トレードオフとは、片方を立てるともう片方が引っ込む関係のことです。英語の trade-off をそのままカタカナにした語で、対立する二つを釣り合わせる状況と、良いものを得るために悪いものを受け入れる状況、その両方を指して使われます。
この記事では、トレードオフの意味を英英辞典の語義からたどり、1959年という比較的新しい語源、もとになった動詞句 trade off との関係、辞書が示す発音と数え方、前置詞 between と for の使い分け、そしてビジネス英語での型までを整理します。会議でもレポートでも顔を出す語なので、英語の trade-off がどう組み立てられているかを一度そろえておくと、そのまま英文で使えます。
トレードオフとは何か(結論)
トレードオフとは、二つの望ましいものが同時には成り立たず、どちらかを取ればどちらかを手放すことになる状況のことです。「両方ほしいのに両方は取れない」という形が決まって出てくるのが、この語の輪郭です。
Cambridge Dictionary は名詞 trade-off の第一の語義を、対立する二つの状況や性質を釣り合わせる状況、と定義しています。添えられた例文は、仕事を正確にやることと速くやることのあいだにはトレードオフがある、という文です。もう一つ、彼女は仕事と家族のあいだでトレードオフをしなければならなかったと語った、という例文も並んでいます。
第二の語義は、良いものを手に入れるために悪いものを受け入れる状況、です。車を買う一部の人にとって、スポーティなデザインの代わりに室内が狭いのは受け入れられるトレードオフだ、という例文が付いています。
Oxford Learner’s Dictionaries はもっと短く、互いに対立する二つのものを釣り合わせる行為、としています。生産を増やすことと品質が落ちることのあいだのトレードオフ、その薬の利益と副作用のリスクのあいだのトレードオフ、という二つの例文が載っています。
トレードオフの語源は1959年|つづりはハイフンあり・なしの両方
名詞の trade-off が英語に現れたのは1959年です。Online Etymology Dictionary によれば、最初の意味は「ある利益を別の利益のために犠牲にすること」でした。カタカナ語の中ではかなり新しい部類に入ります。
できかたは動詞句からの名詞化です。同辞典は、動詞句 trade off が1793年に「物々交換で処分する」の意味で記録されている、としています。つまり「交換して手放す」という動作の言い方が先にあって、166年あとにその状況を指す名詞ができた、という順番です。
同辞典は見出しに「also tradeoff」と併記しています。ハイフンを入れた trade-off と、詰めて書く tradeoff の両方が使われるということです。Oxford Learner’s Dictionaries はハイフン入りの trade-off だけを見出しに立てています。
部品も見ておきます。動詞 trade は1540年代に「道を踏む」の意味で名詞から生まれ、1560年代に「商売をする、売り買いする」の意味が発達しました。「物々交換する」の意味が記録されるのが1793年で、これがちょうど trade off の初出と重なります。
off のほうは1200年ごろ、古英語 of を強めた形として現れています。「~から離れて」という前置詞の意味と「より遠い」という形容詞の意味が固まるのは17世紀です。trade と off を合わせると「交換して手放す」になる、という組み立てがそのまま見えます。
辞書が立てるトレードオフの2つの語義
Cambridge Dictionary は名詞 trade-off に二つの語義を立てています。似ているようで重心が違うので、並べて見ておくと英文を書くときの選び方が決まります。
| 語義 | 辞書の定義 | 品詞欄 |
|---|---|---|
| ①釣り合い | 対立する二つの状況や性質を釣り合わせる状況 | [C] |
| ②受け入れ | 良いものを得るために悪いものを受け入れる状況 | [C usually singular] |
①は「天秤にかける」ほうです。どちらも悪くはないが同時には成り立たない、という中立的な見方をします。②は「割り切る」ほうで、こちらは片方がはっきり不利だと認めたうえで受け入れる、という色が付きます。
Cambridge Business English Dictionary は②寄りの定義を採っています。好きではないもの・望んでいないものを受け入れて、望んでいるものを手に入れる状況、という書き方です。品詞欄は [C, usually singular] で、こちらも単数で使うのが基本だと示されています。
Cambridge Dictionary の SMART Vocabulary 欄は、trade-off を「Balance and imbalance(釣り合いと不均衡)」の話題に入れています。動詞句のほうは「Accepting & agreeing reluctantly(しぶしぶ受け入れる・同意する)」に分類されており、名詞と動詞句で見られている角度が違うことが分かります。
トレードオフと動詞句 trade off の関係
日本語では「トレードオフする」と言ってしまいますが、英語では名詞 trade-off と句動詞 trade something off を分けて使います。Oxford Learner’s Dictionaries は句動詞の項に「related noun trade-off」と書いて、両者をつないでいます。
