トリガーとは、止まっている仕組みを動き出させる「引き金」のことです。英語の trigger をそのままカタカナにした語で、Cambridge Dictionary は名詞 trigger に「押すと銃が発射される、銃の部品」と「何かが始まる原因になる出来事や状況」という二つの方向の語義を立てています。
この記事では、トリガーの意味を英英辞典の語義からたどり、語源が「引く」という手の動作にさかのぼること、名詞から動詞が生まれたのが1930年だということ、日本語で使われる「きっかけ」と cause(原因)との線引き、心理や医療の文脈で辞書が別に立てている語義、trigger warning や trigger-happy という複合語、そして辞書が示す発音と語形変化までを整理します。日本語のカタカナ語としてのトリガーは「きっかけ」の意味で使われることが多いのですが、英英辞典が立てている語義はそれよりもずっと幅があります。
トリガーとは何か(結論)
トリガーとは、押したり引いたりすることで、それまで押さえられていた仕組みを動き出させる部分のことです。辞書はこの語を「物としての引き金」と「出来事としてのきっかけ」の二方向へ広げ、さらに心理の分野では三つ目の語義を立てています。
Cambridge Dictionary の一つ目の語義は、見出しに GUN PART(銃の部品)というラベルが付いています。中身は「押されると銃を発射させる、銃の一部分」で、数えられる名詞です。載っている例文は「誰が実際に引き金を引いたのかは、はっきりしていない」というもので、pull the trigger という形で使われています。
二つ目の語義のラベルは START(始まり)です。「何かを始まらせる出来事や状況など」と定義され、可算名詞ですが単数で使われることが多い、という注記が付いています。例文は「その事件が、首都でさらなる暴力を引き起こす引き金になるのではないかという懸念がある」です。
三つ目には psychology specialized(心理学の専門用語)というラベルが付きます。「過去に起きた悪い出来事を思い出させることによって、人を動揺させたり怖がらせたりするもの」という定義で、例文には「トリガーとは、フラッシュバックを引き起こし、その人をトラウマとなった出来事へ引き戻してしまうものだ」とあります。
| Cambridge のラベル | 指しているもの | 数え方の注記 |
|---|---|---|
| GUN PART(銃の部品) | 押すと銃が発射される銃の部品=引き金 | [C](数えられる) |
| START(始まり) | 何かを始まらせる出来事や状況 | [C usually singular](ふつう単数) |
| psychology specialized(心理学) | つらい記憶を思い出させ、動揺や恐怖を起こすもの | [C usually singular](ふつう単数) |
この三つが一本の線でつながっていることは、Online Etymology Dictionary の定義を読むとよく分かります。同辞典は名詞 trigger を「掛け金やばねを解放し、仕組みを動かす可動部品」と説明しています。つまりトリガーは、力そのものを生む部分ではなく、たまっている力を押さえている手をどけてやる部分です。
Cambridge Dictionary はビジネス英語の項でも同じ語を扱っていて、そこでは「何か、とりわけ悪いことの始まりを引き起こす出来事や状況など」と定義しています。「とりわけ悪いこと」という但し書きが付くのが、ビジネスの文脈でのトリガーの特徴です。
トリガーの語源は「引く」という手の動作にさかのぼる
Online Etymology Dictionary によれば、trigger の形が英語に現れたのは1650年代です。それより前は tricker という綴りで、初出は1620年代。もとをたどるとオランダ語の trekker で、その動詞形 trekken の意味が「引く」でした。
同辞典は trekken について、trek の項を見るよう指示しています。trek の項によれば、英語の trek は1849年に南アフリカの文脈で「牛車による旅のひと区間」を指す語として入り、アフリカーンス語の trek から来ています。さらにその元はオランダ語 trekken で、意味は「行進する、旅をする」、そしてもともとは「引く、引っぱる」でした。中期オランダ語の trecken にさかのぼり、英語の track(n.)の語源と関係がある可能性が示されています。
意味の作られ方について、同辞典はドイツ語を引き合いに出しています。ドイツ語で引き金を指す drücker は、「押す」を意味する drücken から来ている、という指摘です。引くか押すかという向きは逆ですが、指がする動作の名前がそのまま部品の名前になる、という発想は同じだということになります。
おもしろいのは、英語での主流の綴りが長いあいだ tricker だったことです。Online Etymology Dictionary は、1750年ごろまで英語では tricker のほうが普通の形で、その一因はおそらく trick の影響だろうと書いています。
