ヒエラルキーとは、人や物が重要度にしたがって上から下へ並べられた仕組みのことであり、同時に「その組織を動かしている上層部の人たちそのもの」も指す言葉です。英語の hierarchy をそのままカタカナにした語で、語源をたどるとギリシャ語 hierarkhēs「高位聖職者、聖なる儀式を導く者」に行き着きます。
この記事では、ヒエラルキーの意味を英英辞典の語義から三方向に切り分け、天使の序列を指していた14世紀の用法にさかのぼる語源、考えや証拠を並べるときの使い方、辞書が示す発音と数え方、そして語源がつながっていない higher との関係までを整理します。日本語で「ヒエラルキーが厳しい組織」と言うときに使われているのは、辞書が立てた三つの語義のうち一つ目だけです。
ヒエラルキーとは何か(結論)
ヒエラルキーとは、①人や物を重要度の順に上から下へ並べた仕組み、②その組織を支配している上層部の人たち、③考えや信念を重要度で並べた体系、この三つを指す言葉です。辞書はこの三つを一つにまとめず、それぞれ独立した語義として立てています。
Cambridge Dictionary は hierarchy を数えられる名詞として扱い、C2 レベルを付けています。最初の語義は「人や物が、その重要度にしたがって並べられている仕組み」で、例文は social hierarchy(社会的なヒエラルキー)、political hierarchy(政治的なヒエラルキー)です。
同辞典はこの語義に、人間以外を主語にした例文も添えています。「サルの中には、非常に複雑な社会的ヒエラルキーを持つものがいる」という文です。ヒエラルキーは人の組織だけの話ではなく、群れの順位にも使われます。
Cambridge Dictionary の二つ目の語義は「組織の上層の階層にいて、その組織を支配している人たち」です。仕組みそのものではなく、その仕組みの上のほうに座っている人間の集団を指す用法で、これが日本語のカタカナ語ではあまり使われない読み方です。
Oxford Learner’s Dictionaries の切り分けはもう少し細かく、三つに分かれています。一つ目は「とくに社会や組織において、人が重要度の高いものから低いものへと異なる階層に組織されている仕組み」で、可算・不可算の両方で使われると示されています。
二つ目は「大きな組織や機関を支配している人々の集団」で、可算かつ単数・複数どちらの動詞も取れる扱いです。三つ目は formal(硬い語)のラベル付きで、「考えや信念を、その重要度にしたがって並べることのできる体系」と定義され、a hierarchy of needs(欲求のヒエラルキー)が例に挙がっています。
日本語で「ヒエラルキー」と言うとき、ほとんどの場面で指しているのは一つ目の「並び順の仕組み」です。ところが英英辞典は、そこに「上層部の人間そのもの」と「考えの序列」という二つの読み方を並べて立てています。カタカナ語が受け取ったのは、英語の語義の一部だということになります。
ヒエラルキーの語源はギリシャ語 hierarkhēs「高位聖職者」
Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄によれば、hierarchy は中期英語後期の語で、古フランス語と中世ラテン語を経てギリシャ語 hierarkhia から入りました。おおもとは hierarkhēs「聖なる支配者」で、これは hieros「聖なる」+ arkhēs「支配者」に分かれます。
同辞典はさらに、意味の移り変わりまで記しています。「最も古い語義は『天使たちと天上の存在の位階の体系』であり、それ以外の語義は17世紀に生じた」。つまりヒエラルキーという語が最初に並べていたのは、会社の役職ではなく天使でした。
Online Etymology Dictionary の記述はさらに具体的です。14世紀後半の英語では jerarchie、ierarchie という形で書かれ、意味は「聖なる秩序における位。天使の九つの位階を三つに分けた、そのうちの一つ」で、ゆるやかに「支配、統治」の意味でも使われました。
同辞典によれば、この語は古フランス語 ierarchie(14世紀。現代フランス語では hiérarchie)から入り、そのフランス語は中世ラテン語 hierarchia「天使たちの位階の区分」にさかのぼります。この中世ラテン語は、ディオニュシオス・アレオパギテースの体系で用いられた語だと注記されています。
| 段階 | 形 | 意味 |
|---|---|---|
| ギリシャ語の要素 | hieros | 聖なる |
| ギリシャ語の要素 | arkhēs / arkhein | 支配者/導く、支配する |
| ギリシャ語 | hierarkhēs | 聖なる支配者、高位聖職者、聖なる儀式を導く者 |
| ギリシャ語 | hierarkhia | 高位聖職者の支配 |
| 中世ラテン語 | hierarchia | 天使たちの位階の区分 |
| 古フランス語(14世紀) | ierarchie | ― |
| 英語(14世紀後半) | jerarchie、ierarchie | 聖なる秩序における位。天使の九位階の三区分の一つ |
| 英語(1610年代) | hierarchy | 人や物の序列だった組織 |
