ボキャブラリーとは、ある人が知っていて使える語の全体、そしてある言語や分野に存在する語の全体のことです。英語の vocabulary をそのままカタカナにした語で、日本語では「語彙」と訳されます。
この記事では、ボキャブラリーの意味を英英辞典の語義からたどり、ラテン語の vocare(呼ぶ)にさかのぼる語源、日本語の「語彙」とのずれ、lexicon との線引き、辞書が示す発音・数え方・レベル表示までを、実際に取得した辞書ページの記述だけで整理します。学習の場でも言語学の場でも顔を出す語なので、辞書がどこまでを含めているのかを一度そろえておくと、英語で読むときに迷わなくなります。
ボキャブラリーとは何か(結論)
ボキャブラリーとは、語の集まりを指す語です。誰の語の集まりか、どの範囲の語の集まりかによって、辞書は意味を細かく分けています。共通しているのは「一語ではなく、まとまりを指す」という点です。
Cambridge Dictionary は vocabulary に二つの語義を立てています。一つ目は A2 のレベル表示が付いた [C] の語義で、ある特定の人が知っていて使っている語のすべて、と定義されています。
例文は、2歳になるころには子どもは約200語のボキャブラリーを持つ、という文です。broad vocabulary、wide vocabulary、limited vocabulary という組み合わせも、そのまま見出しの下に並んでいます。
二つ目は C1 のレベル表示が付いた [C or U] の語義で、ある言語や分野に存在する語のすべて、と定義されています。毎週スペイン語の先生が覚えるべき語のリストをくれる、という例文と、コンピューティングもほかの分野と同じように独自の語彙を持っている、という例文が並びます。
Oxford Learner’s Dictionaries はもっと細かく、四つの語義に分けています。①ある人が知っている、あるいは使う語のすべて、②ある言語に存在する語のすべて、③ある主題について話すときに使われる語、④とりわけ外国語学習の本に載っている、意味付きの語のリスト、の四つです。
ボキャブラリーの語源はラテン語 vocare の「呼ぶ」
ボキャブラリーの語源をたどると、ラテン語の vocare「名づける、呼ぶ」に行き着きます。声を意味する vox と同じ系統の語で、印欧祖語の「話す」を表す語根にまでつながります。
Online Etymology Dictionary によれば、英語の vocabulary が現れたのは1530年代です。当時の意味は「短い定義や説明の付いた、語のリスト」でした。中世ラテン語の vocabularium「語のリスト」から入り、その元がラテン語の vocabulum「語、名、名詞」です。
同辞典は、当時の vocabulary が「特定の本や著者に出てくる語」を指すことが多く、より網羅的であろうとする dictionary とは対比されていた、と書いています。つまり生まれたときのボキャブラリーは、頭の中の語の蓄えではなく、紙に並んだ一覧のことでした。
今の日本語で使う意味、つまり「ある人や集団の言語における語の範囲」が記録されるのは1753年です。さらに「ある言語の語の総体」という意味は1782年までに確認されています。約200年かけて、リストから頭の中へ意味が移ったことになります。
Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄も同じ道筋です。16世紀半ばに、定義や訳の付いた語のリストを指す語として、中世ラテン語の vocabularius、ラテン語の vocabulum、そして vocare「呼ぶ」から入った、と記されています。
ボキャブラリーには辞書で4つの意味がある
Oxford Learner’s Dictionaries の四つの語義は、それぞれ数え方とレベル表示が違います。並べて見ると、この語の守備範囲の広さがはっきりします。
| 語義 | 数え方 | 辞書が挙げる例 |
|---|---|---|
| ある人が知っている・使う語のすべて | [countable, uncountable] | to have a wide/limited vocabulary |
| ある言語に存在する語のすべて | [countable] | When did the word ‘bungalow’ first enter the vocabulary? |
| ある主題について話すときに使う語 | [uncountable, countable] | The word has become part of advertising vocabulary. |
| 意味付きの語のリスト(学習書の巻末など) | [countable] | Write it down in your vocab book. |
三つ目の「分野の語」という語義も見落とされがちです。The word has become part of advertising vocabulary.(その語は広告の世界の言葉の一部になった)のように、業界用語のまとまりを指せます。Cambridge Dictionary も、コンピューティングは独自の語彙を持つ、という例文で同じ用法を示しています。
ボキャブラリーと日本語の「語彙」はどこがずれるか
日本語のボキャブラリーは、ほとんどの場合「その人が知っている語の量」を指します。英語の vocabulary はそれを含みつつ、言語全体の語、分野の語、紙のリストまでを一語で背負っています。
とくに違いが出るのが、語が言語に入ってくるという言い方です。Oxford Learner’s Dictionaries は、bungalow という語はいつ英語に入ったのか、という例文を挙げています。ここでの vocabulary は誰か個人のものではなく、英語という言語そのものの語の総体です。