Cambridge Dictionary は句動詞 trade something off を、良いものを得るために不利な点や悪い特徴を受け入れること、と定義しています。例文は、人件費とコンピュータ費用をトレードオフできるかもしれない、という文で、trade something off against something の形が示されています。
Oxford Learner’s Dictionaries は同じ句動詞を、互いに対立する二つのものや状況を釣り合わせること、としています。例文は、彼らはインフレと失業を釣り合わせようとしていた、という文です。
ビジネス辞典には for を取る形も出ています。Cambridge Business English Dictionary の trade sth off for sth で、彼らは将来の収益を目先の現金のために手放すことに落ち着かなさを感じている、という例文が付いています。against は「~と釣り合わせる」、for は「~と引き換えに手放す」という向きの差です。
ビジネス英語のトレードオフは「リスクとリターンの釣り合い」
Cambridge Business English Dictionary は trade-off の例文に、投資の話をそのまま持ってきています。これらの企業は、大半の個人投資家にとってリスクとリターンの最良のトレードオフを提供している、という文です。
| 型 | 意味 | 出どころ |
|---|---|---|
| a trade-off between sth and sth | ~と~のあいだのトレードオフ | Cambridge ビジネス英語 |
| a trade-off for sth | ~と引き換えのトレードオフ | Cambridge ビジネス英語 |
| trade-off decisions | トレードオフを伴う意思決定 | Cambridge ビジネス英語 |
| trade sth off for sth | ~のために~を手放す | Cambridge ビジネス英語 |
もう一つの例文はデータの話です。データ収集の爆発的な増加は、多くの人にとって利便性と割引と引き換えのトレードオフとして受け入れられてきた、という文で、a trade-off for sth の形が使われています。
同辞典が挙げている trade-off decisions という並びも便利です。名詞をそのまま形容詞のように前に置く型で、日本語の「トレードオフの判断」にそのまま当たります。会議資料の見出しに使える形です。
トレードオフの発音は /ˈtreɪd.ɒf/ で前に体重が乗る
trade-off は名詞のとき、前半の trade を強く読みます。カタカナの「トレードオフ」は平らに読みがちですが、英語では最初の音節に体重が乗ります。
| 辞書 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary(名詞) | /ˈtreɪd.ɒf/ | /ˈtreɪd.ɑːf/ |
| Cambridge Business English(名詞) | /ˈtreɪdɒf/ | ― |
| Oxford Learner’s Dictionaries(名詞) | /ˈtreɪd ɒf/ | /ˈtreɪd ɔːf/ |
| Cambridge Dictionary(動詞 trade) | /treɪd/ | /treɪd/ |
注目したいのは後半の母音です。イギリス英語は /ɒ/ で短く丸い音、アメリカ英語は Cambridge が /ɑː/、Oxford が /ɔː/ と、どちらも長い音を当てています。カタカナの「オフ」より口を開けて長めに出す音です。
前半は /treɪd/ で、二重母音 /eɪ/ が入ります。「トレード」と平らに伸ばすのではなく、「エイ」と動く音です。trade 単独の発音は Cambridge が英米とも /treɪd/ としています。
トレードオフの英語 trade-off は数えられる名詞
Cambridge Dictionary は trade-off の第一の語義に [C]、第二の語義に [C usually singular] の印を付けています。つまり可算名詞で、ふつうは単数で使う、ということです。
日本語で「トレードオフ」と裸で言うところを、英語では a trade-off と冠詞を付けます。There is a trade-off between A and B. という言い方が最も基本の形で、Cambridge・Oxford の両方の例文がこの型を取っています。
複数形が出るのは、いくつもの釣り合いを並べるときです。ただし辞書の例文はすべて単数なので、迷ったら単数にしておくと外しません。
Cambridge Business English Dictionary も [C, usually singular] と同じ印を付けています。二つの辞典が同じ扱いをしている以上、「数えるが単数が基本」という理解でそろえて問題ありません。
トレードオフの前置詞は between と for で意味が変わる
trade-off に付く前置詞は主に二つで、選び方で文の意味が変わります。between は「二つを並べて釣り合わせる」、for は「何かと引き換えに」です。
| 形 | 使いどころ | 辞書の例 |