Online Etymology Dictionary は、今の私たちが使っている語義がいつ出てきたかも書いています。「人や物の序列だった組織」という意味が英語で記録されるのは1610年代で、当初は聖職者について使われました。会社や社会の階層を指す使い方は、教会の序列を言う語から横へ広がったものです。
ここまで並べると、Oxford Learner’s Dictionaries の「他の語義は17世紀に生じた」という一文と、Online Etymology Dictionary の「1610年代」という数字が同じことを指していると分かります。二つの辞書は、天使から人間の組織へ語義が移った時期について一致しています。
語源を知ると、ヒエラルキーという語が持つ独特の重さの理由も見えてきます。芯にあるのは hieros「聖なる」です。単なる順番ではなく、上のほうに神聖さが宿っているという発想がこの語の出発点にあり、だからこそ「厳しい」「揺るがない」という語感がついてきます。
ヒエラルキーのもう一つの意味は「組織の上層部そのもの」
辞書が立てている二つ目の語義は、仕組みではなく人を指します。Cambridge Dictionary は「組織の上層の階層にいて、その組織を支配している人たち」と定義しています。
Cambridge Business English Dictionary も同じ語義を立てていて、定義は「会社や組織の上層の階層にいて、それを支配している人たち」です。例文は「勧告が提出され、ヒエラルキーによって承認されたのち、それを実行に移す工程を管理するためのチームが設けられた」です。
この例文は、この語義の使い方をよく見せています。「the hierarchy によって承認された」という形で、決裁をする人々の集まりが一語で言われています。日本語なら「経営陣」「上層部」に当たる位置です。
Oxford Learner’s Dictionaries の定義は「大きな組織や機関を支配している人々の集団」です。例文は「彼女が調査を打ち切ったのは、党のヒエラルキーからの指示によるものだった」「ヒエラルキーはこの問題について沈黙を守ったままだ」です。
二つ目の例文には文法上の見どころがあります。同辞典は「The hierarchy has/have remained silent on this issue.」と、has と have を並べて示しています。この語義は「可算名詞+単数または複数の動詞」という扱いで、集団を一つの塊と見るか個々の人間の集まりと見るかで動詞が変わります。
この語義でよく使われる組み合わせも辞書に出ています。Cambridge Dictionary のコロケーション欄には church hierarchy(教会のヒエラルキー)が挙がり、「これらの定義をめぐる教会のヒエラルキーと国王の役人たちとの対立が、事態をさらに悪くするばかりだった」という例文が付いています。
日本語のカタカナ語では、この「人の集団」の用法はほとんど使われません。「ヒエラルキーが沈黙した」と書いても、日本語としては意味が通りません。英文を読むときは、hierarchy が仕組みを指しているのか人の集団を指しているのか、動詞を見て切り分けると読み違えが減ります。
考えや証拠を並べるヒエラルキーという使い方
Oxford Learner’s Dictionaries が立てている三つ目の語義は、人ではなく概念の序列です。定義は「考えや信念を、その重要度にしたがって並べることのできる体系」で、formal(硬い語)のラベルが付いています。
同辞典が挙げている例は a hierarchy of needs(欲求のヒエラルキー)です。Cambridge Business English Dictionary も項目の末尾に「Maslow’s hierarchy of needs も参照」と置いていて、二つの辞書がこの定型句を扱っています。
この抽象的な使い方は、Cambridge Dictionary が載せている英語コーパスの例文でも多く見られます。「疫学の手法は、よく使われる hierarchy of evidence and research design(証拠と研究デザインのヒエラルキー)のなかで順位づけできる」という文がその一つです。
同じコーパスからは、学問そのものを並べた例も出ています。「科学の伝統的なヒエラルキーによれば、心理学は化学・生物学・神経生理学という中間の科学によって、物理学や数学から遠く隔てられている」という文です。
言語学と情報科学の例も並んでいます。「二つの基準が言語のヒエラルキーのなかで互いに離れているほど、その体系はそうした不整合を許す度合いが大きい」「そのインターフェースは、ファントム型を介した部分型のヒエラルキーの符号化によってパラメータ化されている」。ヒエラルキーは、目に見えない概念の並び順を言うときにも幅広く使われる語です。
設計の話にも出てきます。同コーパスの「さらに、それぞれの設計モジュールは三つのヒエラルキーの階層で表現できる」という文では、levels of hierarchy という形で「階層の深さ」が言われています。
Oxford Learner’s Dictionaries の一つ目の語義の例文にも、概念を並べた形が混じっています。「大家族の多くには年齢のヒエラルキーがあり、年長の兄姉のほうが高い立場を持つ」という文です。年齢という物差しで人が並ぶとき、その並び自体を hierarchy of age と呼んでいます。
