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ジレンマとは?意味と語源はギリシャ語 di+lemma|paradox との違いと英語 dilemma の発音

ジレンマとは、どちらを選んでも具合の悪い二つの選択肢に挟まれて、決めきれずにいる状態のことです。英語の dilemma をそのままカタカナにした語で、英英辞典も「あなたが取りうる二つの異なる行動のあいだで、難しい選択をしなければならない状況」と定義しています。

この記事では、ジレンマの意味を英英辞典の語義からたどり、ギリシャ語の di(二つ)+lemma(前提)にさかのぼる語源、修辞学の専門用語だった生まれ、二通りある発音、paradox との線引き、そして辞書が示す前置詞の型までを整理します。

目次

ジレンマとは何か(結論)

ジレンマとは、二つの道が目の前にあり、どちらへ進んでも損が出る、という形の困りごとです。単に「迷っている」のではなく、「選ばないわけにいかないのに、どちらも嫌だ」というところまで含むのが、この語の芯にあります。

Cambridge Dictionary は dilemma を名詞 [ C ] とし、あなたが取りうる二つの異なる行動のあいだで難しい選択をしなければならない状況、と定義しています。レベルは B2 です。

同辞典のアメリカ英語の項は、もう一歩踏み込んでいます。どれを選んでも望まない結果になる可能性のあいだから、選ばなければならない状況、という書き方です。「どちらも嫌」という部分が、定義の中にはっきり出ています。

Oxford Learner’s Dictionaries の定義は少し角度が違います。問題を生む状況、しばしば、同じくらい大切なものの中から非常に難しい選択をしなければならない状況、としています。こちらは「どちらも嫌」ではなく「どちらも大事」の側から書かれています。

同辞典はトピックを Preferences and decisions(好みと決断)、レベルを C1 としています。Cambridge の B2 と合わせて読むと、中級から上級の境目あたりに立つ語だと分かります。

ジレンマの語源はギリシャ語の di(二つ)+lemma(前提)

dilemma が英語に現れたのは1520年代です。Online Etymology Dictionary によれば、後期ラテン語の dilemma を経て、ギリシャ語の dilemma(二重の命題)から来ています。

分解すると di-(二つ)+lemma(前提、受け取られたもの・取られたもの)です。同辞典によれば、この lemma は「取る」を意味するギリシャ語 lambanein の語根から来ています。

その lemma 自体も英語の語として1560年代に数学へ入りました。ギリシャ語の lemma は「受け取られたもの、論拠、当然のこととして受け入れられたもの」で、印欧祖語の語根 *(s)lagw-(つかむ、取る)にさかのぼります。サンスクリットの labhate(つかむ)、古英語の læccan(つかむ、握る)が同じ根の仲間です。

di- のほうは、ギリシャ語の dis(二度)の短縮形で、「二つの、二重の、二度」を表す造語要素です。duo(二)と関係があり、ラテン語系の bi- と同語源で、印欧祖語の語根 *dwo-(二)に行き着きます。二という数がこの語の背骨だ、ということです。

Oxford Learner’s Dictionaries の Word Origin 欄も同じ筋で、16世紀初めにラテン語を経由してギリシャ語の dilēmma から入った、di-(二度)+lēmma(前提)だ、と記しています。そして当時の意味を、どちらも好ましくない選択肢のあいだで選ぶという形の論法を指していた、と説明しています。

ジレンマはもともと修辞学の専門用語だった

いまの「板挟み」の意味は、実は後から来たものです。Online Etymology Dictionary は1520年代の dilemma を「修辞学における」語だとし、ギリシャ語 dilemma も修辞学の専門用語だった、と書いています。

同辞典が引く Century Dictionary の説明はこうです。ある命題を主張する者は、二つの結論のうちどちらかを受け入れざるをえず、しかもそのどちらもがその命題自体の否定を含んでしまう、と示す形の論法。

つまり生まれたときのジレンマは、相手を論破するための道具でした。どちらの道を選んでも、あなたの主張は崩れますよ、と見せる論法の名前だったわけです。

ゆるい意味での「好ましくない二つの選択肢のあいだの選択」が加わったのは1580年代です。同辞典はさらに、この語は二つの選択肢のどちらも本人に不利な状況にだけ使うべきだ、とも書き添えています。ただし、ある状況がジレンマなのか単なる三段論法なのかは、論理学者のあいだでも意見が割れる、とも記しています。

ジレンマの発音は /dɪˈlemə/ と /daɪˈlemə/ の2通り

dilemma は第2音節の lem を強く読みます。ただし最初の di の母音は、辞書が二つの読みを並べていて、一通りには決まりません。

辞書 イギリス英語 アメリカ英語
Cambridge Dictionary /daɪˈlem.ə/ / /dɪˈlem.ə/ /dɪˈlem.ə/ / /daɪˈlem.ə/
Cambridge(米語辞典) ― /dɪˈlem·ə/ / /dɑɪ-/
Oxford Learner’s Dictionaries /dɪˈlemə/ / /daɪˈlemə/ /dɪˈlemə/ / /daɪˈlemə/