この見立ては、同辞典の trick の項とも呼応しています。trick の項には「trigger とも比較のこと。両者は語義が絡み合い、形が混同されてきた」と明記されています。さらに同じ項には、フランス語側の語の成り立ちをめぐって、オランダ語の trek「引くこと、ぐいと引っぱること」が二次的に「たくらみ」の意味を持つ点が指摘されています。
つまりトリガーという語は、生まれたときから「引く」という一つの動作のまわりに、旅(trek)と策略(trick)という別方向の語を従えていたことになります。カタカナのトリガーからは想像しにくい親戚関係です。
部品としてのトリガーは銃の引き金を指す
トリガーの最も具体的な姿は、銃の引き金です。Online Etymology Dictionary はこの用法を、名詞 trigger の説明のなかでかなり細かく描写しています。
同辞典の記述によれば、銃の trigger とは、火器の上に小さく突き出た鋼の舌のような部分で、これを押すと hammer が lock から解放される、というものです。ここでも動いているのは「解放する」という働きであって、弾を飛ばす力を作っているわけではありません。
Cambridge Dictionary の側は、この語義を数えられる名詞として立て、関連語の一覧(SMART Vocabulary の Parts of guns)に銃の各部を並べています。そこには bore、butt、clip、flint、hammer、holster、muzzle、safety catch、scope、sight、silencer、stock といった語が入っています。トリガーは、その部品群のなかの一つとして辞書に整理されているわけです。
この物としてのトリガーから、指の名前が生まれています。Online Etymology Dictionary によれば、trigger-finger(銃の引き金を引くのに使う人差し指)は1814年から記録があります。
また Cambridge Dictionary のアメリカ英語の項でも、名詞 trigger は「押すと銃が発射される銃の部品」と定義され、例文は to pull the trigger です。イギリス英語の項とアメリカ英語の項で、この語義の説明はほとんど揺れていません。
きっかけとしてのトリガーと、原因(cause)との違い
日本語でトリガーというとき、多くは「きっかけ」の意味で使われます。これは英英辞典の語義でいえば、Cambridge Dictionary が START というラベルで立てている二つ目の語義にあたります。
その定義は「何かを始まらせる出来事や状況など」でした。ここで注目したいのは、定義の動詞が「起こす」ではなく「始まらせる」になっている点です。ビジネス英語の項も同じ形で、「何か、とりわけ悪いことの始まりを引き起こす出来事や状況など」と、やはり「始まり」という語を挟んでいます。
一方で Cambridge Dictionary は、動詞 trigger の類語欄に cause を並べています。同じ欄には bring about、result in、lead to、make、arouse も入っていて、「何かを起こす」という意味のグループとしてまとめられています。cause に添えられた例文は「消防は、キャンプファイアの火の粉が山火事を引き起こしたと断定した」というものです。
| 言葉 | 辞書の定義に現れる働き | 英語 |
|---|---|---|
| トリガー(名詞) | 何かを始まらせる出来事や状況。ふつう単数で使う | trigger |
| 原因(名詞・動詞) | 何かを引き起こすもの。trigger の類語欄に並ぶ | cause |
| 作動させる(句動詞) | Oxford が trigger の同義語として挙げる形 | set off / set something off |
二つの語義を並べると、トリガーは「押さえを外す側」に立っていることが見えてきます。Online Etymology Dictionary の名詞の定義に戻れば、トリガーは掛け金やばねを解放する部品でした。弾を飛ばす力はばねや火薬の側にあり、引き金はそれを解き放つ最後のひと押しにすぎません。
ただし、辞書が「トリガーは原因ではない」と書いているわけではありません。ここで述べたのは、名詞の定義に出てくる「始まらせる」という語と、語源辞典の「解放する」という語から読み取れる線引きです。実際、Cambridge Dictionary の類語欄は trigger と cause を同じグループに入れており、どちらを使っても通じる場面は多くあります。
その線引きがはっきり出るのが、ビジネス英語の例文です。「インフレは、戦後のほぼすべての景気後退の引き金になってきた」「その売り浴びせは、ある減益警告によって引き起こされた」。後者では、株を売りたい地合いそのものではなく、売りが始まった瞬間を作ったものが trigger として名指されています。
動詞のトリガーは1930年に生まれた「引き起こす」
トリガーには動詞があります。Online Etymology Dictionary によれば、動詞 trigger の初出は1930年で、意味は「(何かを)起こす」。引き金が銃を発砲させるように、というイメージが名詞から持ち込まれた、と同辞典は説明しています。
