メタファーとは、あるものを、それと似た性質を持つと見なされる別のものになぞらえて言い表す表現のことです。日本語では「隠喩」「暗喩」と訳されます。英語の metaphor をそのままカタカナにした語で、英英辞典も「似た特徴を持つと考えられる何かに言及することで、人やものを描写する表現」と定義しています。
この記事では、メタファーの意味を英英辞典の語義からたどり、ギリシャ語の metaphora(運び移すこと)にさかのぼる語源、直喩(simile)との線引き、たとえ話(analogy)との違い、二通りある発音、そして派生語と決まった型までを整理します。
メタファーとは何か(結論)
メタファーとは、「まるで~のようだ」と断らずに、いきなり「~である」と言い切るたとえのことです。似ていると告げる言葉を挟まないぶん、描写が強くなります。
Cambridge Dictionary は metaphor を名詞 [ C or U ] とし、しばしば文学に見られる表現で、その人やものと似た特徴を持つと考えられる何かに言及することによって、人やものを描写するもの、と定義しています。レベルは C2 です。
添えられた例は二つです。The mind is an ocean(心は海だ)と the city is a jungle(都市はジャングルだ)。どちらも「心」「都市」を、まったく別のものだと言い切っています。
Oxford Learner’s Dictionaries の定義はもう一歩ていねいです。ある語や句を、その通常の使い方とは異なるやり方で、他の誰かや何かを描写するために使うこと。二つのものが同じ性質を持つことを示し、描写をより力強くするためのもの、としています。例として She has a heart of stone(彼女は石の心を持っている)が挙がっています。
Cambridge のアメリカ英語の項も、A heart of stone はメタファーだ、と同じ例を挙げています。「冷たい」と説明せず「石」と言い切るところに、この表現の力があります。
メタファーの語源はギリシャ語 metaphora(運び移すこと)
metaphor が英語に現れたのは15世紀後半です。Online Etymology Dictionary によれば、当時の綴りは複数形の methaphoris で、フランス語の metaphore(古フランス語 metafore、13世紀)とラテン語 metaphora の両方から入りました。
その元はギリシャ語の metaphora です。同辞典はこれを「移すこと」、とくにある語の意味を別の語へ移すこと、と説明し、文字どおりの意味を「向こうへ運ぶこと」としています。
分解すると meta(~を越えて、横切って)+pherein(運ぶ、担う)です。動詞形の metapherein には「移す、運び越す」のほかに「変える」、そして「ある語を奇妙な意味で使う」という語義まであった、と同辞典は記しています。
後半の pherein は、印欧祖語の語根 *bher-(運ぶ、子を産む)にさかのぼります。この根は英語に大量の語を残していて、同辞典は bear(運ぶ・産む)、birth(誕生)、bring(持ってくる)、burden(荷)、offer(差し出す)、refer(参照する)、prefer(好む)、differ(異なる)、conference(会議)、periphery(周縁)、euphoria(多幸感)などを同じ根の仲間として挙げています。
つまりメタファーの芯にあるのは「運ぶ」という動作です。ある語が持っている意味を、そっくりそのまま別の場所へ運んでいく。心という場所へ「海」を運び込むから、The mind is an ocean という文が成り立ちます。
メタファーと直喩 simile の違い
いちばん比べられるのが simile(直喩)です。Cambridge Dictionary は metaphor の例文の中で、メタファーと直喩は日常語でもっともよく使われる比喩表現だ、と書いています。
| 語 | Cambridge Dictionary の定義 | 発音(英) |
|---|---|---|
| metaphor | 似た特徴を持つと考えられる何かに言及して、人やものを描写する表現 | /ˈmet.ə.fɔːr/ |
| simile | あるものを別のものと比べる表現。必ず as か like を含む | /ˈsɪm.ɪ.li/ |
分かれ目ははっきりしています。simile の定義には「必ず as か like という語を含む」という条件が入っていますが、metaphor の定義にはそれがありません。like や as で橋を架けるのが直喩、架けずに言い切るのが隠喩です。
Cambridge Dictionary が挙げる simile の例は、バイロンの詩の一行 She walks in beauty, like the night…(彼女は美のなかを歩む、夜のように)です。like がはっきり見えます。
Oxford Learner’s Dictionaries の simile も、like か as を使ってあるものを別のものと比べる語や句、と定義し、a face like a mask(仮面のような顔)と as white as snow(雪のように白い)を例に挙げています。そして項の中で compare metaphor と案内しています。
語源も別方向です。Online Etymology Dictionary によれば simile は14世紀後半で、ラテン語の simile(似たもの、比較、類似、対応するもの)から。形容詞 similis(似た、同種の)の中性形です。「運ぶ」の metaphor に対して、simile は「似ている」がそのまま語になっています。
同辞典は直喩の条件も書き添えています。二つのものには目立った共通点がなければならず、両方が言及されていなければならず、比較は直接に述べられていなければならない。さらにジョンソンの言として、完全な直喩は主題を説明すると同時に高めるものでなければならない、とも引いています。
メタファーと analogy の違い
