コンテキストとは、何かが存在したり起きたりしている「まわりの状況」であり、同時に、ある語句の前後にある「文章の流れ」のことです。英語の context をそのままカタカナにした語で、日本語では「文脈」「背景」「前後関係」と訳し分けられます。
この記事では、コンテキストの意味を英英辞典の語義からたどり、ラテン語の「一緒に織る」までさかのぼる語源、状況を指す situation や事情を指す circumstance との線引き、辞書が示す発音と数え方、out of context という定番の言い回し、そして日本のIT業界で使われる意味が英英辞典のどこに立っているかまでを整理します。会議でも論文でも顔を出す語なので、英語の context がどこまで背負っているのかを一度そろえておくと、読むときにも書くときにも迷わなくなります。
コンテキストとは何か(結論)
コンテキストとは、それ単体では意味が決まらないものを、まわりから支えて意味を決めるもののことです。支えられる側が先にあって、そのまわりを指す語なので、何についてのコンテキストかが決まらないと意味が定まりません。
Cambridge Dictionary は context の第一の語義を、何かがその中で存在したり起きたりしていて、それを説明する助けになる状況、と定義しています。レベルは B2 です。彼の戯曲に出てくる争いと流血は、すべて歴史的な流れの中で見ることが大切だ、という例文が添えられています。
第二の語義は言語の話で、レベルは C1 です。ある語句や文章の直前と直後に来る文章や発話で、その意味を説明する助けになるもの、と定義されています。この練習問題では単語がひとつ空欄になっていて、前後から何かを当てる、という例文です。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じ順で二つを立てています。第一が「何かが起きている状況で、それを理解する助けになるもの」、第二が「ある語・語句・発言の直前と直後に来る語で、その意味を理解する助けになるもの」です。品詞欄は [countable, uncountable] で、数える使い方と数えない使い方の両方があります。
つまり英語の context は、①出来事を取り巻く状況、②語句を取り巻く文章、の二つを行き来する語です。日本語では①を「背景」、②を「文脈」と訳し分けますが、英語では1語で両方を担っています。
コンテキストの語源はラテン語 contexere(一緒に織る)
context が英語に現れたのは15世紀の初めです。Online Etymology Dictionary によれば、当時の意味は「ひとまとまりの文章、年代記、ある書き物の全文」でした。いまのように「まわり」を指す語ではなく、書かれたもの全体を指す語だった、ということです。
借りてきた先はラテン語の contextus で、もとの意味は「つなぎ合わせること」です。これは動詞 contexere(一緒に織る)の過去分詞でした。
分解するとさらに単純になります。com(〜と一緒に、共に)が形を変えた接頭辞と、texere(織る、作る)を足した語です。texere は印欧祖語の語根 *teks-(織る、こしらえる)にさかのぼり、同じ語根から text(本文)も出ています。
いまいちばんよく使う語義が加わったのは1560年代です。同辞典はそれを、ある書き物や談話のうち、引用や言及の対象になっている部分の前後に来ていて、その部分と直接つながっている箇所、と説明しています。全体を指していた語が、前後を指す語へ絞られたわけです。
Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄も同じ線です。後期中英語で、もとは文章の組み立てを指した語であり、ラテン語 contextus から、con-(一緒に)+ texere(織る)に分かれる、と記しています。
コンテキストと situation(状況)の違い
日本語ではどちらも「状況」と訳せてしまう2語です。英語の辞書で並べると、situation が「いま起きていること」そのもの、context が「それを理解する助けになるまわり」だと分かります。
Cambridge Dictionary は situation を、ある時とある場所で起きている物事と、そこにある条件のまとまり、と定義しています。レベルは B1 で、context の B2 より一段やさしい語です。経済状況、政治状況、という例が添えられています。
| 語 | 辞書の定義 | レベル(Cambridge) |
|---|---|---|
| context | 何かがその中で存在したり起きたりしていて、それを説明する助けになる状況 | B2 |
| situation | ある時とある場所で起きている物事と、そこにある条件のまとまり | B1 |
Oxford Learner’s Dictionaries の situation も、ある時とある場所で起きているすべてのこと、という書き方です。同辞典は類語欄を立てていて、situation・circumstances・position・conditions・things・the case・state of affairs を「物事のありようにつながり、それに影響する条件と事実を表す語」としてまとめています。
語源も別々です。Online Etymology Dictionary によれば situation は15世紀初めの situacioun で、最初の意味は「場所、位置、所在」でした。ラテン語の situs(場所、位置)から出た語で、「置かれている場所」が芯にあります。「事情から見た立ち位置、状況」の意味は1710年から、「勤め口、職」の意味は1803年からです。
織り合わせる context と、置かれている situation。使い分けの目安は、その場の中身そのものを言うなら situation、それを読み解くための外枠を言うなら context、ということになります。
コンテキストと circumstance(事情)の違い
circumstance も日本語では「状況」「事情」と訳される語です。ただし辞書を見ると、こちらは基本が複数形で、しかも「自分ではどうにもならないもの」という色が濃く出ています。
