パラダイムとは、ある分野の見方を丸ごと決めている枠組みのこと、そしてお手本になるほど典型的な例のことです。英語の paradigm をそのままカタカナにした語で、英英辞典は「何かの模型、あるいは何かの非常に明確で典型的な例」と定義しています。
この記事では、パラダイムの意味を英英辞典の語義からたどり、ギリシャ語の paradeigma(並べて見せる)にさかのぼる語源、20世紀に「科学の枠組み」の意味が加わった経緯、発音、パラダイムシフトという複合語、そして archetype との線引きまでを整理します。
パラダイムとは何か(結論)
パラダイムとは、まわりが「そういうものだ」と受け入れている見方の型のことです。個々の意見ではなく、意見が乗っている土台のほうを指します。同時に、そのまま真似できるほど典型的な一例、という使い方もあります。
Cambridge Dictionary は paradigm を名詞 [ C ] とし、formal(かたい語)の印を付けています。定義は、何かの模型、あるいは何かの非常に明確で典型的な例、で、レベルは C2 です。
添えられた例文は、これらの教育者の一部は、現在の文化的パラダイムに変化を起こしたいと願っている、という文です。ここでの paradigm は一例ではなく、文化全体を支えている枠組みのほうを指しています。
Oxford Learner’s Dictionaries は(specialist or formal)の印を付け、何かの典型的な例あるいはパターン、と定義しています。例文は、学生が真似するためのお手本、そして、その戦争は人間の本性の破壊的な側面を示す典型例だった、という二つです。
同じ語義の中に「模型・お手本」と「枠組み」が同居しているのが、この語の読みにくさです。文脈が個別の例を指しているのか、分野全体の前提を指しているのかで、日本語の訳し分けが変わります。
パラダイムの語源はギリシャ語 paradeigma(並べて見せる)
paradigm が英語に現れたのは15世紀後半です。Online Etymology Dictionary によれば、当時の意味は「一例、模型」で、後期ラテン語の paradigma(型、例)から入りました。
そのラテン語はギリシャ語の paradeigma(型、模型、先例、実例)から来ています。さらに動詞 paradeiknynai(示す、表す)にさかのぼり、この動詞の文字どおりの意味は「並べて見せる」です。
分解すると para-(そばに)+deiknynai(見せる)です。para- はギリシャ語の para(そばに、近くに、~から出て、~に反して)から来た造語要素で、印欧祖語の語根 *per-(前へ)にさかのぼります。古英語の for-(離れて)と同語源です。
もう一方の deiknynai(見せる)は、ラテン語 dicere(示す)と同語源で、印欧祖語の語根 *deik-(見せる、厳かに言う)から来ています。つまりパラダイムの芯にあるのは「横に並べて、こうだと見せる」という動作です。
この *deik- は英語の語をおどろくほど多く作っています。Online Etymology Dictionary は dictionary、diction、dictate、index、indicate、predict、judge、verdict、teach、token、toe などを同じ根の仲間として挙げています。paradigm もその一員です。
同辞典は、後期ラテン語の paradigma が「とくに文法において」使われた語だ、と書き添えています。この筋は今も生きていて、Oxford Learner’s Dictionaries は文法用語としての語義、つまり「ある単語のすべての異なる形のまとまり」を立て、verb paradigms(動詞の活用表)という例を挙げています。
パラダイムが「理論の枠組み」を指すようになったのは20世紀
日本語のカタカナ語で一番よく使われるのは「その時代の物の見方」という意味ですが、この語義は歴史が浅いものです。Online Etymology Dictionary は、20世紀になってから使われ始めた、と明記しています。
同辞典が書く20世紀の語義は、ある経験領域の内側で思考の形として働く、論理的あるいは概念的な構造、というものです。個々の理論ではなく、理論が成り立つ前提のほうを指しています。
そしてこの意味を広めた本まで名指しされています。トマス・クーンの『科学革命の構造』(1962年)です。同辞典は、この哲学的な語義がとくにこの本で使われた、と記しています。
15世紀後半の「一例、模型」から、1962年の「思考の枠組み」まで、およそ500年かかった広がりです。関連語として Paradigmatic、paradigmatical も挙げられています。
ビジネスのパラダイムは「その時代に分野を説明する理論のまとまり」
Cambridge Business English Dictionary は、一般辞書とは語義の順番を変えています。第一に立つのは、ある特定の時点において、ある主題がどう理解されているかを説明する理論のまとまり、という定義です。
例文も枠組みの側です。そのテレビ局は、これは商業テレビの新しいパラダイムの始まりだと主張した、という文と、グローバル化の影響についての彼の説明は、今日支配的な二つの経済パラダイムのどちらにも収まらない、という文が並びます。
同辞典は第二の語義として、一般辞書と同じ「何かの模型、あるいは非常に明確で典型的な例」も立てています。こちらには a paradigm of sth という型が示され、その会社は起業家精神の典型と見られている、という例文が付きます。
Cambridge のアメリカ英語の項も、模型として使われる非常に明確で典型的な例、と定義しています。彼の容赦ない蓄財は、ビジネス界における強欲の典型として際立っている、という例文です。of の後ろに抽象名詞を置く形が、この語義の定番になります。
パラダイムの発音は /ˈpærədaɪm/ で最初の音節が強い
paradigm は第1音節の par を強く読みます。日本語話者がつまずきやすいのは語尾で、-digm の g はまったく読みません。
