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イディオムとは?意味と語源|phrase・proverb との違いと英語 idiom の発音と使い方

イディオムとは、決まった並びの語のまとまりで、一語ずつの意味を足しても出てこない別の意味を持つもののことです。英語の idiom をそのままカタカナにした語で、日本語では「慣用句」「言い回し」と訳されます。

この記事では、イディオムの意味を英英辞典の語義からたどり、ギリシャ語の idios(自分の、私的な)にさかのぼる語源、phrase や proverb との線引き、辞書が示す発音と数え方、そして「決まり文句」以外に辞書が立てている語義までを、実際に取得した辞書ページの記述だけで整理します。

目次

イディオムとは何か(結論)

イディオムとは、語のまとまり全体で一つの意味を作る言い回しのことです。決め手は「一語ずつの意味からは出てこない」という点で、辞書はどちらもこの条件を定義文に書き込んでいます。

Cambridge Dictionary は PHRASE という見出しの語義に B2 のレベル表示と [C] を付け、決まった順序で並んだ語の集まりで、一語ずつの意味とは違う特定の意味を持つもの、と定義しています。

例文として挙げられているのが bite off more than you can chew です。かみ切れる以上に噛みちぎる、という文字どおりの意味ではなく、自分には難しすぎることをやろうとした、という意味のイディオムだ、と辞書自身が説明しています。

Oxford Learner’s Dictionaries も一つ目の語義を [countable] とし、その意味が個々の語の意味とは異なる語の集まり、と定義しています。例に挙がるのは Let the cat out of the bag で、うっかり秘密を漏らすこと、という意味だと注記されています。

どちらの辞書も「決まった並び」と「意味のずれ」の二つを条件にしています。語順が動かせるなら、あるいは足し算で意味が出るなら、それはイディオムではなく普通の語の並びだということです。

イディオムの語源はギリシャ語 idios の「自分の」

イディオムの語源をたどると、ギリシャ語の idios「個人的な、私的な」に行き着きます。公共のものを指す dēmosios の反対語で、「自分だけのもの」を表す語でした。

Online Etymology Dictionary によれば、英語の idiom が現れたのは1580年代です。当時の意味は「ある民族や場所に特有の話し方」でした。いまの中心的な意味、つまり「ある言語に特有の句や表現」が現れるのは1620年代です。

道筋は、フランス語の idiome と後期ラテン語の idioma「言語における特異性」を経て、ギリシャ語の idiōma「特異性、独特な言い回し」です。その元の動詞 idioumai は「自分のものにする」で、さらにその元が idios です。

同辞典は、Fowler がギリシャ語の idiōma を訳すなら「その独特なものの現れ」が可能なかぎり近い、と書いていることも引いています。つまり語の芯にあるのは「よそにはない、そこだけのもの」という感覚です。

Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄も同じ道筋で、16世紀後半にフランス語 idiome から、あるいは後期ラテン語経由でギリシャ語 idiōma「私有財産、独特な言い回し」から入った、と記しています。idios の元の意味に「私有」が含まれていることが、こちらの書き方ではっきり出ています。

イディオムには「決まり文句」以外の意味もある

日本語のイディオムはほぼ「慣用句」の意味だけで使われますが、英語の idiom には辞書がもう二つ語義を立てています。どちらも formal のラベルが付いた、少し硬い使い方です。

語義 数え方 辞書が挙げる例
個々の語の意味とは違う意味を持つ語のまとまり [countable] Let the cat out of the bag
特定の人・時代・場所で使われる言葉づかいや文法 [uncountable, countable](formal) revert to playground idiom
ある人・集団・時代・場所に典型的な文章・音楽・芸術の様式 [uncountable, countable](formal) a classical play in a modern idiom

二つ目の語義は、Oxford Learner’s Dictionaries が「特定の人々が、特定の時や場所で使う言葉づかいと文法」と定義しているものです。友人どうしが子どものころの言葉づかいに戻ってしまうことがあった、という例文が付いています。

三つ目は芸術の様式を指す語義です。古典的な戯曲を現代的な様式で作り上げた、という例文が挙がり、the classical idiom、the contemporary idiom、the popular idiom という組み合わせも示されています。音楽や美術の批評で出てくる使い方です。

Cambridge Dictionary も LANGUAGE という見出しで [C or U] の formal な語義を立てており、特定の言語あるいは話し方の様式、と定義しています。シチリア語、つまり現地の言い方では Siculu を話す、という例文が付いています。

Oxford Learner’s Dictionaries は二つ目の語義に Topics Language c1 というトピック表示を付けています。慣用句の意味は日常語ですが、言葉づかいや様式を指す使い方は上級の語だ、という位置づけです。

