リカバリーとは、悪くなったものが元の状態へ戻っていく過程、そして失ったものを取り戻す行為のことです。英語の recovery をそのままカタカナにした語で、病気からの回復、景気の持ち直し、データの復旧、運動後の体の戻し、どれもこの一語でまかなわれています。
この記事では、リカバリーの意味を英英辞典の語義の並びからたどり、14世紀半ばまでさかのぼる語源、ビジネス・法律・ITでの使われ方、辞書が示す発音と数え方、そして動詞 recover との使い分けまでを整理します。日本語のカタカナ語としては便利に広く使われている語なので、英語の recovery がどこまでを背負っているのかを一度そろえておくと、英語で書くときに迷いません。
リカバリーとは何か(結論)
リカバリーとは、いったん下がった状態が戻っていく過程のことです。落ちる前の地点があって、そこへ向かって上がっていく動きを指すので、「何がどこから戻るのか」が決まらないと意味が定まりません。
Cambridge Dictionary は recovery の第一の語義を、病気やけがのあとで再び健康になっていく過程、と定義しています。添えられた例文は、ミラは手術から完全に回復した、という文です。第二の語義は、問題のあとで再びうまくいくようになる、あるいは正常に戻っていく過程で、ようやく経済に回復の兆しが見え始めた、という例文が並びます。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じ順番です。第一が病気やけがからの回復、第二が良くなっていく・再び強くなっていく過程、第三が失われたり盗まれたりしたものを取り戻す行為、第四が手術直後の患者が入る部屋、と四つを立てています。
つまり英語の recovery は、①健康が戻る、②状況が戻る、③物が戻ってくる、の三方向に伸びる語です。日本語のリカバリーは「失敗のあとの立て直し」という②寄りの感覚で使われることが多いので、①と③の顔があることを知っておくと、英文を読むときの守備範囲が広がります。
リカバリーの語源は古フランス語 recovrer「取り戻す」
recovery が英語に現れたのは14世紀半ばです。Online Etymology Dictionary によれば、当時の意味は「病気・けが・不運などのあとの健康への復帰」でした。
たどると、1300年ごろのアングロ・フランス語 recoverie、さらに古フランス語 recovree「治療、治癒、回復」に行き着きます。この recovree は動詞 recovrer の過去分詞幹から作られた名詞です。
Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄も、後期中英語で「回復の手段」を指した語だとしたうえで、アングロ・ノルマン・フランス語 recoverie から、さらに recovrer「取り戻す」から来たと記しています。二つの辞典が同じ道すじを示しているわけです。
意味が広がった年代も同辞典が細かく押さえています。法律で「訴訟によって財産の占有を得ること」が15世紀初め、法律を離れた一般の「取り戻す力・取り戻す行為」が1530年代、「へまや事故のあとに体勢を立て直すこと」が1520年代、「悪い状態から良い状態への回復」が1580年代です。
動詞の recover はもう少し古く、1300年ごろに「意識を取り戻す」「病気やけがのあとで健康や体力を取り戻す」の意味で現れています。中世ラテン語の recuperare にさかのぼる語で、スペイン語 recobrar、イタリア語 ricoverare も同じ源です。接頭辞 re- は「元の場所へ戻って」「再び」を表します。
辞書が立てるリカバリーの4つの意味
Oxford Learner’s Dictionaries は recovery に四つの語義を立てています。日本語のリカバリーが持っていない顔もあるので、順番に並べて確認しておきます。
| 語義 | 辞書の定義 | 辞書の例文 |
|---|---|---|
| ①健康 | 病気やけがのあとで再び健康になっていく過程 | 父は手術から完全に回復した |
| ②状況 | 良くなっていく、あるいは再び強くなっていく過程 | 政府は景気の回復を予測している |
| ③奪還 | 失われた・盗まれたものを取り戻す行為や過程 | 消えたダイヤの発見につながる情報に懸賞金が出る |
| ④回復室 | 手術直後の患者が入れられる病院の部屋 | お母さまはいま回復室にいます |
④は日本語のリカバリーには無い使い方です。Oxford Learner’s Dictionaries は recovery room という言い方も併記していて、こちらは可算名詞として扱われます。in recovery と言われたら「回復期にある」だけでなく「回復室にいる」の意味もある、ということです。
Cambridge Dictionary は少し違う切り分けで、健康・状況・奪還の三つに加えて、激しい運動のあとに体を通常へ戻していく過程、という第四の語義を立てています。40秒動いて40秒の有酸素リカバリーを入れる、という例文が付いています。
ビジネス・法律・ITで使うリカバリー
Cambridge Business English Dictionary は recovery を、困難な時期のあとに状況が良くなる過程、あるいは値下がりしたあとに価格が上がっていく過程、と定義しています。経済と金融のラベルが付いた語義です。
| 型 | 意味 | 出どころ |
|---|---|---|
| economic/global/stock market recovery | 景気/世界的/株式市場の回復 | Cambridge ビジネス英語 |