Cambridge Dictionary は動詞 trigger を他動詞として立て、レベル C1 を付けています。定義は「何かを始まらせる」です。例文は「ある種の食べ物が頭痛を引き起こすと感じる人がいる」「UV-B 放射線は皮膚にビタミンDを作らせる」「週末の人種差別的な殺害が、抗議の波を引き起こした」の三つです。
Oxford Learner’s Dictionaries はこの語を trigger something (off) という形で示し、「何かを急に起こす」と定義しています。同義語として set off、set something off が挙げられ、レベルは b2 です。off を付けても付けなくてもよいことが、かっこ書きから分かります。
同辞典の追加例文には「ナッツ類が激しいアレルギー反応を引き起こすことがある」「その出来事が国じゅうの抗議行動を引き起こした」「感情的にストレスの強い出来事は、幅広く再発の引き金になりうる」「彼女の一件は、世界中で支援の波を呼び起こした」「オレンジの匂いだけでも彼女の片頭痛の引き金になる」「彼は発作を引き起こしうる脳の障害を抱えている」が並びます。
もう一つ、機械を相手にした語義があります。Oxford Learner’s Dictionaries は trigger something を「装置を作動させる」と定義し、例として to trigger an alarm(警報を鳴らす)を挙げています。
Cambridge Dictionary のビジネス英語の項にも同じ方向の語義があり、「機器などを動き出させる」と定義したうえで、「車をジャッキで持ち上げようとすると、それだけで自動的に警報が作動する」という例文を載せています。アメリカ英語の項の例文「ジャガイモを焦がして火災報知器を鳴らしてしまった」も同じ使い方です。
語形についても記録があります。Online Etymology Dictionary は関連語として triggering を挙げ、triggered については1891年までに「引き金の付いた」という意味で使われていた(double-triggered gun などの形で)と注記しています。動詞の trigger より、形容詞的な triggered のほうが先に現れていたことになります。
心理・医療のトリガーはつらい記憶を呼び起こすもの
Cambridge Dictionary は、心理学の専門用語というラベルを付けた語義をわざわざ別に立てています。過去に起きた悪い出来事を思い出させることで、人を動揺させ、怖がらせるもの、という定義です。
この語義に添えられた例文は、語の中身をそのまま説明する形になっています。「トリガーとは、フラッシュバックを引き起こし、その人をトラウマとなった出来事へ引き戻してしまうものだ」。名詞の関連トピックとして「不安や心配を引き起こすこと」が示されているのも、この語義の性格を表しています。
動詞の側にも対応する語義があり、Cambridge Dictionary は informal(くだけた語法)というラベルを付けています。定義は「とりわけ過去の悪い出来事を思い出させることによって、人に恐怖・ショック・怒り・不安といった強い感情の反応を起こさせる」です。例文は「彼がこちらへ歩いてくるのを見ただけで動揺してしまい、悲鳴を上げた」「大きな音が引き金になることがある」。
Oxford Learner’s Dictionaries も trigger somebody という形で同じ語義を立てています。「トラウマやつらい経験を思い出させることによって、人をひどく動揺させたり不安にさせたりする」という定義で、レベルは c2 です。
同辞典の例文は「ほんの些細なことで動揺してしまうことがあります。母のことを思い出させるからです」。関連トピックは Feelings(感情)に分類されています。C1 が付いた「引き起こす」の語義より一段上のレベルが振られている点からも、この用法が比較的新しい層であることがうかがえます。
その新しさには年号が付いています。Online Etymology Dictionary は、動詞 trigger の「とりわけ心理的な用法」として、「人や動物に強く、多くは否定的な感情の反応を引き起こす」という意味が1986年までに記録されている、と書いています。1930年に生まれた動詞が、半世紀ほどかけて感情の領域へ入っていったことになります。
医療寄りの例文も、辞書のなかに多く並んでいます。Cambridge Dictionary には「ある種の食べ物が頭痛を引き起こす」「チョコレートを食べると片頭痛が起きる人がいる」「ある型の糖尿病は自己免疫疾患で、ウイルスが引き金になることがある」、Oxford Learner’s Dictionaries には「感情的にストレスの強い出来事が再発の引き金になりうる」があります。いずれも、症状が始まる場面を名指す言い方として trigger が選ばれています。
トリガーウォーニングとトリガーハッピーというトリガーの派生語
トリガーは複合語をよく作る語です。辞書の見出しには、trigger-happy、trigger warning、trigger-finger といった形が独立して並んでいます。