ヒエラルキーと higher は語源がつながっていない
hierarchy と higher(より高い)は、見た目も意味も似ていますが、語源の系統はまったく別です。Online Etymology Dictionary は hierarchy の項で、この二語を「無関係(unrelated)」とはっきり書いています。
同辞典の一文はこうです。「『人や物の序列だった組織』という語義は1610年代までに英語で記録され、当初は聖職者について使われ、そしておそらく、無関係な higher との見た目の似かたに影響された、あるいは補強された」。似ているのは偶然で、その偶然が語義の広がりを後押ししたという説明です。
higher のほうの素性も同辞典が示しています。higher は形容詞 high の比較級で、古英語では hierra(ウェストサクソン方言)、hera(アングリア方言)という形でした。ゲルマン系の、英語が生まれたときから持っている語です。
| 項目 | ヒエラルキー(hierarchy) | higher |
|---|---|---|
| 品詞 | 名詞 | 形容詞 high の比較級 |
| 系統 | ギリシャ語 → 中世ラテン語 → 古フランス語 → 英語 | 古英語 hierra(ウェストサクソン)、hera(アングリア) |
| 英語での初出 | 14世紀後半 | 古英語から |
| 最初の意味 | 聖なる秩序における位、天使の九位階の三区分の一つ | より高い |
| 語源上の関係 | 無い(Online Etymology Dictionary が unrelated と明記) | |
higher を含む定型の初出も同辞典に載っています。higher education(高等教育)が確認されるのは1839年まで、higher-up(上役、上の地位にいる人)という名詞は1905年のアメリカ英語からです。higher-up の定義は「より上の職にある者」で、意味だけ見るとヒエラルキーの二つ目の語義とよく似ています。
同辞典は higher education の項に、1850年のウィリアム・ヒューウェルの文章を引いています。「フランス人は l’instruction secondaire と l’instruction supérieure を区別する。前者は我々が liberal education と呼ぶものを含み、後者は職業教育を指す。しかし対応する英語の表現がこの区別をもって使われているとは思えない」という一節です。
この二語の関係は、語源の学習で気をつけたい型の見本になります。綴りが似ていて意味も近いのに、系統はまったく別。しかも辞書は「似ているせいで語義が広がったらしい」とまで書いています。似ているという事実と、同じ系統で血がつながっているという事実は、別の話です。
ヒエラルキーと hierarch(高位聖職者)の違い
hierarchy と本当に血がつながっているのは hierarch です。Online Etymology Dictionary は hierarchy の項から hierarch の項へ参照を張っていて、二語は同じギリシャ語 hierarkhēs を親に持ちます。
同辞典によれば、英語の hierarch は1570年代の語で、意味は「聖なる事柄において支配する者」です。中世ラテン語 hierarcha から入り、そのもとはギリシャ語 hierarkhēs「聖なる儀式を導く者、高位聖職者」です。
この hierarkhēs の分解も同辞典に出ています。ta hiera「聖なる儀式」(hieros「聖なる」の中性複数形)+ arkhein「導く、支配する」です。Oxford Learner’s Dictionaries が hierarchy の語源欄で示した hieros + arkhēs と、同じ二つの部品を指しています。
| 項目 | hierarchy | hierarch |
|---|---|---|
| 意味 | 序列の仕組み/上層部の人たち/考えの序列 | 聖なる事柄において支配する者 |
| 英語での初出 | 14世紀後半 | 1570年代 |
| 経由した語 | 中世ラテン語 hierarchia、古フランス語 ierarchie | 中世ラテン語 hierarcha |
| ギリシャ語の親 | hierarkhia(高位聖職者の支配) | hierarkhēs(高位聖職者) |
| 指すもの | 並び(体系) | 人(一人) |
Online Etymology Dictionary は hierarch について、古代ギリシャでの実際の役目まで書き添えています。「ギリシャ古代においては、特定の神殿に付属し、供物とその記録を管理する下級の神官」。高位聖職者と訳される語ですが、もとは組織の頂点ではなく、記録係に近い職でした。
同辞典は hierarchy の関連語として hierarchal と hierarchic も挙げています。どちらも形容詞で、hierarchy の派生形です。
Cambridge Dictionary が挙げている関連語は hierarchical と hierarchically です。前者が形容詞、後者が副詞で、「ヒエラルキー的な」「ヒエラルキー的に」に当たります。同辞典の関連語彙の一覧には anti-hierarchical(反ヒエラルキー的な)という語も並んでいます。