Oxford Learner’s Dictionaries の類語欄も、ずれを埋める助けになります。language・vocabulary・terms・wording・terminology の五つが、人が話したり書いたりするときに使う語や表現を指す語群として並べられています。
同欄の説明によれば、terms は自分の言いたいことの言い表し方、wording は書かれた文や話の中で、とりわけ慎重に選ばれた語句、terminology はある主題で使われる専門的な語や表現の集合です。日本語で「言い回し」と言いたいときに vocabulary を使うと外れる、ということが、この並びから分かります。
ボキャブラリーと lexicon の違い
lexicon も「語の集まり」を指しますが、Cambridge Dictionary はこの語に language specialized、つまり言語学の専門語というラベルを付けています。日常語である vocabulary とは使われる場所が違います。
| 語 | Cambridge の定義 | ラベル | 発音(英) |
|---|---|---|---|
| vocabulary | ある人が知っていて使う語のすべて/ある言語や分野に存在する語のすべて | A2・C1 | /vəˈkæb.jə.lər.i/ |
| lexicon | ある言語や分野で使われる語の(一覧)、または辞書 | language specialized | /ˈlek.sɪ.kən/ |
Cambridge Dictionary は lexicon に、old-fashioned(古風)というラベル付きで「辞書」という語義も立てています。つまり lexicon には、語のまとまりを指す顔と、本そのものを指す古い顔の両方があります。
語源を見ると系統がはっきり分かれます。Online Etymology Dictionary によれば lexicon は1600年ごろ、フランス語または近代ラテン語の lexicon から入りました。元はギリシャ語の lexikon (biblion)「語の(本)」で、lexis「語、句、話し方、文体」、さらに legein「言う」にさかのぼります。
「ある活動領域に固有の語彙」という現代的な意味は1640年代からの比喩的な拡張だ、とも書かれています。つまり vocabulary はラテン語の「呼ぶ」から、lexicon はギリシャ語の「言う」から来ており、意味が近づいたのは後からです。
アクティブ・ボキャブラリーとパッシブ・ボキャブラリー
Oxford Learner’s Dictionaries は一つ目の語義の例として、your active vocabulary と your passive vocabulary を並べ、それぞれに括弧で説明を付けています。
active vocabulary は、自分が実際に使う語。passive vocabulary は、意味は分かるけれど自分では使わない語、と定義されています。辞書が例文の中に直接この区別を書き込んでいる、というのが重要な点です。
同辞典のコロケーション欄には、vocabulary と結び付く動詞として have、acquire、learn が挙がっています。形容詞は big、extensive、large。vocabulary の後ろに続く名詞として item と word list も示されています。
Cambridge Dictionary の例文にも、1日に10個の新しい語を覚えようとしている、という形で items of vocabulary が出てきます。vocabulary そのものは数えにくいので、item という数えられる語で一つずつを指す、という発想です。
ボキャブラリーの発音は /vəˈkæb.jə.lər.i/ で第2音節にアクセント
vocabulary の発音は、Cambridge Dictionary が英音 /vəˈkæb.jə.lər.i/、米音 /voʊˈkæb.jə.ler.i/、Oxford Learner’s Dictionaries が英音 /vəˈkæbjələri/、米音 /vəˈkæbjəleri/ と示しています。アクセントはどれも第2音節の cab に乗ります。
| 辞書 | 英音 | 米音 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary | /vəˈkæb.jə.lər.i/ | /voʊˈkæb.jə.ler.i/ |
| Oxford Learner’s Dictionaries | /vəˈkæbjələri/ | /vəˈkæbjəleri/ |
カタカナの「ボキャブラリー」と一番ずれるのが最初の音です。辞書の表記は /və/ または /voʊ/ で、どちらも弱いか、あるいは二重母音です。日本語の「ボ」のように強く短く切る音ではありません。
二つ目のずれは音節の数です。辞書の区切りでは vo・cab・u・lar・y の5音節で、強いのは2番目だけ。残りの /jə/ や /lər/ は曖昧母音で、ほとんど飲み込むように発音されます。カタカナの6拍を均等に読むと、まったく違うリズムになります。
ボキャブラリーの英語 vocabulary は数えるのか
Cambridge Dictionary は、人の語彙を指す語義に [C]、言語や分野の語彙を指す語義に [C or U] を付けています。Oxford Learner’s Dictionaries は見出しに (plural vocabularies) と複数形を明記したうえで、語義ごとに数え方を分けています。
つまり基本は数えられる名詞です。a vocabulary of about two hundred words(約200語の語彙)のように a が付き、wide vocabulary、limited vocabulary のように形容詞で幅を言います。