もう一つ隣にあるのが analogy です。日本語では「類推、たとえ話」と訳されます。こちらは表現の技法というより、説明の手続きに寄った語です。
Cambridge Dictionary は analogy を [ C or U ]、レベル C2 とし、似た特徴を持つもの同士の比較で、しばしば原理や考えを説明する助けとして使われるもの、と定義しています。例文は、彼は脳と巨大なコンピュータのあいだに類比を引いた、という文です。
定義の中に「説明する助けとして」が入っているのが analogy の特徴です。metaphor の定義にあるのは「描写をより力強くするため」(Oxford Learner’s Dictionaries)で、狙いが違います。飾るのがメタファー、分からせるのが analogy、と整理できます。
形も違います。Oxford Learner’s Dictionaries は analogy (between A and B) と analogy (with something) という型を示し、教師は人間の心臓とポンプのあいだに類比を引いた、という例文を挙げています。二つのものを両方とも並べて言うのが analogy です。
語源をたどると、もっと理屈寄りの語だと分かります。Online Etymology Dictionary によれば analogy は15世紀初めで、ギリシャ語 analogia(比例)から。ana(~に従って)+logos(比、また語・言葉・計算)です。もとはギリシャの数学用語で、プラトンがより広い意味を与えた、と記されています。
メタファーの発音は /ˈmetəfɔːr/ と /ˈmetəfər/ の2通り
metaphor は第1音節の met を強く読みます。迷いやすいのは最後の -phor で、辞書は二つの読みを並べています。
| 辞書 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary | /ˈmet.ə.fɔːr/ | /ˈmet̬.ə.fɔːr/ |
| Cambridge(米語辞典) | ― | /ˈmet̬·əˌfɔr/ / /-fər/ |
| Oxford Learner’s Dictionaries | /ˈmetəfə(r)/ / /ˈmetəfɔː(r)/ | /ˈmetəfər/ / /ˈmetəfɔːr/ |
Oxford Learner’s Dictionaries は、英米とも曖昧母音の /fə(r)/ を先に置き、/fɔː(r)/ を後に置いています。Cambridge のアメリカ英語の項も /ˈmet̬·əˌfɔr/ と /-fər/ の両方を載せています。
つまり語尾は、はっきり /fɔːr/ と言っても、軽く /fər/ と流しても、どちらも辞書に載っている読み方です。カタカナの「メタファー」は語尾を伸ばしますが、英語では強勢が最初の met にあるので、語尾を伸ばしすぎると別の形に聞こえます。
メタファーの英語 metaphor は可算にも不可算にもなる
Cambridge Dictionary は metaphor に [ C or U ]、Oxford Learner’s Dictionaries は [countable, uncountable] の印を付けています。数える使い方と、数えない使い方の両方がある語です。
数えるのは、一つひとつの表現を指すときです。The mind is an ocean と the city is a jungle はどちらもメタファーだ、という Cambridge Dictionary の文では、複数形の metaphors になっています。
数えないのは、技法そのものを指すときです。Oxford Learner’s Dictionaries は定義の後半に「そうした語や句を使うこと」という語義を足し、the writer’s striking use of metaphor(その作家の目を引くメタファーの使い方)という例を挙げています。use of metaphor と無冠詞で使う形です。
派生語も押さえておくと便利です。Cambridge のアメリカ英語の項は形容詞 metaphorical を /ˌmet̬·əˈfɔr·ɪ·kəl/ の発音つきで立て、metaphorical expressions という例を挙げています。
Online Etymology Dictionary によれば、形容詞の metaphoric は1590年代、metaphorical は1550年代からあります。同辞典はギリシャ語の metaphorikos が「メタファーが巧みな」を意味した、とも書いています。副詞の metaphorically も関連語として挙げられています。
決まった型もあります。Cambridge Dictionary は a metaphor for something を熟語として立てています。Oxford Learner’s Dictionaries の例文、a game of football used as a metaphor for the competitive struggle of life(人生の競争的な闘いのメタファーとして使われるサッカーの試合)が、その形をそのまま見せています。
アリストテレスがメタファーを「天才のしるし」と呼んだ
Online Etymology Dictionary の metaphor の項には、引用が二つ載っています。片方はアリストテレスの『詩学』からのもので、この語の値打ちを一文で言い切っています。
詩の形式を適切に使うこと、複合語や耳慣れない語を使うこともたしかに大事だ。しかし、はるかに偉大なのはメタファーの達人であることだ。それは他人から学べない唯一のものであり、天才のしるしでもある。よいメタファーは、似ていないもののあいだに似ているところを直観的に見抜くことを含むからだ。
「似ていないもののあいだに、似ているところを見抜く」。これがメタファーを作るという仕事の中身です。心と海、都市とジャングルは、見た目はまったく似ていません。それでも同じ性質を一つ見つけて、そこで結ぶわけです。
