形式主語とは、本当の主語を文の後ろへ送るために、主語の位置に置く it のことです。it 自体は何も指しておらず、席を確保するためだけに立っています。
この記事では、It is ~ to ~ という形がどう組み立てられているのかを確認したうえで、真主語の見つけ方、to 不定詞と that 節の使い分け、そして of と for の切り替えを整理します。あわせて、なぜ英語がわざわざ主語を後ろへ回すのかという理由にも踏み込みます。形は簡単ですが、理由まで分かると自分で書けるようになります。
形式主語とは何か(結論)
形式主語とは、意味を持たないまま主語の位置に置かれる it です。実際の主語は文の後ろにあり、it はその代役として席に座っています。
It’s always interesting to find out about your family history. がその例です。interesting なのは it ではなく、to find out about your family history のほうです。この to 不定詞が本当の主語で、これを真主語と呼びます。
英語の文法解説では、この it を dummy subject(空の主語)や anticipatory it(先取りの it)と呼びます。前を予告し、中身は後ろで言う、という働きを表した名前です。日本語の「形式主語」という言い方も、形だけの主語という同じ点を指しています。
形式主語の it は何も指していない
通常の it は前に出た名詞を指します。形式主語の it は、それとはまったく別の働きをしています。
Don’t drink the milk. It smells terrible. の it は the milk を指しています。前に出た名詞の代わりに立つ、代名詞としてのふつうの使い方です。
これに対して I know it’s going to rain today! の it は何も指していません。天気・時間・距離を言うときの it も同じで、指す対象がない空の主語です。この二つを区別できると、文中の it を見たときに「何を指しているのか」と探して迷う時間がなくなります。
なぜ主語を後ろへ回すのか
英語では、命令文を除くすべての節に主語が必要です。この制約と、長い主語を嫌う性質が合わさって、形式主語という仕組みが生まれます。
To find out about your family history is always interesting. という語順も文法的には成り立ちます。ただし主語が長く、動詞にたどり着くまで読み手が待たされます。改まった書き言葉では見かけますが、日常の英語ではまれです。
形式主語を使えば、It’s always interesting と骨組みを先に示してから中身を続けられます。短い形で判断を先に伝え、詳しい説明を後ろに置く。英語が好む情報の並べ方に、この構文はそのまま合致しています。
真主語の見つけ方
真主語を探す手順は決まっています。it を消して、後ろの部分を主語の位置へ戻してみることです。
| 形式主語の文 | 真主語 |
|---|---|
| It’s important to wear a helmet. | to wear a helmet |
| It’s good that she’s doing more exercise. | that she’s doing more exercise |
| It was nice to talk with them again. | to talk with them again |
| It’s quite likely that we shall be late. | that we shall be late |
戻したときに意味の通る文になれば、その部分が真主語です。It’s important to wear a helmet. なら Wearing a helmet is important. と言い換えられます。ここで注意したいのは、it を省いて Is important to wear a helmet. とはできない点です。主語の席は必ず埋めなければなりません。
to 不定詞と that 節の使い分け
真主語の位置に入るのは、主に to 不定詞と that 節です。どちらが来るかは、後ろで言いたい内容の性質で決まります。
to 不定詞は行為そのものを指します。It’s useful to write down your passport number somewhere. は、書き留めるという行為が有益だという意味です。主語を明示しないので、一般論として述べるときに向いています。
that 節は、主語と動詞のそろった事実や出来事を指します。It’s good that she’s doing more exercise. は、彼女が運動しているという事実についての判断です。誰がどうしているかを言う必要があるときは、that 節を選びます。
It is ~ to ~ の作り方
組み立ての手順は三つです。順番どおりに置いていけば、迷わず文が作れます。
まず It is または It was を置きます。次に判断を表す形容詞を続けます。important、useful、interesting、nice、likely、difficult、easy などがこの位置に入ります。
最後に to 不定詞か that 節で中身を言います。It is + 形容詞 + to 不定詞。この三段構えを型として覚えておけば、言いたい内容が長くても文が崩れません。
to 不定詞の主語を示す of と for
誰の行為かを示したいときは、to 不定詞の前に人を置きます。このとき前置詞は of と for に分かれます。
人の性質を評価するときは of を使います。It was really kind of you to help me. がその形で、親切なのは行為ではなく、そうした人その人です。It was nice of them to invite us. も同じ構造です。kind、nice、silly、rude のように人柄を表す形容詞がこの型を取ります。
それ以外の形容詞では for を使います。難しい、必要だ、可能だといった判断は、人の性質ではなく行為についての評価だからです。of と for の切り替えは、形容詞が人を評価しているか行為を評価しているかで決まります。
形式目的語の it
同じ仕組みは目的語の位置にもあります。こちらは形式目的語と呼ばれ、find や consider とよく組みます。
I find it amazing that they’ve never stopped arguing about football. がその例です。it が目的語の席に座り、実際の内容は that 節で後から言われています。I find amazing that they’ve … という形は成り立ちません。
to 不定詞でも同じ形が作れます。I find it surprising to see so many people here. がその例です。主語のときと同様、席をいったん埋めてから中身を後ろで言う、という発想はまったく変わりません。
形式主語と there の違い
英語の空の主語は it だけではありません。there も同じ役割を果たしますが、使う場面が分かれています。
it が受けるのは to 不定詞や that 節です。判断や評価を述べる文で使われます。一方 there は there is / there are の形を取り、何かが存在することや、ある場所にあることを表します。
There are five Dutch people in our village. は存在を述べる文で、真主語は five Dutch people です。この文を It’s five Dutch people in our village. とは言えず、逆に It’s important to wear a helmet. を there で言い換えることもできません。受ける中身が違うため、置き換えはききません。
形式主語でよくある間違い
つまずく箇所は三つに集まります。順に確認します。
一つ目は、it を省いてしまうことです。Is important to wear a helmet. という形は成り立ちません。英語の節は主語を空けられないので、内容が後ろにあっても席は埋めます。
二つ目は、形式目的語の it を落とすことです。I find amazing that … ではなく I find it amazing that … と書きます。三つ目は of と for の取り違えです。人柄を評価する形容詞のときだけ of で、それ以外は for になります。
形式主語についてよくある質問
訳しません。この it は何も指しておらず、主語の席を埋めるために置かれているだけです。訳すときは後ろの to 不定詞や that 節を主語として日本語にします。
文法的には正しく、To talk with them again was nice. のような語順も成り立ちます。ただし改まった書き言葉に限られ、日常の英語では形式主語を使うほうがはるかに一般的です。
形容詞が人の性質を評価しているときは of、行為について述べているときは for です。kind、nice、silly のような人柄を表す語では It was kind of you to help me. の形になります。
同じ仕組みです。find や consider のあとで it が目的語の席を埋め、実際の内容は that 節や to 不定詞で後ろに置かれます。I find it amazing that … がその形です。
形式主語のまとめ
形式主語とは、真主語を後ろへ回すために主語の位置へ置く it のことです。この it は何も指しておらず、英語の節が主語を欠かせないという制約を満たすために立っています。
真主語には to 不定詞と that 節が入り、行為を指すなら to 不定詞、事実を指すなら that 節を選びます。行為者を示すときは、人柄を評価する形容詞なら of、それ以外なら for です。同じ発想は形式目的語にもあり、find や consider の後ろで it が席を埋めます。骨組みを先に、中身を後ろに。この並べ方が英語の基本だと押さえておくと、構文そのものが自然に見えてきます。
形式主語の出典
形式主語・空の主語・先取りの it の用法および語法は、以下の英英辞典、語源辞典、および Cambridge の文法解説で確認しました。

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