「オルタナティヴ」。音楽の棚で見かけ、ビジネスの資料で見かけ、環境の話でも見かける。そのたびに意味が違うように感じて、結局よく分からないまま通り過ぎている人は多いはずです。
実はこの言葉、中心にある意味はひとつしかありません。分野ごとに違って見えるのは、その中心を別々の方向に伸ばしているからです。この記事では、その中心をつかんだうえで、表記のゆれ、発音、分野ごとの使われ方までを整理します。
オルタナティヴとは、ひとことで言うと
オルタナティヴとは、既にある主流のものに代わる、別の選択肢のことです。ただの「別のもの」ではありません。今のやり方に不満や限界があって、その代わりになりうるもの、という含みが必ず入ります。
だから、単なる二番目の候補には使いません。主流に対する対案、というのがこの語の芯です。ここさえ押さえておけば、音楽で使われても、エネルギーの話で使われても、意味は同じだと分かります。
表記のゆれ:オルタナティブ/オルタナティヴ/オルタナ
日本語では三つの表記が混在しています。オルタナティブ、オルタナティヴ、そして略した形のオルタナ。どれも同じ語を指しています。
ヴを使うのは、元の英語の v の音を書き分ける流儀です。公的な文書や新聞では、外来語のヴをブに統一する方針をとることが多く、オルタナティブと書かれます。音楽や文化の分野では、原語に近いオルタナティヴが好まれる傾向があります。
オルタナと略すのは、日本語独自の短縮です。オルタナロック、オルタナ系、といった形で使われます。英語で alterna とは言わないので、英語の会話には持ち込めません。
英語の alternative の意味
英語の alternative は、形容詞としても名詞としても使われます。形容詞なら「代わりの」「主流とは別の」、名詞なら「代替案」「選択肢」です。
名詞の使い方が実務ではよく出ます。We need an alternative.(代案が要る)。There is no alternative.(ほかに手がない)。後者は、選択の余地がないという強い言い方で、交渉の場でも見かけます。
形容詞では、alternative energy(代替エネルギー)、alternative medicine(代替医療)、alternative route(迂回路)のように、後ろの名詞と組んで使われます。どれも「主流ではないほう」という軸が通っています。
発音と読み方
alternative の発音は、アメリカ英語で /ɔːlˈtɜːrnətɪv/、イギリス英語で /ɔːlˈtɜːnətɪv/。カタカナで近づけるなら「オールターナティヴ」です。日本語表記のオルタナティヴより、頭が長く伸びます。
強く読むのは二つ目の ter です。オールではなく、ターを高く出します。日本語のカタカナ読みでは頭を強く言いがちなので、ここを直すだけで通じ方が変わります。後半の native の部分は弱く、軽く流します。
音楽の「オルタナティヴ・ロック」
この語が日本で広く知られたのは、音楽の分野です。オルタナティヴ・ロックは、1980年代から90年代にかけて、商業的な主流のロックとは別の道を選んだバンドたちを指す言葉として広がりました。
ここでの「代わり」は、大手レコード会社の路線に対する代わり、という意味です。だから音楽のスタイル自体はバラバラで、これがオルタナの音だ、と一つに定義できません。姿勢を指す言葉であって、音を指す言葉ではないのです。
皮肉なのは、その後オルタナティヴ・ロックが主流になってしまったことです。代わりのはずが本流になり、言葉だけがジャンル名として残りました。言葉の意味が現実に追い越された例として、よく引かれます。
ビジネスでの使われ方
仕事の場では、代替案という意味でそのまま使われます。「オルタナティヴを用意しておく」なら、本命が通らなかったときの別案を持っておく、ということです。
投資の分野では、オルタナティヴ投資という言い方があります。株式と債券という伝統的な対象に対して、それ以外を指す言葉です。不動産やインフラなどが含まれます。ここでも「主流ではないほう」という軸は変わっていません。
なお、この記事は投資の助言をするものではありません。語の意味を説明しているだけである点は、はっきりさせておきます。
環境・エネルギーでの使われ方
代替エネルギーは alternative energy の訳です。化石燃料という主流に対して、太陽光や風力などを指します。ここでも構図は同じで、既存のものに問題があるから代わりを探す、という文脈がついてきます。
似た言い方に再生可能エネルギーがありますが、こちらは renewable energy の訳で、意味が違います。再生可能は「使ってもなくならない」という性質を指し、代替は「主流の代わり」という位置づけを指します。重なる部分は大きいものの、見ている角度が違う言葉です。
似た言葉との違い
オプションとの違いから見ます。オプションは、選べる候補という中立な言葉です。三つのオプションがある、と言っても、そこに主流と非主流の対立はありません。オルタナティヴには対立があります。
代替と代用の違いも押さえておきます。代替は、同じ役割を別のもので果たすこと。代用は、間に合わせに使うこと、という含みが強くなります。オルタナティヴは代替のほうに近く、格下という響きはありません。
substitute という英語もよく似ています。こちらは「置き換えるもの」で、スポーツの交代選手にも使われます。alternative は選択肢としての別の道、substitute は同じ穴を埋める別のもの、と分けると迷いにくくなります。
語源をたどる
alternative の元をたどると、ラテン語で「二つのうちの他方」を意味する語に行き着きます。alter は「もう一方」。alter ego(もう一人の自分)や alternate(交互の)と同じ根です。
この出自から、もともとの alternative は「二つのうちのもう一方」という、かなり厳しい意味を持っていました。三つ以上あるときには使えない、と主張する立場が古くはあったほどです。現在の辞書では、選択肢が三つ以上でも使ってよいとされています。日常でも仕事でも、数を気にせず使って問題ありません。
alternate という似た語も、同じ根から出ています。こちらは「交互の」「一つおきの」という意味が中心で、alternate weeks なら隔週。ただしアメリカ英語では alternate を alternative の意味で使うこともあり、境目はゆるやかです。
例文で確かめる
日本語での使い方です。「この案がだめなら、オルタナティヴを考える」「オルタナ系のバンドが好きだ」「オルタナティブな働き方を選んだ」。いずれも主流に対する別の道を指しています。
英語では次のようになります。Is there an alternative to this plan?(この計画に代わる案はありますか)。We had no alternative but to cancel.(中止するほかなかった)。She chose an alternative career path.(彼女は別の道のキャリアを選んだ)。
前置詞に注意が要ります。「◯◯に代わる」は alternative to です。alternative of とは言いません。an alternative to coffee のように、to で受けます。
よくある間違い
一つ目は、ただの「別のもの」に使ってしまうことです。「オルタナティヴな飲み物」は、主流に対する対案という文脈がなければ意味が通りません。単に別の飲み物なら another drink です。
二つ目は、前置詞です。さきほどの alternative to を of にしてしまう間違いは、非常によく見かけます。
三つ目は、発音です。頭のオルを強く読むと、通じにくくなります。二つ目の音を高く、と覚えておきます。
まとめ
オルタナティヴとは、主流に代わる別の選択肢のこと。単なる別ものではなく、今のやり方への対案という含みを持ちます。音楽でも投資でもエネルギーでも、この芯は変わりません。
表記はオルタナティブでもオルタナティヴでも同じ語。略したオルタナは日本語だけの形です。英語にするときは alternative to の形で、二つ目の音を強く。これだけ押さえれば十分です。
出典
英語 alternative の意味・発音・用法は以下の英英辞典で確認しました。

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