Cambridge Dictionary は circumstance の第一の語義に [C usually plural]、つまり可算でふつうは複数、という印を付け、レベルを B2 としています。定義は、ある状況をいまのかたちにしている事実や出来事です。
| 語 | 語源 | 芯にある絵 |
|---|---|---|
| context | ラテン語 contexere(一緒に織る)=com+texere | 一緒に織り込まれているもの |
| circumstance | ラテン語 circumstare(まわりに立つ)=circum+stare | まわりに立ちはだかっているもの |
定番の型も辞書に並んでいます。under the circumstances(この事情のもとでは)、in any circumstances(どんな事情であっても)、under no circumstances(どんなことがあっても〜ない)、circumstances beyond someone’s control(本人にはどうにもできない事情)です。
語源が性格をよく表しています。Online Etymology Dictionary によれば circumstance は1200年ごろの語で、ラテン語 circumstantia(取り巻いている条件)から来ています。これは circumstare(まわりに立つ、取り囲む)の現在分詞で、circum(まわりに)+ stare(立つ)に分かれます。
まとめると、織り込まれているのが context、まわりに立ちはだかっているのが circumstance です。前者は意味を読み解くための材料、後者は動きを縛る条件、という違いになります。
コンテキストの発音は /ˈkɒntekst/ で第1音節にアクセント
context は第1音節の con を強く読みます。カタカナの「コンテキスト」はアクセントの位置という点では素直な写し取りです。
| 辞書 | イギリス発音 | アメリカ発音 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary | /ˈkɒn.tekst/ | /ˈkɑːn.tekst/ |
| Cambridge Academic Content Dictionary(米語) | ― | /ˈkɑn·tekst/ |
| Oxford Learner’s Dictionaries | /ˈkɒntekst/ | /ˈkɑːntekst/ |
気をつけたいのは第1音節の母音です。イギリス英語は /ɒ/、アメリカ英語は /ɑː/ で、後者のほうが口が大きく開いた長めの音になります。どちらもカタカナの「コ」より奥で鳴る音です。
第2音節は /tekst/ で、text とまったく同じ綴りと音です。語源で見たとおり中身も text と同じなので、con+text と切って覚えると、音も意味も一度に入ります。
派生語ではアクセントが動きます。Cambridge Dictionary の米語欄は、形容詞 contextual を /kənˈteks·tʃu·əl/、動詞 contextualize を /kənˈteks·tʃu·əˌlɑɪz/ としています。強く読む位置が第1音節から第2音節へ移り、先頭の母音はあいまい母音の /ə/ に弱まります。
コンテキストの英語 context は可算にも不可算にもなる
Oxford Learner’s Dictionaries は context に [countable, uncountable] の印を付けています。数える使い方と数えない使い方の両方がある、ということです。
数える側の例は、同辞典に in a context として載っています。この種の宣伝は多くの異なる場面で使われる、という例文で、contexts と複数形になっています。こうしたデータベースは幅広い場面で使われている、という例文も同じ形です。
数えない側の例は in context の形です。彼の決断は前後の事情を踏まえて初めて理解できる、という例文では冠詞が付きません。put this into context(これを文脈の中に置いて考える)という言い方も、同じく無冠詞です。
語のレベルも確認できます。Oxford Learner’s Dictionaries は context に OPAL W と OPAL S の両方を付けています。学術的な書き言葉と話し言葉の両方の頻出語リストに入っている、ということです。論文でも講義でも会議でも出てくる語だと分かります。
コンテキストから切り離す「out of context」の使い方
context でいちばん出番が多い定型句が out of context です。Cambridge Dictionary はこれを見出しとして立てています。
同辞典の説明は丁寧です。語句が out of context で使われると、もともと言われたり書かれたりしたことのうち、切り離された小さな一部だけが伝えられ、その結果、意味がはっきりしなくなったり誤解されたりする、としています。
例文もそのまま使えます。その記者は私の発言を完全に前後から切り離して伝えた、という文です。日本語の「発言を切り取られた」に、ほぼそのまま重なります。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じ形を載せていて、この引用は前後から切り離されている、という例文に、本文の残りに触れずに繰り返された、という補足を括弧で添えています。彼女の返答は前後から切り離して引用され、本人が意図したのとはまるで違う意味に見えた、という例文も並びます。
反対側の形も覚えておくと便利です。in context(前後を踏まえて)です。語は前後の流れの中で見る必要がある、という例文が同辞典に載っています。out of context と in context を対で持っておくと、引用をめぐる話がそのまま英語で言えるようになります。
ITで言うコンテキストは英英辞典に語義が立っていない