|---|---|---|
| a trade-off between A and B | AとBを並べて釣り合わせる | 生産増と品質低下のあいだ(Oxford) |
| a trade-off for sth | ~と引き換えに受け入れる | スポーティなデザインと引き換えの狭さ(Cambridge) |
| trade A off against B | AをBと釣り合わせる(句動詞) | 人件費とコンピュータ費用(Cambridge) |
| trade A off for B | BのためにAを手放す(句動詞) | 将来の収益と目先の現金(Cambridge ビジネス英語) |
Oxford Learner’s Dictionaries は名詞の見出しに trade-off (between something and something) と書いており、between が第一の型だと示しています。句動詞のほうは trade something off (against/for something) と、二つの前置詞を併記しています。
迷ったときの目安は主語の側です。二つを対等に置いて「どちらを取るか」を論じるなら between、片方をはっきり犠牲にしたと言いたいなら for が収まります。
トレードオフを使った英語の例文とよくある間違い
まずは基本の型です。There is a trade-off between doing the job accurately and doing it quickly.(仕事を正確にやることと速くやることのあいだにはトレードオフがあります)。Cambridge Dictionary に載っている形で、between のうしろに動名詞を並べています。
名詞句同士を並べる型も便利です。a trade-off between increased production and a reduction in quality(生産増と品質低下のあいだのトレードオフ)。Oxford Learner’s Dictionaries の例文です。
受け入れる側を強調するなら、For some car buyers, lack of space is an acceptable trade-off for a sporty design.(一部の車の買い手にとって、室内の狭さはスポーティなデザインと引き換えに受け入れられるトレードオフです)。
間違いの一つ目は、冠詞を落とすことです。可算名詞なので There is trade-off between … とは書かず、a を付けます。
二つ目は、「トレードオフする」をそのまま trade-off を動詞にして使うことです。動詞として使うなら trade something off の語順で、目的語を trade と off のあいだに置きます。
三つ目は前置詞で、between のうしろは必ず二つ並べます。A and B の形を崩すと、何と何を釣り合わせているのかが読み手に届きません。
トレードオフについてよくある質問
名詞としては1959年からです。Online Etymology Dictionary は最初の意味を「ある利益を別の利益のために犠牲にすること」としています。もとになった動詞句 trade off は1793年に「物々交換で処分する」の意味で記録されています。
どちらも使われます。Online Etymology Dictionary は見出しに「also tradeoff」と併記しています。ただし Oxford Learner’s Dictionaries はハイフン入りの trade-off だけを見出しに立てているので、学習英語としてはハイフン入りが安全です。
数えられます。Cambridge Dictionary は [C] と [C usually singular]、Cambridge Business English Dictionary は [C, usually singular] の印を付けています。可算名詞なので a trade-off と冠詞を付け、ふつうは単数で使います。
向きが違います。Cambridge Dictionary の trade something off against something は「~と釣り合わせる」で、人件費とコンピュータ費用を比べる例文が付いています。Cambridge Business English Dictionary の trade sth off for sth は「~のために手放す」で、将来の収益を目先の現金と引き換える例文が付いています。
トレードオフのまとめ
トレードオフとは、対立する二つを釣り合わせる状況、あるいは良いものを得るために悪いものを受け入れる状況のことです。語源は1959年で、1793年の動詞句 trade off「物々交換で処分する」から名詞化しました。
英語の trade-off は可算名詞で、ふつうは単数で使います。前置詞は between が「二つを並べて釣り合わせる」、for が「何かと引き換えに」です。動詞にするなら trade something off の語順にして、目的語を真ん中に置きます。発音は前半に体重が乗る /ˈtreɪd.ɒf/ で、後半の母音は英米で開き方が変わります。
トレードオフの出典
trade-off の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

コメント