trigger-happy について、Online Etymology Dictionary は「ほんのわずかな刺激で発砲する(あるいは暴力的に反応する)用意ができている」と定義し、1942年までに記録があるとしています。Oxford Learner’s Dictionaries の検索結果一覧にも、trigger-happy が形容詞の見出し語として立っています。
trigger warning は、Oxford Learner’s Dictionaries の検索結果一覧に名詞の見出しとして現れます。ただし、今回参照したページにはこの複合語の定義そのものは載っていないため、ここでは辞書の定義として中身を書くことはできません。
| 複合語 | 辞書に記載があること | 年 |
|---|---|---|
| trigger-finger | 銃の引き金を引くのに使う人差し指(Online Etymology Dictionary) | 1814年から |
| trigger-happy | わずかな刺激で撃つ・暴力的に反応する用意がある(同上) | 1942年から |
| trigger warning | Oxford Learner’s Dictionaries に名詞の見出しとして存在(定義は今回未取得) | 記載なし |
ただし、この複合語の trigger がどの語義なのかは、辞書の記述から読み取れます。Cambridge Dictionary が心理学の専門用語として立てた「つらい記憶を呼び起こして動揺させるもの」、そして Oxford Learner’s Dictionaries の trigger somebody という語義が、そのまま当てはまる形です。
同じ trigger という語が、銃の部品から出発して、1930年に「引き起こす」という動詞になり、1986年までに感情の領域へ広がり、その延長として複合語を作っている。派生語の並びを年代順に見ると、この語が意味を広げてきた順序がそのまま現れます。
トリガーの発音は /ˈtrɪɡ.ər/ で先頭を強く読む
Cambridge Dictionary が示す発音記号は、イギリス英語が /ˈtrɪɡ.ər/、アメリカ英語が /ˈtrɪɡ.ɚ/ です。先頭に付いている記号が強勢の位置を表していて、強く読むのは trig の側になります。
Oxford Learner’s Dictionaries の表記は /ˈtrɪɡə(r)/ と /ˈtrɪɡər/ です。前者では語末の r が丸かっこに入っており、後者では丸かっこなしで書かれています。Cambridge Dictionary のアメリカ英語は /ˈtrɪɡ.ɚ/ と、r の色が付いた母音の記号を使っています。表記の流儀は違いますが、強勢の位置はどの辞書でも先頭で一致しています。
Cambridge Dictionary のアメリカ英語の項では /ˈtrɪɡ·ər/ という表記も見られます。中黒は音節の切れ目を示すもので、この語が二音節であることが読み取れます。
カタカナの「トリガー」は、後ろの「ガー」を伸ばす形になっているため、日本語で読み上げると後半が長く聞こえます。辞書の記号が示しているのは逆で、強く高く読むのは前半です。
語形変化も Oxford Learner’s Dictionaries が一覧で示しています。現在形は I / you / we / they trigger(/ˈtrɪɡə(r)/ /ˈtrɪɡər/)、三人称単数は triggers(/ˈtrɪɡəz/ /ˈtrɪɡərz/)、過去形は triggered(/ˈtrɪɡəd/ /ˈtrɪɡərd/)、過去分詞も同じく triggered、-ing 形は triggering(/ˈtrɪɡərɪŋ/)です。
過去形と過去分詞がどちらも triggered で同形になっている点は、この動詞が規則変化であることを示しています。発音も両者で同じ記号が与えられています。
トリガーの名詞と動詞を使い分ける英語の例文
辞書の例文を形で分類すると、トリガーの使い方は大きく五つのパターンに整理できます。名詞で二つ、動詞で三つです。
| 形 | 品詞 | 辞書の例文(意味) |
|---|---|---|
| pull the trigger | 名詞 | 誰が実際に引き金を引いたのかは、はっきりしていない |
| a trigger for something | 名詞 | インフレは、戦後のほぼすべての景気後退の引き金になってきた |
| trigger something (off) | 動詞 | その出来事が国じゅうの抗議行動を引き起こした |
| be triggered by something | 動詞(受け身) | その売り浴びせは、ある減益警告によって引き起こされた |
| trigger somebody | 動詞(人が目的語) | ほんの些細なことが、母を思い出させて動揺させることがある |
名詞の数え方については、Cambridge Dictionary が銃の部品の語義に [C]、「始まり」と心理学の語義に [C usually singular] という注記を付けています。ビジネス英語の項でも [C, usually singular] です。つまり数えられる名詞ですが、「〜の引き金」と言うときは単数で使うのがふつうだ、ということになります。
