コンセンサスとは、集団の中でおおむね受け入れられている意見や決定のことです。ラテン語の consensus(ともに感じること)に由来し、多数決とは別の道筋でまとまった状態を指します。
この記事では、コンセンサスの意味を語源からたどり、合意・同意・承認との線引き、英語 consensus の発音、前置詞や動詞との組み合わせ、そしてビジネスで言う「コンセンサスを取る」までを整理します。数えられない名詞であることや、全会一致とは別物であることなど、日本語からは見えにくい点を先に押さえます。
コンセンサスとは何か(結論)
コンセンサスとは、ある集団の中で一般に受け入れられている意見や決定のことです。英英辞典は「グループの全員が同意している意見」と説明しています。
大事なのは「同意」ではなく「意見の状態」を指す語だという点です。誰かが誰かに同意する行為ではなく、集団の中に共有された見方ができあがっている状態を指します。だから consensus は人ではなく場に属します。
英語では学術的な書き言葉によく出る語に分類されています。論文で「the scientific consensus is that …」と書けば、その分野の研究者のあいだで固まっている見解を指します。かたい語で、雑談で軽く使う語ではありません。
コンセンサスの語源は「ともに感じる」
consensus はラテン語の consensus(一致、同意)から来ています。もとは動詞 consentire の過去分詞で、この動詞は「ともに感じる」という意味でした。
consentire は com(ともに)と sentire(感じる)が組み合わさった語です。sentire は英語の sense(感覚)の先祖でもあります。つまりコンセンサスの芯にあるのは、論理ではなく「同じように感じている」という感覚の共有です。
英語の consent(同意する、同意)も同じ consentire から出た語です。consensus と consent は兄弟にあたります。片方は状態を、もう片方は行為を指すように役割が分かれました。
コンセンサスは1854年に医学の用語として広まった
語源辞典によれば、consensus が英語で使われ始めるのは1854年です。しかも最初は人の意見の話ではなく、生理学の用語でした。
当初の意味は「異なる部分が一つの目的に向かって協調して働くこと」でした。体の別々の器官が足並みをそろえて機能する、という文脈で使われた語です。人について「意見の一致」の意味で使われるのは、そこから七年後の1861年からとされています。
ただし、それより前に単発で現れた例が1633年にあります。オックスフォードが語源欄で「17世紀半ば」と示しているのは、この早い用例を数えているためです。年号の食い違いは、辞書ごとに何を初出と数えるかが違うことから生まれています。
この成り立ちを知ると、いまの語義が飲み込みやすくなります。もともと「別々のものが協調している状態」を表す語だったからこそ、今も「全員が賛成した」ではなく「全体としてそろっている」という緩さを残しています。
コンセンサスと合意・同意・承認の違い
日本語では近い訳語が並びます。それぞれが何を指しているのかを分けます。
| 言葉 | 指しているもの | 英語 |
|---|---|---|
| コンセンサス | 集団の中に共有された見解の状態 | consensus |
| 合意 | 当事者どうしが取り決めた内容 | agreement |
| 同意 | 相手の提案を受け入れる意思表示 | consent |
| 承認 | 権限のある側が認めること | approval |
| 全会一致 | 反対が一人もいない状態 | unanimity |
agreement は取り決めそのものを指し、書面になることもあります。consent は一人の意思表示で、医療の分野では「本人の同意」の意味で使われます。approval は上下の関係があり、認める側と認められる側が分かれています。
コンセンサスだけが、誰が誰に対してという方向を持ちません。集団全体を見渡したときにそうなっている、という記述です。だから「部長のコンセンサス」という言い方は座りが悪くなります。
コンセンサスの発音とアクセント
consensus の発音は、イギリス英語もアメリカ英語も /kənˈsen.səs/ です。英米で差がありません。強く読むのは二音節目の sen です。
日本語の「コンセンサス」は先頭の「コン」を高く読みがちですが、英語の con は弱く曖昧に流します。kən-SEN-səs と三つに割り、真ん中だけを立てるのが正しい形です。前と後ろの母音はどちらも曖昧音です。
最後の -sus も「サス」と強く読みません。弱く軽く落とします。日本語では六拍で読みますが、英語は三音節です。拍を減らして真ん中を高くする、と覚えると近づきます。
コンセンサスは数えない名詞
consensus は、辞書で単数扱いまたは不可算と示されています。並べて数える語ではありません。
実際の文では a consensus という形と、冠詞なしの consensus の両方が使われます。a consensus は「ある一つのまとまり」を、冠詞なしは「まとまっている状態」を指す感覚です。どちらもよく出ます。
数えないということは、複数の場面でいくつも作るような扱いをしない語だということです。日本語の「コンセンサスを取っておく」を英語にするときも、複数形にはしません。
consensus と組み合わせて使う動詞
consensus は決まった動詞と組んで使われます。辞書が挙げている代表的な形を並べます。
| 組み合わせ | 意味 | 向き |
|---|---|---|
| reach a consensus | 合意にたどり着く | 人が主語 |
| achieve consensus | 合意を成し遂げる | 人が主語 |
| arrive at a consensus | 合意に至る | 人が主語 |
| a consensus emerges | 合意ができてくる | consensus が主語 |
| a consensus forms | 合意がかたちになる | consensus が主語 |
注目したいのは後ろの二つです。consensus は自分から現れたり、かたちを取ったりする主語になります。誰かが作るものであると同時に、勝手に育ってくるものでもある、という語のとらえ方が表れています。