日本のIT分野では、処理の前提になる情報のかたまりや、対話の履歴という意味でコンテキストと言います。ところが、今回確認した英英辞典には、その計算機の語義が立っていません。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じです。状況の語義と、前後の語の語義の二つで、コンピュータの項は立っていません。同じ辞書は logic や output には computing の語義を別に立てているので、立てていないことのほうに意味があります。
とはいえ、英語として通じないという話ではありません。辞書の第一語義は「何かがその中で存在したり起きたりしていて、それを説明する助けになる状況」なので、処理の前提という使い方は、この語義の素直な応用です。専門分野の中で意味が絞られただけだ、と考えるとつじつまが合います。
英語で誤解なく伝えたいときは、the context of the conversation(会話の前後関係)のように、何のコンテキストかを of で足すと安全です。辞書のコロケーション欄にも context for something という形が挙がっています。
コンテキストを使った英語のコロケーションと例文
まずは前置詞の型です。in the context of ~(〜という流れの中で)。この小さな戦いはスコットランド史の流れの中では非常に重要だ、という例文が Cambridge Dictionary に載っています。
動詞との組み合わせは give、offer、provide です。同辞典は give somebody context、provide somebody with context という形を挙げています。「背景を説明する」と言いたいときに使える型です。
間違いの一つ目は、「〜の状況で」を in the context of で言い切ってしまうことです。いま起きている物事そのものを言うなら situation、まわりにある条件を言うなら circumstances のほうが辞書の定義に合います。
二つ目は、複数形を避けてしまうことです。Oxford Learner’s Dictionaries は [countable, uncountable] の印を付け、in many different contexts、a range of contexts という形を載せています。場面がいくつもあるなら複数形で構いません。
コンテキストについてよくある質問
situation は起きていることそのもの、context はそれを理解する助けになるまわり、です。Cambridge Dictionary は situation を「ある時とある場所で起きている物事と、そこにある条件のまとまり」(B1)、context を「何かがその中で存在したり起きたりしていて、それを説明する助けになる状況」(B2)と定義しています。語源も、situation はラテン語 situs(場所)、context は contexere(一緒に織る)で別々です。
out of context を使います。Cambridge Dictionary は「その記者は私の発言を完全に前後から切り離して伝えた」という例文を載せています。Oxford Learner’s Dictionaries にも「この引用は前後から切り離されている」という例文があり、括弧で「本文の残りに触れずに繰り返された」と補足されています。
できます。Oxford Learner’s Dictionaries は [countable, uncountable] の印を付けており、in many different contexts、a range of contexts、a variety of contexts という形を載せています。一方 in context、put this into context のように無冠詞で使う形もあり、どちらも辞書の範囲内です。
英語での初出は15世紀初めです。Online Etymology Dictionary は最初の意味を「ひとまとまりの文章、年代記、ある書き物の全文」とし、ラテン語 contextus(つなぎ合わせること)から、動詞 contexere(一緒に織る)= com(共に)+ texere(織る)に分かれるとしています。いまの「前後の箇所」という意味が加わったのは1560年代です。
コンテキストのまとめ
コンテキストとは、出来事を取り巻く状況であり、語句を取り巻く文章のことです。語源はラテン語の contexere(一緒に織る)で、com(共に)+ texere(織る)に分かれます。英語での初出は15世紀初めで、当時は書き物の全文を指していました。いまの「前後の箇所」という意味は1560年代からです。
英語の context は数える使い方と数えない使い方の両方があり、場面がいくつもあるときは contexts と複数形にできます。定番の型は in the context of ~、out of context、in context の三つで、どれも辞書に見出しや例文として載っています。
近い語との差は語源に出ています。まわりに立ちはだかるのが circumstance、置かれている場所が situation、そして一緒に織り込まれているのが context です。この絵を持っておくと、日本語で全部「状況」と訳したくなる3語を、英語のまま言い分けられるようになります。
コンテキストの出典
context の定義・語法・発音・語源は、以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。
- Cambridge Dictionary|context
- Oxford Learner’s Dictionaries|context(名詞)
- Online Etymology Dictionary|context
- Cambridge Dictionary|situation
- Oxford Learner’s Dictionaries|situation
- Online Etymology Dictionary|situation
- Cambridge Dictionary|circumstance
- Oxford Learner’s Dictionaries|circumstance
- Online Etymology Dictionary|circumstance

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