もう片方の引用は、1884年のジェイムズ・ラッセル・ローウェルの言葉です。メタファーは議論そのものではない。ただし、議論を打ち込んで記憶に埋め込むための火薬になることはある、という趣旨です。
Cambridge Dictionary が metaphor を SMART Vocabulary の「Figurative use of language(言葉の比喩的な使い方)」に分類しているのも、この二つの引用と並べて読むと納得がいきます。同じ棚には figure of speech、imagery、metonymy、mix your metaphors といった語が並んでいます。
メタファーを使った英語の例文とよくある間違い
まずは基本の型です。”The mind is an ocean” and “the city is a jungle” are both metaphors.(「心は海だ」と「都市はジャングルだ」はどちらもメタファーだ)。Cambridge Dictionary に載っている形で、複数形の使い方も見えます。
「~のメタファー」と言いたいなら、a game of football used as a metaphor for the competitive struggle of life(人生の競争的な闘いのメタファーとして使われるサッカーの試合)。as a metaphor for ~ がそのまま型になります。
間違いの一つ目は、like や as を入れてしまうことです。それを入れると定義上は simile(直喩)になります。Cambridge Dictionary の simile の定義には「必ず as か like を含む」と書かれています。
二つ目は、説明のためのたとえ話を metaphor と呼ぶことです。原理や考えを説明する助けとして二つを並べるなら analogy のほうが近く、draw an analogy between A and B という型で言えます。
三つ目は発音で、強く読むのは第1音節の met です。語尾は /fɔːr/ でも /fər/ でもかまいませんが、そこに強勢を置かないようにします。
メタファーについてよくある質問
like か as を使うかどうかで分かれます。Cambridge Dictionary は simile を「あるものを別のものと比べる表現。必ず as か like という語を含む」と定義しており、metaphor の定義にはその条件がありません。Oxford Learner’s Dictionaries も simile の例に a face like a mask、as white as snow を挙げ、項の中で compare metaphor と案内しています。
狙いが違います。Cambridge Dictionary は analogy を「似た特徴を持つもの同士の比較で、しばしば原理や考えを説明する助けとして使われるもの」と定義しています。説明のために二つを並べるのが analogy、描写を力強くするために言い切るのが metaphor です。analogy は draw an analogy between A and B、by analogy with something という型で使います。
どちらでも使えます。Cambridge Dictionary は [ C or U ]、Oxford Learner’s Dictionaries は [countable, uncountable] の印を付けています。一つひとつの表現を指すなら a metaphor/metaphors、技法そのものを指すなら use of metaphor のように無冠詞で使います。
英語では15世紀後半で、最初は複数形 methaphoris の形で現れました。Online Etymology Dictionary は、フランス語 metaphore とラテン語 metaphora を経てギリシャ語 metaphora から来たとし、文字どおりの意味を「向こうへ運ぶこと」としています。meta(越えて)+pherein(運ぶ)で、pherein は印欧祖語の語根 *bher-(運ぶ)にさかのぼります。bear、birth、bring、offer、refer なども同じ根の仲間です。
メタファーのまとめ
メタファーとは、like や as で橋を架けずに、あるものを別のものだと言い切るたとえのことです。英語の metaphor は [ C or U ] で、一つひとつの表現を指すときは可算、技法そのものを指すときは不可算になります。
語源はギリシャ語 metaphora(向こうへ運ぶこと)で、meta(越えて)+pherein(運ぶ)に分解できます。15世紀後半に英語へ入り、形容詞 metaphorical は1550年代から使われています。
発音は第1音節の met を強く読み、語尾は /fɔːr/ でも /fər/ でもかまいません。like や as を入れるなら simile、説明のために並べるなら analogy と、隣の語も一緒に押さえておくと、英語で書くときに選び間違えません。
メタファーの出典
metaphor の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。
- Cambridge Dictionary|metaphor
- Oxford Learner’s Dictionaries|metaphor
- Online Etymology Dictionary|metaphor
- Cambridge Dictionary|simile
- Oxford Learner’s Dictionaries|simile
- Online Etymology Dictionary|simile
- Cambridge Dictionary|analogy
- Oxford Learner’s Dictionaries|analogy
- Online Etymology Dictionary|analogy

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