おもしろいのは並べる順番です。Cambridge Dictionary はイギリス英語で /daɪ/ を先に、アメリカ英語で /dɪ/ を先に置いています。Oxford Learner’s Dictionaries は英米ともに /dɪ/ を先に置いています。

どちらで読んでも辞書に載っている読み方なので、迷ったら /dɪˈlemə/ の側を選んでおけば、英米どちらの辞書でも第一の読みに当たります。カタカナの「ジレンマ」は最初を「ジ」と読むので、/dɪ/ のほうが日本語話者の口にもなじみます。

強勢の位置は共通です。どの辞書も第2音節に強勢記号を置いています。「ジ・レン・マ」と平たく三拍で言うのではなく、真ん中の lem を一段高く長く出すと英語の形になります。

ジレンマの英語 dilemma は数えられる名詞

Cambridge Dictionary は dilemma に [ C ] の印を付けています。数えられる名詞なので、単数なら a dilemma、複数なら dilemmas になります。

実際、辞書の例文には複数形がたくさん出てきます。本当の倫理的ジレンマは複雑で、簡単な答えがない、という Cambridge Dictionary の文や、デジタル時代はジャーナリストに新しい倫理的ジレンマをもたらす、という Oxford Learner’s Dictionaries の文です。

相性のよい形容詞も辞書が並べています。Cambridge Dictionary には moral dilemma(道徳的ジレンマ)、ethical dilemma(倫理的ジレンマ)、agonizing dilemma(身を切るようなジレンマ)が出てきます。Oxford Collocations Dictionary の欄には acute(深刻な)、appalling(ひどい)、big(大きな)が挙がっています。

動詞との組み合わせも二方向です。人が主語なら face(直面する)、create/pose/present somebody with(生む・突きつける)。ジレンマ自身が主語なら arise(生じる)、occur(起きる)、lie(横たわる)です。

抜け出すほうの言い方も辞書にあります。Oxford Collocations Dictionary は決まり文句として a solution to a dilemma(ジレンマの解決策)と a way out of a dilemma(ジレンマからの出口)を挙げています。Cambridge Dictionary が SMART Vocabulary で dilemma を「困難な状況と不快な経験」の話題に分類しているのも納得の並びです。

ジレンマと前置詞|in a dilemma/dilemma over/dilemma between

ジレンマは前置詞の型がはっきりしている語です。Cambridge Dictionary と Oxford Learner’s Dictionaries が示す型を並べると、四つに整理できます。

型 意味 辞書の例文
in a dilemma ジレンマに陥っている They were caught in a real dilemma.
face a dilemma ジレンマに直面する She faces the dilemma of disobeying her father or losing the man she loves.
dilemma over/about ~をめぐるジレンマ There’s a real dilemma about how to respond.
dilemma between A and B AとBのあいだのジレンマ the perennial dilemma between work and family commitments

一つ目の in a dilemma は状態を言う型です。Cambridge Dictionary の例文は、年金基金を別のところへ移そうとすると損をすると感じているので、彼女はジレンマに陥っている、という文です。

二つ目の face a dilemma は、二つの選択肢を of で並べられるのが強みです。父に逆らうか、愛する人を失うか、という二択が of 以下にそのまま入っています。

四つ目の between A and B は、二つの極をはっきり見せたいときの型です。仕事と家庭の責任のあいだにある、いつまでも続くジレンマ、という Oxford Learner’s Dictionaries の例文が分かりやすい形になっています。

ジレンマと paradox の違い、言い換えの quandary と predicament

日本語でも「ジレンマ」と「パラドックス」は並べて語られますが、英英辞典の定義を見ると、困っている当人がいるかどうかで分かれます。

語 Cambridge Dictionary の定義 レベル
dilemma 取りうる二つの異なる行動のあいだで難しい選択をしなければならない状況 B2
paradox 二つの相反する事実や性質を含むために、あり得ないように見える、あるいは理解しにくい状況や言明 C2

dilemma は「選ばなければならない人」がいて初めて成り立ちます。paradox のほうは、誰かが選ぶ必要はなく、言明や状況それ自体が矛盾をはらんでいれば成立します。

Cambridge Dictionary の paradox の例文は、水をたくさん飲むとかえって喉が渇くことがあるのは奇妙な逆説だ、という文です。ここには板挟みも選択もありません。あるのは「同時に成り立たなそうな二つ」だけです。

語源も別の方角です。Online Etymology Dictionary によれば paradox は1530年代で、ギリシャ語 paradoxon(信じがたい言明)から。para-(~に反して)+doxa(意見)で、doxa は dokein(~に見える、思われる)から来ています。「二」ではなく「常識に反する」が芯にある語です。

言い換えの候補も辞書が挙げています。Cambridge Dictionary は同義語として quandary を、Oxford Learner’s Dictionaries は predicament を示しています。Online Etymology Dictionary によれば quandary は1570年代で、語源は不明、古い辞書では発音すら定まっていなかった語です。