| a solid/strong/slow recovery | 堅調な/力強い/緩やかな回復 | Cambridge ビジネス英語 |
| make/stage a recovery | 回復する・回復に転じる | Cambridge ビジネス英語 |
| recovery plans/programs/efforts | 再建計画・再建策 | Cambridge ビジネス英語 |
法律のラベルが付いた語義もあります。損害を与えた人や会社から、裁判所の命令によってお金を取り立てる過程、という定義で、原告の多くは金銭的損害の回収を求めている、という例文が添えられています。日本語の「債権回収」にあたる使い方です。
同辞典は関連語として bad debt recovery(貸倒債権の回収)と disaster recovery を挙げています。ITの現場でそのままカタカナで使われるディザスタリカバリは、英英のビジネス辞典にも見出しとして立っている語だということです。
もう一つ、天然資源のラベルが付いた語義もあります。石油やガスなどの資源を地中や海底から取り出す過程で、温室効果ガスを北海へ送る計画が石油の回収量を増やすのに使える、という例文が並びます。
スポーツのリカバリーは「運動のあとに体を戻す時間」
Cambridge Dictionary は recovery の語義のひとつに、激しい運動をしたあと体が通常へ戻るのを許す過程、をはっきり立てています。日本のトレーニング現場で使うリカバリーと、そのまま重なる語義です。
例文も具体的です。40秒でできるだけ多くの回数をこなし、そのあと40秒の有酸素リカバリーを入れる。激しい運動のセットとセットのあいだに、十分なリカバリータイムを取るようにする。どちらも間隔の設計の話をしています。
Oxford Learner’s Dictionaries のコロケーション欄も、recovery のうしろに付く名詞として time、rate、speed の三つを挙げています。リカバリータイム、回復率、回復の速さ、という日本語の言い方がそのまま英語の型に載っているわけです。
同辞典の例文には、試合と試合のあいだに十分なリカバリータイムが無かったためにけがが再発した、という文も入っています。recovery time は競技の世界でごく普通に使われる複合語だと分かります。
リカバリーの発音は /rɪˈkʌvəri/ で第2音節が強い
recovery は第2音節の cov を強く読みます。カタカナの「リカバリー」は頭の「リ」を強く言いがちですが、英語では最初の音がいちばん弱くなります。
| 辞書 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary | /rɪˈkʌv.ər.i/ | /rɪˈkʌv.ɚ.i/ |
| Cambridge Academic Content Dictionary | ― | /rɪˈkʌv·ə·ri/ |
| Oxford Learner’s Dictionaries | /rɪˈkʌvəri/ | /rɪˈkʌvəri/ |
気をつけたいのは母音の質です。強く読む部分は /ʌ/ で、日本語の「ア」より口を狭くした短い音になります。頭の re は /rɪ/ で、「リー」と伸ばしません。
アメリカ英語では第3音節が /ɚ/ と r 色の付いた曖昧母音になります。Cambridge Dictionary が /rɪˈkʌv.ɚ.i/ と書いているのがそれで、カタカナの「バ」より「ヴァ」に近い、舌が反った音です。
リカバリーの英語 recovery の数え方とレベル
Cambridge Dictionary は recovery に [S or U] の印を付けています。単数扱いか不可算扱いのどちらか、という意味です。Oxford Learner’s Dictionaries は [uncountable, countable, usually singular] としており、複数形 recoveries も見出しに立てています。
つまり「数えなくはないが、ふつうは単数で使う」語です。a full recovery、a speedy recovery のように冠詞を付けた単数形が最も多い形で、Oxford Learner’s Dictionaries の例文も、多くの人が脳卒中のあとに目覚ましい回復をとげる、という形で recoveries を使うときは主語が複数になっています。
| 辞書 | 可算・不可算の印 | レベル |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary | [S or U] | B2(状況が戻る語義) |
| Cambridge Academic Content Dictionary(米) | [C/U] | ― |
| Oxford Learner’s Dictionaries | [uncountable, countable, usually singular] | b2(健康)/c1(経済)/c2(回復室) |
Oxford Learner’s Dictionaries は recovery に OPAL W の印も付けています。学術的な書き言葉の頻出語リストに入っている語だという意味で、レポートでも論文でも顔を出す語だということです。語義ごとにレベルが分かれているのも特徴で、健康の意味は b2、経済の意味は c1、回復室の意味は c2 とされています。
リカバリーと動詞 recover の使い分け