形容詞では broad(広い)、clear(はっきりした)、general(全体的な)がよく付きます。逆に a lack of consensus と言えば「まとまっていない」ことを表します。
consensus の前置詞は on と about
何についての一致なのかを言うときは、on か about を使います。consensus on the issue、consensus about the plan のような形です。
誰のあいだの一致かを言うときは among を使います。consensus among teachers なら「教員のあいだの共通見解」です。on と among を組み合わせて、対象と範囲を同時に示すこともできます。
by consensus という形も覚えておくと便利です。「合意によって」という意味で、They govern by consensus. なら多数決ではなく話し合いで運営している、という含みになります。
consensus を使った英語の例文
合意に達する例です。The committee finally reached a consensus on the budget.(委員会はようやく予算について合意に達した)。reach a consensus on ~ が最も多い形です。
見解の共有を言う例です。The scientific consensus is that the trend will continue.(その傾向は続く、というのが科学者の共通見解だ)。scientific consensus、political consensus のように分野名を前に置けます。
まとまっていないことを言う例です。There is no clear consensus among the members.(メンバーのあいだにはっきりした共通見解はない)。no consensus、a lack of consensus のどちらでも表せます。
ビジネスの「コンセンサスを取る」とは
日本の職場で言う「コンセンサスを取る」は、決定の前に関係者へ話を通し、反対が出ない状態を作っておくことを指します。会議で決める前の下ごしらえの部分です。
英語の consensus にも、話し合いを重ねてまとまりを作るという含みはあります。ただし「事前に個別に根回しする」という手順までは語に含まれていません。build consensus と言えば、公の場での議論を通じて合意を育てる意味合いが強くなります。
英語で伝えるなら、get consensus よりも build consensus や reach a consensus のほうが自然です。get は「手に入れる」という所有の感覚が出るため、集団の状態を表すこの語とは相性がよくありません。
コンセンサスと全会一致は同じではない
コンセンサスは、反対が一人もいない状態を意味しません。全会一致は unanimity という別の語で表します。
辞書の定義には generally accepted(一般に受け入れられている)という言葉が入っています。細部で意見が違っていても、大枠でそろっていればコンセンサスは成立します。積極的に賛成していない人が含まれていても構いません。
語源に戻ると理由がはっきりします。もとの意味は「別々の部分が同じ目的に向かって協調している状態」でした。部分どうしが完全に同じである必要はなく、向きがそろっていればよい。この緩さが、今の語義にもそのまま残っています。
コンセンサスのよくある間違い
一つ目は、全会一致の意味で使うことです。反対ゼロを言いたいなら unanimous を使います。「コンセンサスが取れた」は、全員が心から賛成したという意味にはなりません。
二つ目は、個人について使うことです。コンセンサスは集団の状態を指す語なので、一人の同意を指して使うと意味がずれます。その場合は consent や agreement が適切です。
三つ目は、綴りです。真ん中は sen で、census(国勢調査)とは別の語です。consensus に c は一つしか入りません。con-sen-sus と三つに割って覚えると間違えにくくなります。
コンセンサスについてよくある質問
和製英語ではありません。英語の consensus をそのまま取り入れた語です。ただし「コンセンサスを取る」という日本語の言い回しには、決定前に関係者へ個別に話を通すという手順の含みがあり、英語の consensus にその意味までは入っていません。
合意は当事者どうしが取り決めた内容そのものを指し、英語では agreement にあたります。コンセンサスは集団の中に共有された見解の状態を指し、誰が誰に対してという方向を持ちません。
辞書は単数扱いまたは不可算と示しています。並べて数える語ではないため、ふつう複数形にはしません。a consensus という形と冠詞なしの consensus のどちらもよく使われます。
同じです。どちらもラテン語の動詞 consentire(ともに感じる)から出ています。consensus は集団の状態を、consent は一人の意思表示を表すように役割が分かれました。
コンセンサスのまとめ
コンセンサスとは、集団の中で一般に受け入れられている意見や決定のことです。ラテン語の consentire(ともに感じる)に由来し、com(ともに)と sentire(感じる)が組み合わさった語です。英語の consent、sense とも根がつながっています。
英語で広まるのは1854年で、最初は生理学の用語でした。人の意見について使われるのは1861年からです。発音は kən-SEN-səs と真ん中を強く読み、英米で差がありません。数えない名詞で、前置詞は on か about、動詞は reach や build と組みます。全会一致とは別の語である点だけは、取り違えないよう押さえておく価値があります。
コンセンサスの出典
consensus の定義・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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