| 語 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| paradigm(Cambridge) | /ˈpær.ə.daɪm/ | /ˈper.ə.daɪm/ |
| paradigm(Oxford) | /ˈpærədaɪm/ | /ˈpærədaɪm/ |
| paradigm shift(Cambridge) | /ˈpær.ə.daɪm ˌʃɪft/ | /ˈper.ə.daɪm ˌʃɪft/ |
最後の音節は /daɪm/ で、英語の dime(10セント硬貨)と同じ響きです。綴りには g がありますが、発音記号のどこにも /ɡ/ は出てきません。
第1音節の母音は英米で違います。Cambridge Dictionary はイギリス英語を /ˈpær/、アメリカ英語を /ˈper/ としています。一方 Oxford Learner’s Dictionaries は英米とも /ˈpærədaɪm/ を載せており、辞書によって表記の方針が違うことが分かります。
真ん中の /ə/ は曖昧母音で、軽く流します。「パ・ラ・ダ・イ・ム」と五拍で平たく読むのではなく、最初の par に体重を乗せ、最後の daɪm を一息で出すと英語の形になります。
パラダイムの英語 paradigm は数えられる名詞で、かたい語
Cambridge Dictionary も Oxford Learner’s Dictionaries も、paradigm を [ C ] の可算名詞としています。単数なら a paradigm、複数なら paradigms です。
複数形は辞書の例文にも出てきます。今日支配的な二つの経済パラダイム、という Cambridge Business English Dictionary の文や、動詞の活用表を指す verb paradigms という Oxford Learner’s Dictionaries の例です。
もう一つ落とさないほうがいいのが、語の硬さです。Cambridge Dictionary は formal、Oxford Learner’s Dictionaries は specialist or formal の印を付けています。日常会話で気軽に使う語ではなく、論文・報告書・専門的な議論に向いた語だということです。
レベルの印も同じ方向を指しています。Cambridge Dictionary は C2、つまり同辞典のレベル表示のいちばん上を付けています。英語学習の段階としては、かなり後ろに置かれる語です。
Cambridge Dictionary は同義語として model を挙げ、SMART Vocabulary では「Samples and examples(見本と実例)」の話題に分類しています。同じ棚には archetype、benchmark、prototype、role model、quintessence などが並びます。
パラダイムシフトは「やり方や考え方が丸ごと変わる時」
日本語でもよく聞く複合語が paradigm shift です。Cambridge Dictionary はこれを独立した見出し語として立て、名詞 [ C ]、formal の印を付けています。
定義は、何かを行う、あるいは何かについて考える、その通常の受け入れられたやり方が完全に変わる時、です。部分的な改良ではなく、土台ごと入れ替わる場面を指します。
Cambridge Business English Dictionary も同じ語を立て、そうした状況、という言い方で定義しています。例文は、ソーシャルメディアの広範な利用は、私たちのコミュニケーションのしかたにおけるパラダイムシフトを表している、という文です。in the way ~ で「何における転換か」を示す形が使えます。
Cambridge Dictionary はこの語を SMART Vocabulary の「Change and changes(変化)」に分類しています。paradigm 本体が「見本と実例」に入っていたのに対し、複合語になると変化の語彙に移る、という並びがおもしろいところです。
Oxford Learner’s Dictionaries でも paradigm shift は独立した見出し語で、複数形 paradigm shifts も併記されています。paradigm の項の「Other results」欄から、そのままたどれます。
パラダイムと archetype の違い
Cambridge Dictionary が paradigm と同じ「見本と実例」の棚に並べている語の一つが archetype です。日本語では「アーキタイプ、原型」と訳されます。
| 語 | Cambridge Dictionary の定義 | 発音(英) |
|---|---|---|
| paradigm | 何かの模型、あるいは何かの非常に明確で典型的な例 | /ˈpær.ə.daɪm/ |
| archetype | 何かの典型例、あるいは他がそこから写し取られる元の模型 | /ˈɑː.kɪ.taɪp/ |
定義の差は「元になった最初のもの」が入るかどうかです。archetype には「他がそこから写される」という時間の前後関係があり、paradigm の定義にはそれがありません。
語源を見るともっとはっきりします。Online Etymology Dictionary によれば archetype は1540年代で、ギリシャ語 arkhetypon(型、模型、印章の図柄)から。arkhē(始まり、起源、第一の位置)+typos(模型、型、打った跡)です。「最初に型どられたもの」が文字どおりの意味になります。
同辞典によれば、ユング心理学の「集合的無意識から来る、広く行きわたった観念やイメージ」という語義は1919年からです。archetype には心理学の顔があり、paradigm には科学哲学の顔がある、と覚えると混ざりません。