複数形が立つのは、複数の人や集団の語彙をまとめて指すときです。Cambridge Dictionary の用例欄には、子どもたちの語彙の性質は、耳にする語と持っている概念だけからは予測できない、という文が children’s vocabularies の形で載っています。
レベル表示は語義で割れます。Cambridge Dictionary は人の語彙の語義に A2、言語や分野の語彙の語義に C1 を付けています。日常会話で自分の語彙の話をするのはやさしい側、言語全体の語彙を論じるのは上級側、という切り分けです。
ボキャブラリーを使った英語の例文とよくある間違い
まずは一番よく使う型です。have a wide vocabulary(語彙が広い)、have a limited vocabulary(語彙が限られている)。Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries の両方に載っている形で、形容詞で幅を表します。
量を言うなら a vocabulary of ~ words の型です。2歳になるころには子どもは約200語の語彙を持つ、という Cambridge Dictionary の例文がそのまま使えます。
増やすことを言う型もあります。Reading will increase your vocabulary.(読むことが語彙を増やす)、This book has been designed to help you expand your vocabulary.(この本は語彙を広げる助けになるよう作られている)。increase と expand が辞書の例文に出てくる動詞です。
慣用句も一つ覚えておくと便利です。not in somebody’s vocabulary。Oxford Learner’s Dictionaries は、誰かが理解しないこと、と定義し、失敗という語は彼の辞書には無い、つまり彼にとって失敗は存在しない、という例文を挙げています。Cambridge Dictionary も not be in someone’s vocabulary の形で同じ慣用句を収録しています。
間違いの一つ目は、一つの語を指して a vocabulary と言ってしまうことです。vocabulary は語のまとまりを指すので、一語なら a word、数えたいなら Cambridge Dictionary の例文にある items of vocabulary の形を使います。
二つ目は、言い回しや文体の話に vocabulary を使うことです。Oxford Learner’s Dictionaries の類語欄では、言い表し方は terms、慎重に選ばれた語句は wording、専門用語の集合は terminology と割り振られています。
ボキャブラリーについてよくある質問
使われる場所が違います。Cambridge Dictionary は vocabulary に A2・C1 というレベル表示を付けた日常語として扱い、lexicon には language specialized(言語学の専門語)というラベルを付けています。lexicon には old-fashioned として「辞書」という語義もあります。語源も vocabulary はラテン語 vocare「呼ぶ」、lexicon はギリシャ語 legein「言う」で別系統です。
できます。Oxford Learner’s Dictionaries は見出しに (plural vocabularies) と明記しています。Cambridge Dictionary の用例欄にも children’s vocabularies という形が載っています。ただし語義によっては [U] の扱いもあり、Cambridge Dictionary は言語や分野の語彙を指す語義に [C or U] を付けています。
自分が実際に使う語のことです。Oxford Learner’s Dictionaries は例文の中で your active vocabulary に「自分が使う語」、your passive vocabulary に「意味は分かるが自分では使わない語」という説明を括弧書きで付けています。辞書が語義の例として直接この区別を示しています。
1530年代です。Online Etymology Dictionary は最初の意味を「短い定義や説明の付いた、語のリスト」とし、中世ラテン語 vocabularium、ラテン語 vocabulum「語、名、名詞」、vocare「名づける、呼ぶ」という道筋を示しています。頭の中の語の範囲という今の意味が記録されるのは1753年です。
ボキャブラリーのまとめ
ボキャブラリーとは、ある人が知っていて使う語の全体、ある言語に存在する語の全体、ある分野で使われる語、そして意味付きの語のリスト、この四つを指す語です。語源はラテン語 vocare「呼ぶ」で、英語には1530年代に「語のリスト」として入りました。
発音は英音 /vəˈkæb.jə.lər.i/、米音 /voʊˈkæb.jə.ler.i/ で、アクセントは第2音節の cab に乗ります。カタカナの6拍を均等に読まず、2番目だけを強く、あとは軽く流すのが辞書の表記に近い形です。
数え方は基本が可算で、複数形は vocabularies。言語や分野の語彙を指すときは不可算の扱いもあります。lexicon は言語学の専門語というラベルが付いた別の語で、語源もギリシャ語系です。日本語のボキャブラリーより英語の vocabulary のほうが守備範囲が広い、という一点を押さえておくと、英文を読むときの取り違えが減ります。
ボキャブラリーの出典
vocabulary と lexicon の定義、語法、発音、語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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