日本語では「リカバリーする」とサ変動詞にしてしまいますが、英語では名詞の recovery と動詞の recover をはっきり分けます。動詞を名詞化して do a recovery と言う必要はありません。
Online Etymology Dictionary によれば、動詞 recover は1300年ごろから「意識を取り戻す」「病気やけがのあとで健康や体力を取り戻す」の意味で使われています。何かを取り戻す、という他動詞の使い方は14世紀半ばからです。
名詞のほうは、辞書のコロケーション欄が示すとおり make、achieve、show という動詞と組みます。Oxford Learner’s Dictionaries の verb + recovery 欄に並ぶのがこの三つで、make a full recovery が最も基本の形です。
決まり文句も押さえておくと便利です。同辞典は be on the road to recovery、be on the way to recovery、hope of recovery を phrases 欄に挙げています。前置詞は beyond recovery(もはや手の施しようがない)、in recovery(回復期にある)、recovery from(~からの回復)の三つです。
リカバリーを使った英語の例文とよくある間違い
まずは基本の型です。My father has made a full recovery from the operation.(父は手術から完全に回復しました)。Oxford Learner’s Dictionaries に載っている形で、make a ~ recovery from ~ が骨格になります。
見舞いの定番も辞書に入っています。We’re sorry to hear you’re ill, and wish you a speedy recovery.(ご病気と伺いました。一日も早いご回復をお祈りします)。Cambridge Dictionary の例文で、wish someone a speedy recovery はそのまま覚えて使える形です。
経済の話なら、The economy is showing signs of recovery.(経済は回復の兆しを見せています)。show signs of recovery は Cambridge・Oxford の両方に載っている型です。
間違いの一つ目は、複数形を気軽に使うことです。辞書は usually singular としているので、量や度合いを言いたいときは full、speedy、slow などの形容詞で支えます。
二つ目は「リカバリーする」をそのまま do a recovery と訳すことです。動詞を使うなら recover、名詞を使うなら make a recovery が辞書どおりの形になります。
三つ目は発音で、強く読むのは第2音節の cov です。頭の ri は軽く短く置きます。
リカバリーについてよくある質問
品詞が違います。recovery は名詞、recover は動詞です。Online Etymology Dictionary によれば動詞 recover が1300年ごろ、名詞 recovery は14世紀半ばに現れました。英語では make a recovery(名詞)と recover(動詞)を使い分け、do a recovery とは言いません。
できますが、ふつうは単数です。Cambridge Dictionary は [S or U]、Oxford Learner’s Dictionaries は [uncountable, countable, usually singular] と示しています。Oxford は複数形 recoveries も見出しに立てており、主語が複数の人になるときなどに使われます。
載っています。Cambridge Business English Dictionary は recovery の項の関連語として bad debt recovery とともに disaster recovery を挙げています。日本のIT現場で使うディザスタリカバリは、英英のビジネス辞典にも立っている語です。
14世紀半ばです。Online Etymology Dictionary は1300年ごろのアングロ・フランス語 recoverie、古フランス語 recovree「治療、治癒、回復」を経由し、動詞 recovrer の過去分詞幹から来たとしています。Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄も recovrer「取り戻す」を挙げています。
リカバリーのまとめ
リカバリーとは、下がった状態が元へ戻っていく過程と、失ったものを取り戻す行為のことです。語源は古フランス語 recovrer「取り戻す」で、14世紀半ばに「病気やけがのあとの健康への復帰」として英語に入りました。
英語の recovery は健康・経済・奪還・回復室の四方向へ広がり、ビジネス辞典では債権の回収や石油の回収にも使われます。数え方は usually singular で、make a full recovery、show signs of recovery が基本の型です。発音は第2音節を強く読む /rɪˈkʌvəri/ で、頭の ri は軽く置きます。
リカバリーの出典
recovery の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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