使い分けは、指しているものが人か並びかで決まります。一人の人間を指すなら hierarch、その人たちが作る並びを指すなら hierarchy です。ただし hierarchy の二つ目の語義は「上層部の人たち」という集団も指せるので、人を指す用法が hierarch の専売というわけではありません。
ヒエラルキーの英語 hierarchy の発音は /ˈhaɪə.rɑː.ki/
hierarchy の強勢は第1音節にあります。辞書はどれも先頭の /haɪ/ に強勢符号を置いていて、カタカナの「ヒエラルキー」から想像する「ラ」の位置ではありません。
| 辞書 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| Cambridge(一般) | /ˈhaɪə.rɑː.ki/ | /ˈhaɪ.rɑːr.ki/ |
| Cambridge(American Dictionary) | ― | /ˈhɑɪ·əˌrɑr·ki/、/ˈhɑɪˌrɑr-/ |
| Cambridge(Business English) | /ˈhaɪərɑːki/ | ― |
| Oxford Learner’s | /ˈhaɪərɑːki/ | /ˈhaɪərɑːrki/ |
Cambridge Dictionary のイギリス英語の区切りは haɪə・rɑː・ki の3音節で、強勢符号 /ˈ/ が付いているのは先頭だけです。カタカナの「ヒ・エ・ラ・ル・キ・ー」は六拍を平らに並べますが、英語では3音節で、そのうち一箇所だけが持ち上がります。
第1音節の /haɪ/ は二重母音で、「ハイ」に近い響きです。カタカナの先頭が「ヒ」なので、日本語の感覚のまま読むと英語の音から離れます。ヒエラルキーの英語は、耳で聞くと「ハイアラーキ」に近い形になります。
続く /rɑː/ が長い母音で、ここが語のなかでいちばん伸びる部分です。カタカナの「ラル」に当たりますが、英語には「ル」に相当する音が入っていません。語末の /ki/ は軽く落とします。
イギリス英語とアメリカ英語の差は、Cambridge Dictionary の表記でよく分かります。イギリス英語は /ˈhaɪə.rɑː.ki/ で第1音節にあいまい母音の /ə/ が含まれますが、アメリカ英語は /ˈhaɪ.rɑːr.ki/ で、その /ə/ が無く、代わりに第2音節に r が入ります。
Oxford Learner’s Dictionaries の書き分けは別の形です。イギリス英語 /ˈhaɪərɑːki/、アメリカ英語 /ˈhaɪərɑːrki/ で、あいまい母音の /ə/ は両方に残し、違いは r の有無だけにしています。Cambridge Dictionary が /ə/ の有無で書き分けているのに対し、Oxford は r の有無で書き分けている、という差です。
Cambridge American Dictionary はさらに二つの形を併記しています。/ˈhɑɪ·əˌrɑr·ki/ と、その短縮を示す /ˈhɑɪˌrɑr-/ です。前者は /ə/ を残した形、後者は落とした形で、同じ辞書のなかでも米語の項は二通りを認めていることになります。
なお Cambridge American Dictionary の表記には、第2音節に第二強勢の記号 /ˌ/ が付いています。第1音節に主強勢、第2音節に第二強勢という二段構えで、語のなかで山が二つあることを示しています。3音節を平らに読むのではなく、先頭をいちばん高く、真ん中をやや高く出す形です。
ヒエラルキーの英語 hierarchy は可算か不可算か
辞書によって扱いが違います。Cambridge Dictionary は一貫して数えられる名詞としていますが、Oxford Learner’s Dictionaries は一つ目の語義を「可算・不可算の両方」としています。
Cambridge Dictionary は一般の項、American Dictionary の項、Business English の項のすべてで noun [ C ] と表示しています。つまり a hierarchy と言えて、複数形にもできる語という扱いです。
複数形の形も辞書に出ています。Cambridge Business English Dictionary は plural hierarchies と明記し、例文にも複数形が使われています。「多くの種類の仕事は、市場で個人が取引をするよりも、企業のヒエラルキーのなかで管理されるほうが容易で安価だ」という文です。
| 語義 | Cambridge の扱い | Oxford の扱い |
|---|---|---|
| ①序列の仕組み | 可算[C] | 可算・不可算の両方 |
| ②組織の上層部の人たち | 可算[C] | 可算+単数または複数の動詞 |
| ③考えや信念の序列(formal) | ―(項目を立てていない) | 可算 |
| 複数形 | hierarchies | |