なお Cambridge Dictionary の paradigm の項には「Compare prototype」という案内も置かれています。見本や原型を表す語は英語に何種類もあるので、どの角度の「模型」なのかを見て選ぶことになります。
パラダイムを使った英語の例文とよくある間違い
まずは枠組みの型です。Some of these educators are hoping to produce a change in the current cultural paradigm.(これらの教育者の一部は、現在の文化的パラダイムに変化を起こしたいと願っている)。Cambridge Dictionary に載っている形です。
典型例の型なら、The company is seen as a paradigm of entrepreneurship.(その会社は起業家精神の典型と見られている)。a paradigm of ~ で「~の典型」を作れます。
転換を言うなら、The widespread use of social media represents a paradigm shift in the way we communicate.(ソーシャルメディアの広範な利用は、私たちのコミュニケーションのしかたにおけるパラダイムシフトを表している)。
間違いの一つ目は、話し言葉で気軽に使うことです。Cambridge Dictionary は formal、Oxford Learner’s Dictionaries は specialist or formal の印を付けています。ふだんの会話なら model や example のほうが自然に届きます。
二つ目は、小さな変更を paradigm shift と呼ぶことです。辞書の定義は「完全に変わる」なので、機能が一つ増えた程度なら change や update が合います。
三つ目は発音で、-digm の g は読みません。語尾は /daɪm/ です。強く読むのは第1音節の par で、そこを外すと別の語に聞こえます。
パラダイムについてよくある質問
「元になった最初のもの」かどうかで分かれます。Cambridge Dictionary は paradigm を「何かの模型、あるいは何かの非常に明確で典型的な例」、archetype を「何かの典型例、あるいは他がそこから写し取られる元の模型」と定義しています。archetype の語源はギリシャ語 arkhetypon で、arkhē(始まり)+typos(型)=「最初に型どられたもの」です。
発音しません。Cambridge Dictionary はイギリス英語を /ˈpær.ə.daɪm/、アメリカ英語を /ˈper.ə.daɪm/、Oxford Learner’s Dictionaries は英米とも /ˈpærədaɪm/ としており、どの表記にも /ɡ/ は出てきません。語尾は /daɪm/ で、強勢は第1音節にあります。
paradigm shift という複合語で、Cambridge Dictionary も Oxford Learner’s Dictionaries も独立した見出し語として立てています。定義は「何かを行う、あるいは何かについて考える、その通常の受け入れられたやり方が完全に変わる時」です。Cambridge Business English Dictionary の例文は「The widespread use of social media represents a paradigm shift in the way we communicate.」で、in the way ~ で何における転換かを示します。
英語では15世紀後半で、当時の意味は「一例、模型」でした。Online Etymology Dictionary は、後期ラテン語 paradigma(型、例。とくに文法で使われた)を経てギリシャ語 paradeigma から来たとし、動詞 paradeiknynai の文字どおりの意味を「並べて見せる」としています。para-(そばに)+deiknynai(見せる)で、いまの「思考の枠組み」の意味が広まったのは20世紀、とくにトマス・クーンの『科学革命の構造』(1962年)以降です。
パラダイムのまとめ
パラダイムとは、ある分野の見方を丸ごと決めている枠組みであり、同時に、お手本になるほど典型的な一例でもあります。英語の paradigm は [ C ] の可算名詞で、formal の印が付いたかたい語です。
語源はギリシャ語 paradeigma で、para-(そばに)+deiknynai(見せる)=「並べて見せる」に分解できます。15世紀後半に英語へ入り、「思考の枠組み」の意味が広まったのは20世紀です。
発音は /ˈpærədaɪm/ で第1音節が強く、-digm の g は読みません。土台ごと入れ替わる場面には paradigm shift、元になった最初の型を指すなら archetype と、隣の語も一緒に押さえておくと選び間違えません。
パラダイムの出典
paradigm の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。
- Cambridge Dictionary|paradigm
- Cambridge Business English Dictionary|paradigm
- Oxford Learner’s Dictionaries|paradigm
- Online Etymology Dictionary|paradigm
- Cambridge Dictionary|paradigm shift
- Cambridge Business English Dictionary|paradigm shift
- Oxford Learner’s Dictionaries|paradigm shift
- Cambridge Dictionary|archetype
- Online Etymology Dictionary|archetype

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