車を投入したとき、DJや著名人のマネージャーを含む「鍵になるインフルエンサー」たちに車を渡した、という話です。彼らの仕事は、その車に乗っているところを見られ、興味を示した人に販促品を配ることでした。
インフルエンサーと influence(影響力)の違い
influencer が人やものを指すのに対し、influence が指すのは力そのものです。Cambridge Dictionary は influence を [C or U] の名詞として立て、B2 の印を付けています。
| 語 | 辞書の定義 | 数え方・レベル |
|---|---|---|
| influencer | SNSで人の意見を動かせる人/人の振る舞いに影響を与える人/何かに作用するもの | [C](Cambridge)/C1(Oxford) |
| influence(名詞) | 人やものに効果を及ぼす力、またはそれができる人やもの | [C or U] B2(Cambridge)/[uncountable, countable](Oxford) |
Cambridge Dictionary の定義には、力そのものと、それができる人やもの、の両方が入っています。つまり influence 一語で人を指すこともできます。家族は子どもにとって最も重要な influence である、という例文がそれです。
よく使う組み合わせも辞書が並べています。influence on(~への影響)、influence over(~に対する支配的な影響)、bad influence(悪い影響を与える存在)、have an influence、exert influence(影響力を行使する)、under the influence of。彼は市議会に対して絶大な影響力を持っている、という例文では over が使われています。
Oxford Learner’s Dictionaries の定義はもう少し限定的で、人の考え方や振る舞い、あるいは物事の働き方や発展の仕方に対して、誰か・何かが及ぼす効果、としています。見出しには OPAL W と OPAL S の印があり、学術的な書き言葉と話し言葉の両方でよく出る語です。
例文も豊富です。彼の初期の作品にはセザンヌとマティスの影響が見える、気候が農業生産に及ぼす影響、SNSが子どもに及ぼす影響とは正確には何なのか、といった文が並びます。前置詞は influence of A on B の形です。
インフルエンサーの発音は /ˈɪn.flu.ən.sər/|数え方は可算
influencer の強勢は先頭の in- にあります。カタカナの「インフルエンサー」は「エン」を強く読みがちなので、ここがずれます。
| 語 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| influencer | /ˈɪn.flu.ən.sə r/(Cambridge)//ˈɪnfluənsə(r)/(Oxford) | /ˈɪn.flu.ən.sɚ/(Cambridge)//ˈɪnfluənsər/(Oxford) |
| influence(名詞・動詞) | /ˈɪn.flu.əns/(Cambridge)//ˈɪnfluəns/(Oxford) | /ˈɪn.flu.əns/(Cambridge) |
音節は in・flu・en・cer の四つで、強いのは一つめだけです。二つめ以降は軽く流します。日本語のカタカナは四拍とも同じ強さで並ぶので、そこを直すだけで通じ方が変わります。
名詞の influence と動詞の influence は、Cambridge Dictionary でも Oxford Learner’s Dictionaries でも同じ発音です。conversion と convert のように品詞でアクセントが動く語ではありません。
Cambridge Dictionary も Cambridge Business English Dictionary も、influencer に [C] を付けています。人やものを指す語なので、当然ながら数えられます。
一方で名詞の influence は [C or U] です。力そのものを指すときは数えず、影響を与える存在を指すときは数えます。Helen は彼にとって bad influence だ、という Cambridge Dictionary の例文は、後者の数える使い方です。
of でつなぐ形も押さえておきます。an important influencer of young people、an important influencer of economic growth。誰に対する、何に対する影響者なのかを of で示します。
インフルエンサーを生んだ動詞 influence にSNSの語義が加わった
辞書は動詞の側にも新しい語義を立てています。Cambridge Dictionary の influence の動詞には、SNSの活動そのものを指す語義が入っています。
定義は、大勢の人に向けてSNSのコンテンツを作り、その人たちの意見、選ぶ商品、望む暮らし方などに影響を与えること、です。関連語として influencer が明記されています。
例文は、SNSで influence する人たちは消費者の行動に大きな影響を与えうる、という文と、Z世代はインフルエンサーの影響を最も受けやすい、という文です。前者では influence が自動詞として on social media と結びついています。