イディオムとフレーズ(phrase)の違い

phrase は「語のまとまり」そのものを指す上位の語で、意味がずれているかどうかは問いません。イディオムは phrase の一種だが、phrase がすべてイディオムというわけではない、という関係です。

語 Cambridge の定義 レベル 発音(英)
idiom 決まった順序の語の集まりで、一語ずつの意味とは違う特定の意味を持つもの B2 /ˈɪd.i.əm/
phrase 文の一部をなす語の集まり/よく一緒に使われ特定の意味を持つ短い語の集まり B1(EXPRESSION の語義) /freɪz/

Cambridge Dictionary は phrase に二つの語義を立てています。一つ目は文法用語で、文の全体ではなくその一部をなす語の集まり。an adverbial phrase(副詞句)、an adjectival phrase(形容詞句)が例です。

二つ目は B2 ではなく B1 のレベル表示が付いた語義で、よく一緒に使われ、特定の意味を持つ短い語の集まり、と定義されています。同義語として expression が挙げられています。イディオムより広く、やさしい語だということです。

Oxford Learner’s Dictionaries の類語欄も同じ整理をしています。word・term・phrase・expression・idiom の五つを「何かを表すために使う言語の単位」を指す語群として並べ、phrase は「一緒に使われたときに特定の意味を持つ語の集まり」、idiom は「その意味が個々の語の意味とは異なる語の集まり」と書き分けています。

語源もまったく別です。Online Etymology Dictionary によれば phrase は1520年代、後期ラテン語の phrasis「言い回し」を経て、ギリシャ語の phrasis「話すこと、話し方、言い方」から入りました。その元の動詞 phrazein は「告げる、示す、知らせる」です。

イディオムと proverb(ことわざ)の違い

proverb はことわざのことです。イディオムが文の中に組み込んで使う「部品」なのに対し、proverb はそれだけで一つの文として完結しています。

Cambridge Dictionary は proverb に C2 と [C] を付け、多くの人に知られていて、よく経験されることを述べたり助言を与えたりする短い文など、と定義しています。食欲は食べるうちに増す、ということわざが例として挙がっています。

同辞典はもう一つ、書いたり話したりすることはすべて三つの門を通らねばならない、それは親切か、必要か、真実か、という古いアラビアのことわざも挙げています。文として独立しているのが分かる例です。

語源も別系統です。Online Etymology Dictionary によれば proverb は1300年ごろ、旧約聖書の箴言を指す形で英語に現れました。古フランス語の proverbe とラテン語の proverbium「よくある言い回し、古い格言」から来ており、文字どおりには pro「前へ」+verbum「語」、つまり「前に差し出された言葉」です。

イディオムの発音は /ˈɪd.i.əm/ で最初にアクセント

idiom の発音は、Cambridge Dictionary が英音・米音とも /ˈɪd.i.əm/、Oxford Learner’s Dictionaries が英音・米音とも /ˈɪdiəm/ と示しています。英米で差がなく、第1音節にアクセントが乗ります。

辞書 英音 米音
Cambridge Dictionary /ˈɪd.i.əm/ /ˈɪd.i.əm/
Oxford Learner’s Dictionaries /ˈɪdiəm/ /ˈɪdiəm/

最初の音は /ˈɪ/ で、日本語の「イ」より口の力を抜いた短い音です。カタカナの「イディオム」は3拍に読みたくなりますが、辞書の区切りは id・i・om の3音節で、強いのは最初だけです。

最後の /əm/ は曖昧母音で、「オム」とはっきり言うと重くなります。軽く口を閉じるだけで足ります。比べた二語のうち phrase は /freɪz/ の1音節、proverb は英音 /ˈprɒv.ɜːb/、米音 /ˈprɑː.vɝːb/ で、いずれも第1音節にアクセントが来ます。

イディオムの英語 idiom は語義で数え方が変わる

Cambridge Dictionary は慣用句の語義に [C]、言葉づかいの語義に [C or U] を付けています。Oxford Learner’s Dictionaries は一つ目を [countable]、二つ目と三つ目を [uncountable, countable] としています。

つまり「一つ二つと数えられる言い回し」を指すときは可算です。an idiom、idioms のように、ふつうの可算名詞として扱います。

一方、言葉づかいや様式を指すときは不可算になりやすくなります。in a modern idiom(現代的な様式で)、the spoken idiom(話し言葉の言い回し)のように、数えずにまとまりとして扱う形です。

Cambridge Dictionary の用例欄には、彼らのスラングやイディオムに慣れるのが一番難しい、という文が idioms の形で載っています。複数形が自然に立つ語だということです。

辞書がイディオムの例として挙げている言い回し

二つの辞書が idiom の説明で実際に挙げている言い回しは、どちらも「文字どおりに読むと意味が通らない」典型例です。まずはこの二つを覚えると、条件の感覚がつかめます。