動詞は他動詞として立てられており、Cambridge Dictionary は [T]、Oxford Learner’s Dictionaries は trigger something、trigger somebody という形で目的語を明示しています。目的語なしで使う形は、どちらの辞書にも載っていません。
受け身の形は、ビジネス英語の項に be triggered by sth として見出しごと立っています。何が引き金になったかを後ろに置きたいときの定型です。Cambridge Dictionary の一般の項にも「ある型の糖尿病はウイルスによって引き起こされることがある」という受け身の例文があります。
日本語のカタカナ語としてのトリガーは、名詞の「きっかけ」の意味に寄った使われ方をします。これに対して英英辞典の記述では、動詞の側の情報量が多く、Oxford Learner’s Dictionaries に至っては、今回参照したページが動詞の見出しそのものでした。英語で trigger を使うときは、名詞よりも動詞のほうが出番が多い語だと考えておくと、辞書の例文の並びとずれません。
トリガーについてよくある質問
重なりますが、英語の trigger のほうが範囲は広くなります。Cambridge Dictionary が START というラベルで立てている語義は「何かを始まらせる出来事や状況など」で、日本語の「きっかけ」とほぼ同じです。ただし同じ辞書は、この語義とは別に「銃の引き金」という物の語義と、「つらい記憶を呼び起こして動揺させるもの」という心理学の語義を立てています。日本語でトリガーと言うときに使っているのは、三つのうちの一つです。
「引く」という動作です。Online Etymology Dictionary によれば、trigger の形は1650年代から、それ以前は tricker の形で1620年代から記録があり、オランダ語の trekker にさかのぼります。trekker の動詞形 trekken の意味が「引く」で、この語は英語の trek(旅)とも同じ源です。同辞典は、ドイツ語で引き金を指す drücker が「押す」を意味する drücken から来ていることを、意味の作り方の似た例として挙げています。
Cambridge Dictionary は動詞 trigger の類語欄に cause を並べており、両者は同じ「何かを起こす」グループに入っています。そのうえで名詞 trigger の定義を見ると、「何かを始まらせる出来事や状況」「とりわけ悪いことの始まりを引き起こす出来事や状況」と、どちらにも「始まり」という語が挟まっています。また Online Etymology Dictionary は名詞 trigger を「掛け金やばねを解放し、仕組みを動かす可動部品」と定義しています。始まった瞬間を名指したいときが trigger、引き起こしたもの全体を指したいときが cause、と考えると辞書の記述に沿います。
Online Etymology Dictionary は trigger-happy を「ほんのわずかな刺激で発砲する、あるいは暴力的に反応する用意ができている」と定義し、1942年までに記録があるとしています。Oxford Learner’s Dictionaries でも、trigger-happy は形容詞の見出し語として独立して立っています。同じ辞典の見出しには trigger warning(名詞)もありますが、今回参照したページにはその定義が載っていないため、ここでは中身を示しません。
トリガーのまとめ
トリガーとは、押さえられていた仕組みを動き出させる「引き金」のことです。英語の trigger は、銃の部品という物の語義から始まり、「何かを始まらせる出来事や状況」、そして「つらい記憶を呼び起こして人を動揺させるもの」まで、辞書のなかで三方向に広がっています。
語源は「引く」という手の動作で、オランダ語 trekker(trekken=引く)にさかのぼります。英語では1650年代から trigger の形が記録され、それ以前は tricker でした。動詞の trigger が生まれたのは1930年、心理的な用法が記録されるのは1986年までのことです。
cause との違いを辞書の文言から読み取るなら、トリガーは「始まらせるもの」の側に立っています。ただし Cambridge Dictionary は両者を同じ類語グループに入れており、辞書が「トリガーは原因ではない」と書いているわけではありません。
発音は先頭を強く読む二音節で、Cambridge Dictionary の表記はイギリス英語が /ˈtrɪɡ.ər/、アメリカ英語が /ˈtrɪɡ.ɚ/、Oxford Learner’s Dictionaries の表記は /ˈtrɪɡə(r)/ と /ˈtrɪɡər/ です。名詞は数えられますが「〜の引き金」の意味では単数が普通、動詞は他動詞で、trigger something (off)、be triggered by something、trigger somebody の三つの形を辞書が示しています。
トリガーの出典
この記事のトリガー(trigger)に関する記述は、以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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