もともとの語義は B2 で、誰か・何かの発達・振る舞い・考え方に作用する、あるいはそれを変える、です。彼女は人と親しくなり、人を動かすのがとても上手だ、という例文が載っています。
文型も辞書が示しています。[+目的語+to 不定詞] として、何があなたを看護の道へ進ませたのですか、という例文が挙げられています。人を動かして何かをさせる、という形です。
インフルエンサーと fluent は同じ語根でつながっている
英語学習者にうれしい発見があります。influencer の -flu- は、fluent(流ちょうな)の flu- と同じ語根です。どちらもラテン語 fluere(流れる)から来ています。
Online Etymology Dictionary は fluent を1580年代からとし、水について「自由に流れる」、話し手について「言葉を巧みにすばやく使える」という意味を挙げています。ラテン語 fluentem(緩んだ、比喩的に流れるような)の現在分詞から来た語です。
その fluere は、印欧祖語の *bhleu-(膨らむ、わき上がる、あふれる)の拡張形にさかのぼります。同じ根からラテン語 flumen(川)、ギリシャ語 phluein(沸きこぼれる、泡立つ)も生まれました。
つまり「流ちょうに話す」も「影響を与える」も、根っこは同じ「流れる」です。言葉が流れるように出るのが fluent、外から中へ流れ込んでくるのが influence、その流れを送り込む側が influencer、という並びになります。
インフルエンサーを使った英語の例文とよくある間違い
まずは職業として言う型です。her career as an influencer(インフルエンサーとしての彼女のキャリア)。Cambridge Dictionary の例文にそのまま出てくる形です。
分野を絞る型も便利です。fashion influencers(ファッション系インフルエンサー)、industry influencers(業界の影響力ある人たち)。前に名詞を置いて範囲を示します。
of でつなぐ型は、人以外にも使えます。an important influencer of economic growth(経済成長の重要な要因)。この形なら国や制度も主語にできます。
間違いの一つ目は、影響力そのものを influencer と言ってしまうことです。力を指すなら influence、その力を持つ存在を指すなら influencer です。
二つ目は、influencer をSNSの人だけに限って使うことです。Cambridge Dictionary は人の振る舞いに影響を与える人、そして何かに作用するもの、という語義も立てています。英語では教師やコーチも influencer になりえます。
三つ目は発音です。強く読むのは先頭の in- で、後ろの flu・en・cer は軽く流します。カタカナの「エン」を強く出すと山が二つになり、英語の耳には落ち着きません。
インフルエンサーについてよくある質問
いいえ。Cambridge Dictionary は三つの語義を立てており、SNSの人のほかに「人の振る舞いに影響を与える人」「ほかの何かに作用するもの」も載せています。若者に影響を与える人物、経済成長の重要な要因、という例文があり、国のような人でないものにも使えます。
力か、存在かの違いです。Cambridge Dictionary は influence を「人やものに効果を及ぼす力、またはそれができる人やもの」と定義し、B2 の印を付けています。influencer は [C] で、その力を持つ人やものを指します。ただし influence 一語でも人を指せる点には注意が要ります。
語そのものは1660年代からです。Online Etymology Dictionary は動詞 influence から作られた行為者名詞だとしています。インターネット特有の意味になったのは2010年から、広告業界の業界語としては2000年から使われていた、とも記されています。
占星術の言葉です。Online Etymology Dictionary は14世紀後半の意味を「星が特定の位置にあるときに流れ出て、人の性格や運命に作用する霊妙な力」としています。中世ラテン語 influentia(流れ込むこと)、ラテン語 influere=in-(中へ)+fluere(流れる)にさかのぼります。
インフルエンサーのまとめ
インフルエンサーとは、人の意見や行動を動かせる人のことです。Cambridge Dictionary はSNSで活動する人、人の振る舞いに影響を与える人、ほかの何かに作用するもの、という三つの語義を立てており、いずれも [C] の可算名詞です。
語源は占星術の influence で、もとの意味は「星から流れ込む力」でした。ラテン語 influere=in-(中へ)+fluere(流れる)にさかのぼり、fluent と同じ語根です。語としての influencer は1660年代からあり、今のインターネット的な意味になったのは2010年からです。
力を指すなら influence、その力を持つ存在を指すなら influencer。強く読むのは先頭の in-。この三点を押さえておくと、英語で影響力の話をするときに言葉が迷子になりません。
インフルエンサーの出典
influencer の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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