Oxford Learner’s Dictionaries が一つ目の語義に「countable, uncountable」と両方を立てているのは、hierarchy が「一つの具体的な組織図」と「序列という考え方そのもの」の両方を指せるからです。同辞典のコロケーション欄には in a/the hierarchy と within a/the hierarchy が並び、冠詞ありの形が示されています。
冠詞の付いた例文は辞書に豊富にあります。「彼は1966年に入党し、素早くヒエラルキーを上がっていった」「彼女はヒエラルキーのなかで私より上にいる」「その会社には明確な権力のヒエラルキーがあった」。いずれも the か a が付いています。
Oxford Learner’s Dictionaries の「somebody’s level, position, status, etc. in a hierarchy」という定型も、a hierarchy という可算の形で示されています。「ヒエラルキーにおける誰かの階層・地位・身分」を言うときの型です。
実務的には、可算名詞として扱っておけば形を外しません。Cambridge Dictionary の三つの項がすべて[C]で揃っているうえ、Oxford Learner’s Dictionaries の例文も冠詞付きが大半です。不可算で使う余地はありますが、迷ったら a hierarchy か the hierarchy にしておくのが手堅い選び方です。
ヒエラルキーと一緒に使う英単語と、よくある間違い
辞書が挙げている組み合わせをそのまま借りるのが確実です。形容詞は strict(厳格な)・rigid(硬直した)・complex(複雑な)、動詞は create(作る)・establish(確立する)が基本の形です。
Oxford Learner’s Dictionaries のコロケーション欄は、この語と組む語を品詞ごとに並べています。形容詞は complex・rigid・strict、hierarchy を目的語に取る動詞は create・develop(発展させる)・establish、hierarchy を主語に取る動詞は be based on something(〜に基づいている)です。
Cambridge Dictionary のコロケーション欄には、分野を表す形容詞が挙がっています。administrative hierarchy(行政のヒエラルキー)、bureaucratic hierarchy(官僚組織のヒエラルキー)、church hierarchy(教会のヒエラルキー)の三つです。
| 形 | 意味 | 出典の辞書 |
|---|---|---|
| social / political hierarchy | 社会的/政治的なヒエラルキー | Cambridge、Oxford |
| corporate hierarchy | 企業のヒエラルキー | Cambridge、Oxford |
| management hierarchy | 経営のヒエラルキー | Cambridge、Oxford |
| strict / rigid / complex hierarchy | 厳格な/硬直した/複雑なヒエラルキー | Oxford |
| create / develop / establish a hierarchy | ヒエラルキーを作る/発展させる/確立する | Oxford |
| move up the hierarchy | ヒエラルキーを上がっていく | Oxford |
| high up in the hierarchy | ヒエラルキーのかなり上のほうにいる | Oxford |
| a hierarchy of needs | 欲求のヒエラルキー | Oxford、Cambridge Business |
Cambridge Business English Dictionary は、業務で使う形をまとめて示しています。「corporate / management / organizational / political, etc. hierarchy」という並びで、頭に付ける形容詞を差し替えれば分野を切り替えられる型です。
一つ目の間違いは、発音を綴りどおりに読むことです。先頭は「ヒ」ではなく /haɪ/ で、カタカナと英語の音がずれている代表的な語です。二つ目は強勢の位置で、辞書はどれも第1音節に主強勢を置いています。カタカナの「ヒエラル『キー』」のように語末を伸ばすと、英語の型から離れます。
三つ目は前置詞です。Oxford Learner’s Dictionaries が挙げているのは in a/the hierarchy と within a/the hierarchy で、「ヒエラルキーのなかで」と言うときはこの二つです。例文の「なぜ教会のなかにそれほど厳格なヒエラルキーがある必要があるのか」は within を使った形です。
四つ目は、hierarchy of のあとに置くものです。同辞典は hierarchy of … という形を定型として挙げ、例文では hierarchy of power(権力のヒエラルキー)、hierarchy of age(年齢のヒエラルキー)、hierarchy of needs(欲求のヒエラルキー)が使われています。人だけでなく、物差しそのものを of のあとに置けます。
