ポテンシャルは、まだ表に出ていないけれど、これから発揮されうる力のことです。日本語では「潜在能力」「可能性」と訳されます。
この記事では、ポテンシャルの意味をラテン語の語源からたどり、形容詞としての使い方、物理や電気の分野で使われる意味、英語 potential の発音と使い方までを整理します。日本語では名詞でしか使わないため、英語で読むときにつまずきやすい点を中心に見ていきます。
ポテンシャルとは何か(結論)
ポテンシャルとは、いまはまだ現れていないが、これから現れうる力や性質のことです。実際にそうであることではなく、そうなりうることを指します。
英語の potential には名詞と形容詞の両方があります。名詞は「可能性、素質」、形容詞は「可能性のある、~になりうる」です。日本語のポテンシャルは名詞の用法だけを取り入れています。
語の芯にあるのは「実際にはまだそうではない」という含みです。ほめ言葉として使われることが多い一方で、まだ結果になっていないことを同時に言っている語でもあります。
ポテンシャルの語源は「力」
potential は14世紀後半の英語に現れました。古フランス語の potenciel、中世ラテン語の potentialis を経て、ラテン語の potentia(力、勢い)にさかのぼります。
potentia のもとは potens で、さらにさかのぼると印欧祖語の poti-(力を持つ、主)に行き着きます。この語根は英語の power、possible、potent、そして despot(専制君主)にも残っています。
つまりポテンシャルは、もともと「力」を意味する語でした。潜在という含みは、後から「実際の力」と対にする形で加わったものです。当初の意味は「現実に対する、可能なほう」でした。
ポテンシャルの名詞は19世紀からの用法
potential は長いあいだ形容詞としてだけ使われていました。名詞の「可能性のあるもの」という用法が記録されるのは1817年です。
最初に使ったのは詩人のコールリッジだとされています。形容詞をそのまま名詞に転じさせる用法で、当時としては新しい言い方でした。
この順序は覚えておく価値があります。英語では形容詞のほうが本来の姿で、名詞は後から加わった用法です。日本語が名詞だけを取り入れたことで、順序が逆に見えてしまっています。
ポテンシャルと可能性・素質の違い
日本語には近い訳語が並びます。それぞれ何を指しているのかを分けます。
| 言葉 | 指しているもの | 英語 |
|---|---|---|
| ポテンシャル | これから発揮されうる力 | potential |
| 可能性 | 起こりうること | possibility |
| 素質 | 生まれつき備わった性質 | aptitude |
| 才能 | すでに示されている優れた力 | talent |
possibility は出来事が起こりうることを指し、potential は人や物が持っている力を指します。「雨が降る可能性」は possibility、「彼の可能性」は potential です。ここを混ぜると英語が不自然になります。
ポテンシャルの発音とアクセント
potential の発音は、イギリス英語で /pəˈten.ʃəl/、アメリカ英語で /poʊˈten.ʃəl/ です。強く読むのは二音節目の ten で、ここだけがはっきり鳴ります。
先頭の po は英米で差が出ます。イギリス英語では弱く曖昧な音、アメリカ英語では「ポウ」に近い二重母音です。どちらでも通じますが、両方の形があると知っておくと聞き取りが楽になります。
最後の -tial は「シャル」とひとかたまりで読みます。日本語の「ポテンシャル」は五拍ですが、英語は三音節です。po-TEN-shal と割って、真ん中だけを強く読むのが正しい形です。
ポテンシャルを形容詞として使う
英語では形容詞の用法が非常によく出ます。日本語にこの使い方がないため、読むときの落とし穴になります。
a potential customer は「見込み客」です。まだ買っていないが買うかもしれない人を指します。a potential buyer、a potential employer も同じ作りです。
a potential danger は「起こりうる危険」です。ここで「ポテンシャルのある危険」と読むと意味が通りません。形容詞の potential は「~になりうる」であって、能力の高さを表していないからです。
ポテンシャルを使った英語の例文
力を出し切る例です。She hasn’t achieved her full potential yet.(彼女はまだ持てる力を出し切っていない)。full potential は定番の組み合わせです。
見込みを言う例です。The region has potential for economic development.(その地域には経済発展の見込みがある)。potential for ~ で「~の見込み」となります。