言い回し 辞書が書いている意味 出どころ
bite off more than you can chew 自分には難しすぎることをやろうとした Cambridge Dictionary
let the cat out of the bag うっかり秘密を漏らす Oxford Learner’s Dictionaries

どちらも語をばらして訳すと意味が出ません。噛める以上にかみ切る、袋から猫を出す、という直訳からは、身の丈を超える、秘密を漏らす、という意味にたどり着けないからです。

Cambridge Dictionary は idiom を Figurative use of language、つまり言葉の比喩的用法という語群に分類しています。同じ群には figure of speech や metaphorically speaking、そして irony も並んでいます。

同辞典はまた、ドイツ語の alles klar というイディオムには訳し方がいくつもある、という例文も載せています。イディオムは英語だけのものではなく、どの言語にもある、という前提が辞書の例文に入っています。

イディオムを使った英語の例文とよくある間違い

まずは語を説明する型です。X is an idiom that means ~(Xは~という意味のイディオムだ)。Cambridge Dictionary の例文がそのままこの形です。Oxford Learner’s Dictionaries は X is an idiom meaning ~ と分詞で続ける形を使っています。

なじみがあるかどうかを言う型もあります。I wasn’t familiar with the idiom so I had to guess what he meant.(そのイディオムを知らなかったので、彼が何を言いたいのか推測するしかなかった)。be familiar with the idiom という組み合わせです。

言葉づかいの語義を使う型は、in the local idiom(現地の言い方では)や in a modern idiom(現代的な様式で)のように前置詞 in と組みます。Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries の両方の例文に出てくる形です。

間違いの一つ目は、語順を変えてしまうことです。Cambridge Dictionary の定義には in a fixed order(決まった順序で)と書かれています。並びが崩れると、同じ語を使っていても意味が通らなくなります。

二つ目は、ただよく使われる組み合わせをイディオムと呼ぶことです。定義の条件は「一語ずつの意味と違う意味を持つ」ことなので、足し算で意味が出る組み合わせは phrase や expression と呼ぶほうが辞書の区分に合います。

三つ目は、ことわざと混ぜることです。proverb は Cambridge Dictionary が「短い文」と定義しているとおり、それだけで完結します。文の中に埋め込んで使う部品なら idiom、独立した教訓なら proverb です。

イディオムについてよくある質問

Q. イディオムと phrase はどう違いますか

意味のずれがあるかどうかです。Cambridge Dictionary は idiom を「決まった順序の語の集まりで、一語ずつの意味とは違う特定の意味を持つもの」、phrase を「文の一部をなす語の集まり」および「よく一緒に使われ特定の意味を持つ短い語の集まり」と定義しています。レベル表示も idiom が B2、phrase の表現の語義が B1 で、phrase のほうが広くやさしい語です。

Q. イディオムの語源はどこまでさかのぼれますか

ギリシャ語の idios です。Online Etymology Dictionary によれば、英語の idiom は1580年代に「ある民族や場所に特有の話し方」の意味で現れ、フランス語 idiome と後期ラテン語 idioma を経て、ギリシャ語 idiōma「特異性、独特な言い回し」、さらに idios「個人的な、私的な」にさかのぼります。「ある言語に特有の句や表現」という意味は1620年代からです。

Q. イディオムとことわざ(proverb)は同じですか

違います。Cambridge Dictionary は proverb を「多くの人に知られていて、よく経験されることを述べたり助言を与えたりする短い文など」と定義しており、文として独立しています。idiom は文の中に組み込んで使う語のまとまりです。proverb の同義語には adage、axiom、saw、saying が挙げられています。

Q. idiom に「慣用句」以外の意味はありますか

あります。Oxford Learner’s Dictionaries は formal のラベル付きで二つ足しています。一つは「特定の人々が、特定の時や場所で使う言葉づかいと文法」、もう一つは「ある人・集団・時代・場所に典型的な文章・音楽・芸術の様式」です。後者は a classical play in a modern idiom のように使われます。

イディオムのまとめ

イディオムとは、決まった並びの語のまとまりで、一語ずつの意味からは出てこない別の意味を持つもののことです。語源はギリシャ語 idios「個人的な、私的な」で、英語には1580年代に「ある民族や場所に特有の話し方」として入りました。

発音は英米とも /ˈɪd.i.əm/ で、第1音節にアクセントが乗ります。慣用句を指すときは可算、言葉づかいや様式を指すときは不可算になりやすい、という分かれ方です。

phrase は語のまとまり全般を指す広い語で、意味のずれは条件になりません。proverb はそれだけで完結する短い文です。この三つの線を引いておくと、英英辞典の説明文を読むときに何が言われているのかが正確に取れるようになります。

イディオムの出典

idiom・phrase・proverb の定義、語法、発音、語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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