
キックオフとは、サッカーの試合が始まる時、またはゴールなどで止まった試合が再び始まる時という意味であり、英英辞典はそこから広がった「ある活動が始まる時」という語義もあわせて立てています。
英語の kick-off をそのままカタカナにした語で、Wiktionary は名詞の kick-off を句動詞 kick off から作られた語としました。
この記事では、キックオフの意味を英英辞典の語義から切り分け、元になった句動詞 kick off の「始まる」「話し合いを始める」「騒ぎになる」といった用法、kick-off と kickoff の綴りの違い、start や beginning との違い、そして辞書が示す発音までを整理します。
根拠にしたのは Cambridge Dictionary・Oxford Learner’s Dictionaries・Wiktionary の記述だけです。
キックオフとは何か(結論)
キックオフとは、サッカーの試合が始まる時、あるいはゴールなどで止まったあと試合が再び始まる時を指す言葉です。
Cambridge Dictionary の定義は「the time when a game of football starts, or when it begins again after it has stopped because of a goal, etc.(サッカーの試合が始まる時、またはゴールなどで止まったあとに再び始まる時)」。
同辞典は二つ目の語義として、informal(くだけた言い方)の札を付けたうえで「the time when an activity starts(ある活動が始まる時)」を立てています。
品詞は名詞で、[ C or U ]、つまり可算名詞としても不可算名詞としても使う、という札が付いていました。
試合の言葉でありながら、活動一般の始まりという広がりまで辞書に載っているわけです。
キックオフの定義を辞書ごとに比べる
Cambridge Dictionary の Business English の項は、名詞の kick-off を [ S ]、つまり単数形で使う名詞とし、UK informal(イギリス英語のくだけた言い方)の札を付けています。
定義は「the time when an activity starts(ある活動が始まる時)」で、例文は「キックオフは11時ちょうどです」。
Wiktionary は名詞の語義を三つ立てました。
一つ目は football と American football の札が付いた「The opening kick of each half of a game of football(サッカーの試合の、前半と後半それぞれの最初のキック)」です。
二つ目は by extension(意味を広げて)の札が付いた「The opening sequence of any event(あらゆる催しの始まりの部分)」、三つ目は music の札が付いた曲の出だしの語義。
Oxford Learner’s Dictionaries は句動詞 kick off の項に「related noun kick-off(関連する名詞 kick-off)」と添え、名詞を句動詞とひと続きのものとして示しています。
キックオフの語源は句動詞 kick off から作られた名詞
Wiktionary の語源欄は、kick-off を句動詞 kick off からの deverbal、つまり動詞から作られた名詞としています。
同辞典はこの語を phrasal nouns(句名詞)のカテゴリーにも入れました。
Cambridge Dictionary でも、句動詞 kick off の「始まる」の語義に「See also kick-off」と名詞への参照が付いています。
Oxford Learner’s Dictionaries も句動詞の二つの語義に「related noun kick-off」を添えており、三つの辞書がそろって名詞と句動詞のつながりを示している形です。
ただし年代や、いつごろから名詞として使われ始めたかといった記述は、三つの辞書のどこにも見当たりません。
kick off のように、動詞と小さな副詞が組んで一つの意味を作る形は、英語の文法では決まった名前で呼ばれます。
その仕組みと見分け方は句動詞とは?意味と見分け方で詳しく扱っています。↓

キックオフの語義①サッカーの試合開始と再開
Cambridge Dictionary の一つ目の語義は、試合の始まりだけでなく、ゴールなどで止まったあとの再開までを含めています。
Wiktionary の定義は「前半と後半それぞれの最初のキック」で、時刻ではなく蹴る動作そのものを指す書き方です。
同辞典は札に football と American football を並べており、アメリカンフットボールでも使う語として扱っています。
引用は2011年1月11日の BBC Sport の記事で、「キックオフ前のアプトン・パークの雰囲気は、いまクラブを取り巻く目に見えるほどの緊張を映していた」という一文。
Oxford Learner’s Dictionaries は句動詞 kick off を Sports: ball and racket sports(球技とラケット競技)のトピックに入れ、c2 の札を付けました。
キックオフの語義②ある活動や催しが始まる時
Cambridge Dictionary は二つ目の語義を informal とし、「ある活動が始まる時」と定義しています。
類義語欄の例文は「宴会とショーのキックオフは何時ですか」で、サッカーとは関係のない催しの開始に使われています。
Wiktionary の二つ目の語義「あらゆる催しの始まりの部分」には、1990年2月の Gay Community News からの引用が付いていました。