形容詞の例です。We identified three potential risks.(起こりうるリスクを三つ特定した)。名詞の前に置いて「~になりうる」を表す、最も多い使い方です。
ポテンシャルと組み合わせて使う語
名詞の potential は、決まった動詞や前置詞と組んで使われます。並べます。
| 組み合わせ | 意味 | 品詞 |
|---|---|---|
| full potential | 持てる力のすべて | 名詞 |
| potential for ~ | ~の見込み | 名詞 |
| realize one’s potential | 力を発揮する | 名詞 |
| potential customer | 見込み客 | 形容詞 |
realize は「実現する」の意味です。潜在していたものを実際の形にする、という語の構造がそのまま出ています。achieve、fulfil、reach も同じ組み合わせで使えます。
ポテンシャルの物理・電気での意味
potential は理科の用語としても使われます。日常の意味と根はつながっています。
potential energy は位置エネルギーです。高いところにある物が持っている、まだ動きに変わっていないエネルギーを指します。落ちれば運動エネルギーになる。まさに「まだ現れていない力」です。
電気の分野では electric potential が電位を指し、単位はボルトです。二点の電位の差が電圧になります。ここでも「動きうる力の大きさ」という同じ考え方が使われています。
日本語の理科では「位置エネルギー」「電位」と訳し分けているため、同じ語だと気づきにくくなっています。英語ではどちらも potential のひとことで、まだ動きに変わっていない力を表しています。
ポテンシャルという語が持つ含み
ポテンシャルはほめ言葉として使われますが、同時に「まだ結果になっていない」ことも言っています。この二面性が、使いどころを難しくしています。
He has potential. は「見込みがある」ですが、裏を返せば今の実績は評価していない、という含みが残ります。英語では若手や新人について使われることが多く、実績のある人に向けて言うと失礼になる場面があります。
語源に戻ると理由がはっきりします。この語は当初、「現実のもの」と対にして「可能なほう」を指す形容詞でした。現実ではないほう、という位置づけが出発点にある。だから、まだ実現していないという含みが消えません。使うときは相手と場面を選ぶ語だと押さえておくと安全です。
ポテンシャルのよくある間違い
一つ目は、形容詞の用法を知らないことです。a potential problem を「ポテンシャルのある問題」と読むと意味が反対になります。「起こりうる問題」です。
二つ目は、possibility との混同です。出来事が起こりうることは possibility、人や物が持つ力は potential です。「彼にはポテンシャルがある」を He has possibility. とは言えません。
三つ目は、綴りです。真ん中は ten で、potent(強力な)と同じ並びです。potencial と書き間違える例が多いので、po-ten-tial と三つに割って覚えると安全です。
ポテンシャルについてよくある質問
和製英語ではありません。英語の potential をそのまま取り入れた語です。ただし日本語では名詞の用法しか使われず、英語で頻出する形容詞の用法が抜けています。
possibility は出来事が起こりうることを指し、potential は人や物が持っている、まだ発揮されていない力を指します。前者は事象、後者は能力についての語です。
「見込み客」です。まだ買っていないが買う可能性のある人を指します。形容詞の potential は「~になりうる」を表し、能力の高さを表しているわけではありません。
本当です。どちらもラテン語の potens、さらに印欧祖語の poti-(力を持つ)に由来します。possible や potent も同じ語根から出た語です。
ポテンシャルのまとめ
ポテンシャルとは、まだ現れていないが発揮されうる力のことです。ラテン語の potentia(力)に由来し、14世紀後半の英語では形容詞として使われていました。
名詞の用法が加わったのは1817年です。英語では形容詞の用法が頻出し、a potential customer のように「~になりうる」を表します。名詞だけで覚えていると読み違えるので、両方の形を押さえておくことが重要です。
ポテンシャルの出典
potential の定義・語源・発音は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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