五つ目は、日本語の「ヒエラルキー」が持つ否定的な語感をそのまま英語に持ち込むことです。Cambridge Business English Dictionary の例文は「どの組織にもヒエラルキーがあり、それを理解しようとすること、そして組織の仕組みと工程を理解しようとすることが大切だ」と、中立に近い調子で書かれています。英語の hierarchy は、悪いものとして語られるとは決まっていません。
ヒエラルキーについてよくある質問
ギリシャ語 hierarkhēs「聖なる支配者、高位聖職者」です。Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄によれば、hierarchy は中期英語後期の語で、古フランス語と中世ラテン語を経てギリシャ語 hierarkhia から入り、その hierarkhia は hierarkhēs から、hierarkhēs は hieros「聖なる」+ arkhēs「支配者」に分かれます。Online Etymology Dictionary はさらに、英語では14世紀後半に jerarchie、ierarchie という形で現れ、意味は「聖なる秩序における位。天使の九つの位階を三つに分けたうちの一つ」だったと記しています。中世ラテン語 hierarchia は「天使たちの位階の区分」で、ディオニュシオス・アレオパギテースの体系で使われた語です。
17世紀です。Online Etymology Dictionary は「人や物の序列だった組織」という語義が英語で記録されるのは1610年代までで、当初は聖職者について使われたとしています。Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄も「最も古い語義は『天使たちと天上の存在の位階の体系』であり、それ以外の語義は17世紀に生じた」と書いていて、二つの辞書が同じ時期を指しています。それより前の14世紀後半から16世紀にかけての hierarchy は、天使の序列と聖なる秩序における位を指す語でした。
語源上の関係はありません。Online Etymology Dictionary は hierarchy の項で higher を「無関係(unrelated)」と明記しています。同辞典によれば higher は形容詞 high の比較級で、古英語 hierra(ウェストサクソン方言)、hera(アングリア方言)にさかのぼるゲルマン系の語です。いっぽう hierarchy はギリシャ語から中世ラテン語・古フランス語を経て入った借用語です。ただし同辞典は、hierarchy が「人や物の序列だった組織」という語義を得た1610年代について、「おそらく、無関係な higher との見た目の似かたに影響された、あるいは補強された」とも書いています。血はつながっていないが、似ていることが語義の広がりを後押ししたらしい、という関係です。
Cambridge Dictionary は C2 を付けています。同辞典のレベル表示では上級に当たる区分です。Oxford Learner’s Dictionaries はレベル表示の代わりに OPAL W という印を付けていて、これは同辞典が学術的な書き言葉で重要とする語に付ける印です。加えて Cambridge Dictionary は同じ語を American Dictionary の項では social studies(社会科)の語彙として扱い、Business English の項も別に立てています。一般の英語・学術英語・ビジネス英語・社会科の教科語彙という四つの文脈すべてに項目が立っている語だということになります。
ヒエラルキーのまとめ
ヒエラルキーとは、人や物を重要度の順に上から下へ並べた仕組みであり、その組織を支配している上層部の人たちであり、考えや信念を重要度で並べた体系でもあります。英英辞典はこの三つを、一語のなかの別々の語義として立てています。
語源はギリシャ語 hierarkhēs「聖なる支配者、高位聖職者」で、hieros「聖なる」+ arkhēs「支配者」に分かれます。英語に入ったのは14世紀後半で、最初に指していたのは天使の九つの位階の三区分でした。会社や社会の階層を指す使い方が記録されるのは1610年代からで、当初は聖職者について使われました。
英語で使うときに押さえておきたいのは三つです。Cambridge Dictionary は三つの項すべてで可算名詞として扱い、複数形は hierarchies になること。「〜のなかで」は in a/the hierarchy か within a/the hierarchy で言うこと。そして発音は第1音節の /haɪ/ に体重を乗せ、カタカナの「ヒ」から離れることです。
語源の似かたにも注意が向きます。hierarchy と血がつながっているのは hierarch(聖なる事柄において支配する者、1570年代)のほうで、意味が近く見える higher とは無関係です。辞書がわざわざ unrelated と書き添えている点は、この語を覚えるときの目印として役に立ちます。
ヒエラルキーの出典
hierarchy の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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