ある選挙区での選挙運動を始めた人物の kickoff party(キックオフ・パーティー)に、およそ50人が集まったという記事です。
もう一つの引用は1952年の Anthony Buckeridge『Jennings and Darbishire』で、原稿の一本目を評して「キックオフにしてはかなり ribby だ」と言う場面。
試合の言葉が、催しや作業の「最初の一本」にまで広がって使われているのがわかるでしょう。
キックオフの語義③曲の出だしの音の並び
Wiktionary は三つ目の語義に music の札を付けています。
定義は「The opening sequence of notes in a song, usually played by the song’s main instrument, to indicate the beginning of the song」。
訳すと「曲の始まりを示すために、ふつうはその曲の主な楽器が演奏する、曲の冒頭の音の並び」となります。
試合の開始でも催しの開始でもなく、音楽の中での「始まりの合図」を指す語義です。
ただし Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries には、この音楽の語義は立っていません。
Wiktionary の訳語欄にも、この語義に対する各国語の訳は載っていませんでした。
キックオフの元の句動詞 kick off は「始まる」
Cambridge Dictionary は句動詞 kick off の一つ目の語義を START(始まり)の区分に置き、C1 の札を付けています。
定義は「If a game of football kicks off, it starts(サッカーの試合が kick off するとは、試合が始まることだ)」で、例文は「試合は何時に始まりますか」。
続けて informal の札付きで「to begin(始まる)」という広い語義が立ち、例文は「インドネシアの議会選挙の選挙運動は週末に始まった」です。
「広告が一つの産業として本格的に動き出したのはその時代だった」という例文もあります。
American Dictionary の項は [ I/T ] の札で「to begin」とし、例文は「三日間の祝典は明日、パレードとともに始まる」。
Business English の項の例文は「その広告キャンペーンは、ほぼ始められる状態にある」でした。
キックオフの句動詞 kick something off は「話し合いや活動を始める」
Cambridge Dictionary は kick ( something ) off を別の見出しとして立て、C2 の札を付けています。
定義は「If you kick off a discussion or an activity, you start it(話し合いや活動を kick off するとは、それを始めることだ)」。
例文の一つは「それでは、何か提案はありますか、ジム、あなたから始めてください」で、会議の口火を切る人を指名する場面です。
Oxford Learner’s Dictionaries の kick off something も informal の札付きで「話し合い・会議・催しなどを始める」と定義しています。
同辞典はこの語義の同義語に open を挙げ、例文は「誰がこの話し合いの口火を切りますか」。
会議を始めるときには、何をどの順で話し合うかの一覧が手元にあるはずです。
その一覧を指すカタカナ語はアジェンダの意味と語源で取り上げています。↓

キックオフの句動詞 kick off with で「〜から始める」
Cambridge Dictionary は kick something off with と kick off with という二つの形を示しています。
一つ目の例文は「統計をいくつか示すことから話し合いを始めたいと思います」です。
二つ目は「オリンピックは各国の入場行進と聖火の点火式から始まる」で、何から始まるかを with の後ろに置いています。
Oxford Learner’s Dictionaries も kick off (with something) という見出しで、例文は「トムがいくつかの意見を述べることから始めます」。
Business English の項はさらに kick (sth) off with sth/by doing sth という形を挙げ、with の後ろに名詞、by の後ろに doing(動詞の ing 形)を置く使い方まで示しました。
何で始めるかを with、どうやって始めるかを by doing で言い分けられるわけです。
キックオフの句動詞には「騒ぎになる・怒り出す」もある
Cambridge Dictionary は句動詞 kick off に TROUBLE OR EXCITEMENT(騒ぎや興奮)という区分も設け、informal の札で「活気と興奮に満ちた状態になる、ときに暴力も伴う」と定義しています。
例文は「シャモニーのバーやクラブはどの夜もにぎやかだが、週末には本当に盛り上がる」。
「チームの一人が相手にスライディングで倒すと、『一気に騒ぎになった』」という例文もあります。
同じ区分のもう一つの語義は「怒り出したり、騒がしく不平を言い始めたりする」で、例文は「子どもたちが騒ぎ始めたので、私は残っていられなかった」です。
Oxford Learner’s Dictionaries も「to suddenly become angry or violent(急に怒り出す、または暴力的になる)」という語義を Feelings(感情)のトピックに入れ、c2 の札を付けています。
