句動詞とは、動詞に副詞の働きをする小さな語(副詞辞)が付いて、ひとかたまりで別の意味を持つようになった動詞のことです。英語では phrasal verb と呼びます。
句動詞でいちばん学習者を悩ませるのは意味ではなく語順です。目的語を副詞辞の前に置くのか後ろに置くのか、代名詞のときはどうなるのか、そして似た形の group verb(群動詞)とどう違うのか。この記事では、句動詞の定義と語源を押さえたうえで、目的語の位置のルールを一つずつ整理します。
句動詞とは何か(結論)
句動詞とは、主動詞と副詞辞(particle)の二つの部分からできた動詞で、二語そろって初めて一つの意味になります。
句動詞を作る副詞辞として使われることが多いのは around、at、away、down、in、off、on、out、over、round、up です。bring in、go around、look up、put away、take off などが代表例で、いずれも動詞と副詞辞が対になっています。
やっかいなのは、できあがった意味を部品から推測しにくいことです。The book first came out in 1997. の came out は「出版された」を、The plane took off an hour late. の took off は「離陸した」を表します。The lecture went on till 6.30. の went on は「続いた」で、go と on を別々に訳しても届きません。
句動詞という名前の語源
phrasal は1860年に記録された比較的新しい語で、名詞 phrase に形容詞を作る -al が付いた形です。「二語以上からなる」という意味を持ちます。
もとになった phrase は1520年代の英語に入りました。後期ラテン語 phrasis を経て、ギリシャ語の phrasis(話し方、言い回し)にさかのぼります。さらに元をたどると phrazein(告げる、示す)という動詞です。
つまり phrasal verb という名称は「ひとまとまりの言い回しとして働く動詞」を指しています。日本語の「句動詞」も、単語ではなく句(phrase)の単位で一つの動詞として振る舞う点をそのまま訳した名前です。
句動詞を含む多語動詞の3種類
動詞に副詞辞や前置詞が付いたものを総称して多語動詞(multi-word verb)と呼び、その中は3種類に分かれます。
| 種類 | 形 | 目的語の位置 | 例 |
|---|---|---|---|
| 句動詞(phrasal verb) | 動詞+副詞辞 | 副詞辞の前でも後ろでもよい | look up、take off、put away |
| 群動詞(prepositional verb) | 動詞+前置詞 | 前置詞の直後だけ | look after、depend on、listen to |
| 句前置詞動詞(phrasal-prepositional verb) | 動詞+副詞辞+前置詞 | 前置詞の直後だけ | look up to、put up with、get on with |
日常では、この3つをまとめて「句動詞」と呼ぶこともあります。ただし語順のルールは3つで違うので、文を組み立てる場面では区別しておく必要があります。区別の芯にあるのは、動詞の後ろに付いている語が副詞辞なのか前置詞なのかという一点です。
句動詞と熟語・イディオムの違い
句動詞は「動詞+副詞辞」という形で決まる文法上の分類で、熟語やイディオムは「意味が部品から読めない」という意味上の分類です。分け方の物差しが違います。
| 呼び名 | 何で分類しているか | 例 |
|---|---|---|
| 句動詞 | 形(動詞+副詞辞) | take off、carry on |
| イディオム | 意味(部品から読めない) | break the ice、kick the bucket |
| 群動詞 | 形(動詞+前置詞) | look after、deal with |
多くの句動詞は結果としてイディオムでもありますが、両者は重なるだけで同じものではありません。break the ice は動詞+名詞句なので句動詞ではありませんし、逆に stand up のように意味が読める句動詞もあります。
句動詞の目的語は副詞辞の前後どちらにも置ける
目的語を取る句動詞では、目的語が代名詞でない限り、副詞辞は目的語の前でも後ろでも構いません。この性質を分離可能(separable)と呼びます。
She brought up three kids all alone. と I brought my children up to be polite. は、どちらも成り立ちます。前者は up が目的語の前に、後者は後ろに来ています。Do you want me to take off my shoes? と Come in. Take your coat off. も同じ関係です。
どちらでもよいということは、逆に言えば「どちらかしか使えない」と覚えていると半分の文が読めなくなるということです。Do you always look up every new word in a dictionary? と Do you always look every new word up in a dictionary? は、意味の差なく並び立ちます。
代名詞が目的語のときは必ず動詞と副詞辞の間
目的語が me、you、him、us などの人称代名詞のときだけは自由が消えます。代名詞は必ず副詞辞の前、つまり動詞と副詞辞の間に入ります。
I’ve made some copies. Would you like me to hand them out? が正しい形で、hand out them とは言いません。Oh, I can’t lift you up any more. も同じで、lift up you という語順は作れません。
この規則を先に体に入れておくと、句動詞の語順で迷う場面がぐっと減ります。判定は簡単で、目的語が代名詞かどうかを見るだけです。代名詞なら間に挟む、名詞句なら前後どちらでもよい、という二段構えで処理できます。
長い目的語は副詞辞のうしろに置く
名詞句が長くなるときは、副詞辞の後ろに回すのがふつうです。文法上は前でも作れますが、読みにくくなるため実際には選ばれません。
Many couples do not want to take on the responsibility of bringing up a large family of three or four children. では、the responsibility 以下が長い目的語なので on の後ろに置かれています。ここを take the responsibility of … on とすると、動詞と副詞辞の距離が離れすぎてまとまりが見えなくなります。
つまり語順の実務的な判断は三段階です。代名詞なら必ず間、短い名詞句ならどちらでもよい、長い名詞句なら後ろ。この順で当てはめれば、ほとんどの文が決まります。
目的語を取らない句動詞
句動詞のなかには目的語をまったく取らないものがあります。この型では語順の問題そのものが起きません。