ジレンマの兄弟語 trilemma と慣用句 on the horns of a dilemma

選択肢が三つならどうなるのか。Online Etymology Dictionary には trilemma という項があり、1670年代に「三つの条件的前提を持つ三段論法」の意味で現れた、と記されています。のちに「三つのあいだの選択」の意味になりました。作りは dilemma+tri-(三)です。

慣用句のほうも押さえておくと便利です。Oxford Learner’s Dictionaries は on the horns of a dilemma を見出しの熟語として立て、同じくらい不快なものの中から選ばなければならない状況にある、と説明しています。

Online Etymology Dictionary も、二つの選択肢は「ジレンマの角(the horns of a dilemma)」と呼ばれる、と書いています。牛の二本の角のどちらに突かれても痛い、という絵柄です。

Oxford Learner’s Dictionaries の例文は、医学の世界が科学の進歩を求めた結果、科学と道徳のどちらかを不自然に選ばされる板挟みに突き刺さってしまった、という文です。この熟語のレベルは C2 とされていて、本体の dilemma の C1 より一段上に置かれています。

ジレンマを使った英語の例文とよくある間違い

まずは基本の型です。I found myself in a dilemma and really didn’t know what to do for the best.(私はジレンマに陥り、何が一番いいのか本当に分からなかった)。Cambridge Dictionary に載っている形で、in a dilemma がそのまま使えます。

抜け出す話をするなら、I could see no way of resolving this moral dilemma.(この道徳的ジレンマを解く道が見えなかった)。resolve という動詞が dilemma とよく合います。

突きつける側から言うなら、This poses a difficult dilemma for teachers.(これは教師に難しいジレンマを突きつける)。pose を使うと、ジレンマを生む原因のほうを主語に立てられます。

間違いの一つ目は、ただの「悩み」に使ってしまうことです。Online Etymology Dictionary は、二つの選択肢のどちらも本人に不利な状況にだけ使うべきだ、と書いています。選択肢が一つしかない困りごとなら problem や trouble のほうが近くなります。

二つ目は、矛盾した言明を dilemma と呼ぶことです。それは paradox の役目です。どちらを選ぶかを迫られている人がいなければ、dilemma にはなりません。

三つ目は発音で、強く読むのは第2音節の lem です。最初の di は /dɪ/ と /daɪ/ のどちらでも辞書に載っていますが、強勢がそこへ移ることはありません。

ジレンマについてよくある質問

Q. ジレンマと paradox はどう違いますか

選ぶ人がいるかどうかで分かれます。Cambridge Dictionary は dilemma を「取りうる二つの異なる行動のあいだで難しい選択をしなければならない状況」(B2)、paradox を「二つの相反する事実や性質を含むために、あり得ないように見える、あるいは理解しにくい状況や言明」(C2)と定義しています。板挟みになっている当人がいれば dilemma、言明や状況そのものが矛盾していれば paradox です。

Q. dilemma の発音は /dɪ/ と /daɪ/ のどちらですか

どちらも辞書に載っています。Cambridge Dictionary はイギリス英語で /daɪˈlem.ə/ と /dɪˈlem.ə/、アメリカ英語で /dɪˈlem.ə/ と /daɪˈlem.ə/ を並べ、Oxford Learner’s Dictionaries は英米とも /dɪˈlemə/ と /daɪˈlemə/ を並べています。強勢はどの読みでも第2音節です。

Q. ジレンマの言い換えには何がありますか

Cambridge Dictionary は同義語として quandary を挙げ、Oxford Learner’s Dictionaries は predicament を挙げています。Online Etymology Dictionary によれば quandary は1570年代の語で、語源は不明とされています。三つの選択肢のあいだで迷う場合には trilemma という語もあり、こちらは1670年代からあります。

Q. dilemma の語源はいつまでさかのぼれますか

英語では1520年代で、当時は修辞学の用語でした。Online Etymology Dictionary は、後期ラテン語 dilemma を経てギリシャ語 dilemma(二重の命題)から来たとし、di-(二つ)+lemma(前提、取られたもの)に分解しています。lemma はギリシャ語 lambanein(取る)の語根から来ています。いまの「好ましくない二択」の意味が加わったのは1580年代です。

ジレンマのまとめ

ジレンマとは、どちらを選んでも具合の悪い二つの選択肢に挟まれた状態のことです。英語の dilemma は [ C ] の可算名詞で、in a dilemma、face a dilemma、dilemma over/about、dilemma between A and B という型が辞書に並んでいます。

語源はギリシャ語の dilemma(二重の命題)で、di-(二つ)+lemma(前提)に分解できます。1520年代の英語では修辞学の論法の名前で、いまの「好ましくない二択」の意味が加わったのは1580年代です。

発音は第2音節を強く読み、最初の音は /dɪ/ でも /daɪ/ でも辞書に載っています。矛盾した言明を指すなら paradox、選択肢が三つなら trilemma と、隣の語も一緒に覚えておくと、英語で書くときに選び間違えません。

ジレンマの出典

dilemma の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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