同辞典の「And then it all kicked off」という例文は、この流れで読むと「そこで一気に騒ぎになった」とも取れる一文でしょう。
キックオフの句動詞のそのほかの意味(死ぬ・蹴って脱ぐ)
Cambridge Dictionary は句動詞 kick off に DIE(死ぬ)という区分も立て、US informal(アメリカ英語のくだけた言い方)の札で「to die(死ぬ)」と定義しています。
同辞典の類義語欄でこの語義の仲間として並ぶのは、die・pass away・pass on・pass(アメリカ英語)です。
例文は類義語の側にしかなく、kick off そのものを使った「死ぬ」の例文は載っていません。
Oxford Learner’s Dictionaries は kick something off を「to remove something by kicking(何かを蹴って取り去る)」とも定義しました。
例文は「彼らは玄関ホールにかばんを置き、靴を蹴るように脱いだ」。
どちらも名詞のキックオフには引き継がれていない語義です。
キックオフの英語 kick-off の発音は /ˈkɪk.ɒf/
Cambridge Dictionary は名詞 kick-off の発音を、イギリス英語で /ˈkɪk.ɒf/、アメリカ英語で /ˈkɪk.ɑːf/ と示しています。
Business English の項はイギリス英語を /ˈkɪkɒf/ と表記しました。
どちらも第一強勢の印は最初の kick の部分に付いています。
イギリス英語の off の母音が /ɒ/、アメリカ英語では /ɑː/ と、後ろ半分の音が英米で分かれる点に注意が要るでしょう。
句動詞 kick off の項に示されているのは kick の部分の /kɪk/ だけです。
Wiktionary の発音欄には Southern England(イングランド南部)の話者の音声ファイルが置かれていますが、発音記号は書かれていません。
キックオフの綴りは kick-off と kickoff の二通り
Wiktionary は Alternative forms(別の綴り)の欄に kickoff を挙げています。
Cambridge Dictionary の Business English の項は、名詞を「UK informal ( US kickoff )」としており、イギリス英語では kick-off、アメリカ英語では kickoff と書き分ける形です。
Wiktionary の1990年の引用でも、kickoff party と一語の綴りで書かれていました。
句動詞のほうは kick off と二語に分けて書き、名詞になるとハイフンでつなぐか一語にする、という区別も辞書の見出しから読み取れます。
文法の札は、Cambridge Dictionary の英語の項が [ C or U ]、Business English の項が [ S ]。
| 項目 | 辞書の記述 |
|---|---|
| 品詞 | 名詞(kick-off)/句動詞(kick off・kick something off) |
| 名詞の文法の札 | [ C or U ](Cambridge)/[ S ](Cambridge Business English) |
| 句動詞の文法の札 | [ I/T ](Cambridge American)/[ T ](Cambridge Business English) |
| 別の綴り | kickoff(Wiktionary)/US kickoff(Cambridge Business English) |
| レベル | C1(kick off=始まる)・C2(kick something off)(Cambridge)/c2(Oxford) |
| 語源 | 句動詞 kick off から作られた名詞(Wiktionary) |
| 発音 | UK /ˈkɪk.ɒf/・US /ˈkɪk.ɑːf/(Cambridge) |
| 日本語の訳語 | キックオフ・先蹴(Wiktionary)/開始(Cambridge) |
キックオフとスタート・ビギニングの違い(同義語と対義語)
Cambridge Dictionary の類義語欄は、名詞の kick-off を「the start of something(何かの始まり)」の仲間に入れています。
同じ欄に並ぶのは beginning(始まり)・start(開始)・opening(開幕、例文は「式典の開幕は抗議で台なしになった」)・commencement(開始、例文は「契約の開始日はいつですか」)で、反対の意味の end(終わり)も入っていました。
kick-off の例文は「宴会とショーのキックオフは何時ですか」という、くだけた場面のもの。
句動詞のほうの類義語欄には start・begin・commence・open・originate(起こる、始まる)が並びます。
意味の芯は start と同じで、違いは「活動の始まり」の語義に informal の札が付く点と、サッカーの試合開始という出どころにあると言えるでしょう。
新しい製品や事業を世に出す「始まり」を表すカタカナ語は、もう一つあります。
その語の意味と語源はローンチの意味と語源で確かめられます。↓

キックオフの例文(イギリス議会の記録から)
Cambridge Dictionary は、イギリス議会の議事録 Hansard archive から採った例文を多く載せています。
「キックオフは20分遅らされ、テレビでもラジオでも新聞でも、キックオフの時刻をめぐって大混乱が起きている」はその一つです。
「危険が広がっていくなかで、なぜキックオフは遅らされなかったのか」「午後8時、すでにキックオフが遅れていたなか、およそ5万4千人が中にいて、6千人が締め出されていた」という例文も。