break down、carry on、drop off、eat out、get back、go off、hang on、join in、move in、move out、run away、set off、wake up などが該当します。The taxi broke down on the way to the airport. や We’d better set off before the rush-hour traffic starts. のように、動詞と副詞辞だけで文が完結します。
What time did you wake up this morning? の this morning は目的語ではなく時を表す副詞句です。目的語を取るのか取らないのかは動詞ごとに決まっているので、学習者向けの英英辞典で語法表示を確かめるのがいちばん早い方法になります。
群動詞は動詞と前置詞を切り離せない
動詞と前置詞が固く結びついた群動詞では、目的語は必ず前置詞の直後に来ます。間に割り込ませることはできません。
break into、cope with、deal with、depend on、do without、get off、get on、get over、go into、lead to、listen to、look after、look at、look for、look forward to などが代表です。Could you look after my bag while I go and buy the tickets? は言えますが、look my bag after という形にはなりません。
群動詞は目的語を必ず要求する点でも句動詞と違います。Shall we listen to it? のように目的語を伴って初めて文が成立し、Shall we listen to? では終われません。目的語には名詞句・代名詞のほか、Getting to the final depends on winning the semi-final! のように動詞の ing 形も入ります。
句動詞と群動詞の見分け方
判定は目的語を動かしてみるだけで済みます。目的語を動詞のすぐ後ろへ移せたら句動詞、移せなければ群動詞です。
| 試す文 | 移動できるか | 判定 |
|---|---|---|
| look up every new word → look every new word up | できる | 句動詞 |
| look after my bag → look my bag after | できない | 群動詞 |
| take off my shoes → take my shoes off | できる | 句動詞 |
| depend on the weather → depend the weather on | できない | 群動詞 |
代名詞に置き換えて試すと、さらにはっきりします。句動詞なら take them off の形になり、群動詞なら look after it のように前置詞の後ろに残ります。代名詞がどちら側に立つかで、副詞辞なのか前置詞なのかが判別できるということです。
3語でできた句動詞(句前置詞動詞)
動詞・副詞辞・前置詞の3部分からなる型もあります。副詞辞と前置詞は切り離せず、目的語は必ず前置詞の直後に置きます。
catch up with、come up against、do away with、face up to、get away with、get on with、listen out for、look down on、look in on、look out for、look up to、put up with、watch out for などがこの型です。Ken’s just chatting to a friend. He’ll catch up with us in a minute. のように使います。
She was a wonderful teacher. We all looked up to her. の her は前置詞 to の直後にあります。looked her up to や looked up her to という語順は作れません。fix … up with、let … in on、put … down to、take … out on のように、動詞の直後にも目的語を取る一群もあり、She fixed us up with a violin teacher. がその形です。
句動詞はやわらかい響きを持つ
句動詞は、同じ意味の一語動詞に比べて、くだけた響きになることがよくあります。書き言葉と話し言葉の使い分けに直結する性質です。
| 句動詞 | あらたまった一語動詞 |
|---|---|
| sort out | solve / resolve |
| put up | erect / construct |
| find out | discover |
| put off | postpone |
We need to sort the problem out. と We need to solve the problem. はほぼ同じ内容を伝えますが、後者のほうが硬い印象になります。論文やビジネス文書では一語動詞が選ばれやすく、会話では句動詞が自然に出てきます。ただし例外も多いので、常に句動詞のほうがくだけているとは言い切れません。
句動詞についてよくある質問
いいえ。分離できるのは目的語を取る句動詞だけです。群動詞や句前置詞動詞は動詞と前置詞を切り離せず、目的語は前置詞の直後に固定されます。
目的語が人称代名詞だからです。代名詞は必ず動詞と副詞辞の間に入るので、hand them out が正しい形になります。名詞句なら hand out the leaflets でも hand the leaflets out でも構いません。
重なりますが同じではありません。句動詞は動詞+副詞辞という形で決まる分類、熟語やイディオムは意味が部品から読めないという性質で決まる呼び名です。break the ice は熟語ですが句動詞ではありません。
意味は覚える必要がありますが、語順は規則で処理できます。目的語が代名詞かどうか、副詞辞か前置詞かの二点を判定すれば語順は決まるので、覚える量は見た目より少なくなります。
句動詞のまとめ
句動詞とは、主動詞と副詞辞が組み合わさって一つの意味を作る動詞です。同じ多語動詞でも、動詞+前置詞の群動詞、動詞+副詞辞+前置詞の句前置詞動詞とは語順のふるまいが違います。
目的語の位置は三つの規則で決まります。代名詞は必ず動詞と副詞辞の間、短い名詞句は前後どちらでもよい、長い名詞句は副詞辞の後ろ。群動詞と句前置詞動詞では目的語は前置詞の直後に固定されるので、目的語を動かせるかどうかを試せばどの型かを判別できます。名前のもとにある phrase は「言い回し」を指すギリシャ語にさかのぼり、二語以上でひとまとまりに働くという性質がそのまま呼び名になっています。
句動詞の出典
句動詞の定義、語順の規則、語源は以下の英英辞典、語源辞典、および Cambridge の文法解説で確認しました。

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