「試合のあいだ、たとえばキックオフの直前やハーフタイムに、ある酒場で突然もめごとが起きることがある」という一文もあります。
試合以外では「彼が今日何を始めたのか正確にわかっていたかは定かでないが、討論にとても良い『キックオフ』を与えたのは確かだ」と、討論の口火の意味でも使われていました。
キックオフの各国語訳と日本語訳
Cambridge Dictionary の日本語訳は「(サッカーの試合などを)始める」「(サッカーの試合の)開始」「キックオフ」の三つです。
Wiktionary の訳語欄では、試合の最初のキックの語義に日本語のキックオフと先蹴(せんしゅう)が当てられています。
同じ欄の訳はフランス語が coup d’envoi、ドイツ語が Anstoß、スペイン語が saque inicial。
催しの始まりの語義には、フランス語の lancement、ドイツ語の Auftakt と Startschuss、スペイン語の pistoletazo de salida が並びます。
Cambridge Dictionary のトルコ語訳には「怒ったり不平を言ったりし始める」に当たる kızmaya/yakınmaya başlamak も入っており、騒ぎの語義まで訳し分けられています。
日本語のキックオフという訳は、主に試合と活動の「始まり」の側を写した言葉と言えるでしょう。
キックオフで間違いやすい点
一つ目は、名詞と句動詞の書き分けです。
名詞は kick-off か kickoff、句動詞は kick off と二語に分けるのが、辞書の見出しの形になっています。
二つ目は、句動詞 kick off の意味の幅。
「始まる」のほかに、Cambridge Dictionary も Oxford Learner’s Dictionaries も「騒ぎになる・怒り出す」という語義を立てており、文脈を見ないと読み違えかねません。
三つ目は、くだけた言い方であること。
Cambridge Dictionary は「活動が始まる時」の語義に informal の札を付けており、同じ類義語欄には start・beginning・commencement も並んでいます。
キックオフについてよくある質問
Wiktionary は名詞の kick-off を、句動詞 kick off から作られた名詞(deverbal)としています。
Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries も、句動詞の項から名詞 kick-off へ参照を付けています。
年代や、いつごろから名詞として使われ始めたかについての記述は、三つの辞書には見当たりませんでした。
使えます。
Cambridge Dictionary は informal の札付きで「ある活動が始まる時」という語義を立てています。
例文は「宴会とショーのキックオフは何時ですか」や「キックオフは11時ちょうどです」です。
Wiktionary にも「あらゆる催しの始まりの部分」という語義があります。
どちらも辞書に載っている綴りです。
Cambridge Dictionary の Business English の項は、イギリス英語を kick-off、アメリカ英語を kickoff としています。
Wiktionary も kickoff を別の綴りとして挙げています。
句動詞は kick off と二語に分けて書きます。
Cambridge Dictionary は kick off a discussion(話し合いを始める)という形を示しています。
例文は「統計をいくつか示すことから話し合いを始めたいと思います」です。
Oxford Learner’s Dictionaries は kick off something の対象に話し合い・会議・催しを挙げ、同義語に open を示しています。
Oxford Learner’s Dictionaries と Cambridge Dictionary の Business English の項は、この用法に informal の札を付けています。
キックオフのまとめ
キックオフとは、サッカーの試合が始まる時、またはゴールなどのあと試合が再び始まる時という意味であり、くだけた言い方では、ある活動や催しが始まる時という意味でもあります。
Wiktionary は名詞の kick-off を句動詞 kick off から作られた語とし、曲の出だしの音の並びという語義も載せています。
英語で使うときに押さえておきたいのは、名詞は kick-off か kickoff、句動詞は kick off と書き分けること、何から始めるかは with でつなぐこと、そして強勢が最初の kick にあることの三つです。
読むときに気をつけたいのは、句動詞 kick off の「騒ぎになる・怒り出す」という語義。
始まりの話なのか騒ぎの話なのか、文脈で見分けることになります。
\辞書で引いた言葉/
仕事の始まりを表すビジネス用語を、同じ英英辞典で確かめられます
語源・発音記号・例文つき
キックオフの参考文献
kick-off の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と辞書で確認しました。
- Cambridge Dictionary|kick off(Cambridge University Press 公式辞書)
- Oxford Learner’s Dictionaries|kick off(句動詞)(Oxford University Press 公式辞書)
- Wiktionary|kick-off(Wiktionary 英語版)
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