命令文とは、相手に「〜しなさい」「〜してください」と行動を促す文のことです。英語では動詞の原形で文を始め、主語を置かないのが基本の形になります。
この記事では、命令文の作り方と否定の形、Let’s を使った言い方、そして直接すぎる響きをやわらげて丁寧に言い換える方法までを順に整理します。命令文は形そのものは簡単ですが、使いどころを外すと相手に強く当たってしまう文型です。形と同じ量だけ、語調の調整の仕方に紙面を割いています。
命令文とは何か(結論)
命令文とは、相手に何かをするよう伝えるための文です。命令だけでなく、指示・依頼・助言・提案も同じ形で表します。
英語の主節は大きく四つに分けられます。事実を述べる平叙文、たずねる疑問文、行動を促す命令文、驚きを表す感嘆文です。命令文はこのうち、聞き手に動いてもらうことを目的とした型にあたります。
日本語の「命令」という訳語のせいで、上から言いつける文だと思われがちです。しかし実際には、料理のレシピや道案内、機械の操作手順といった、まったく威圧的でない場面でも中心的に使われています。命令文が担っているのは「相手に動いてもらう」という働き全般だと考えたほうが実態に近くなります。
命令文の作り方は動詞の原形から始める
命令文の作り方は一つだけです。動詞の原形を文頭に置き、そのうしろに目的語や修飾語を続けます。時制の変化も三単現の s も付きません。
Open the window.(窓を開けて)、Sit down.(座って)、Turn right at the corner.(角を右に曲がって)。どれも動詞が原形のまま先頭に出ています。語順は「動詞+そのほか」で固定され、平叙文のように主語を探す必要がありません。
be動詞の場合も原形を使うので、are や is ではなく be になります。Be quiet.(静かにして)、Be careful.(気をつけて)といった形です。ここは am/are/is しか見慣れていないとつまずきやすいところなので、原形は be だと覚えておくと迷いません。
命令文に主語がないのはなぜか
命令文に主語が書かれないのは、主語が目の前の相手に決まっているからです。言わなくても伝わるので省かれています。
英語では、平叙文と疑問文には主語が必要だという原則があります。命令文はその原則の外に置かれた例外で、聞き手が動作をする人だと話し手も聞き手も分かっているため、あらためて you を置きません。
ただし強調したいときには、あえて主語を置くことができます。You wait here.(あなたはここで待っていて)のように you を残すと、ほかの人ではなくあなただ、という指名の色が濃くなります。somebody や everybody を置く形もあり、Somebody open the door.(誰か扉を開けて)、Everybody sit down.(みなさん座ってください)のように、話しことばでよく現れます。
なお、Daddy, help me.(パパ、助けて)の Daddy のような呼びかけの語は、見た目が主語に似ていますが主語ではありません。呼びかけは相手の注意を引くための独立した要素で、命令文の構造の外にあります。
命令文の否定は Don’t +動詞の原形で作る
命令文の否定の形は、文頭に Don’t を置き、そのうしろに動詞の原形を続けます。Don’t run.(走らないで)、Don’t be shy.(恥ずかしがらないで)が基本形です。
正式には「do+not+to のない不定詞」という組み立てで、短縮しない Do not はかたい響きになります。掲示や注意書き、規則の文言では Do not のまま書かれることが多く、会話では Don’t が普通です。同じ内容でも、短縮するかどうかで文書の格式が変わります。
be動詞のときも Don’t be の形になる点に注意が必要です。Be not とは言いません。また、否定の命令文にも主語を差し込めます。Don’t you worry.(心配しないで)のように、you は don’t のうしろに入ります。anybody を使う場合も同じ位置で、Don’t anybody touch it.(誰も触らないで)という並びになります。
命令文の Let’s の使い方
Let’s は、自分を含めた「私たち」に向けた命令文を作る言い方です。let を使うことで、二人称以外にも命令文の形を広げられます。
Let’s go.(行きましょう)、Let’s take a break.(休憩しましょう)のように、うしろは動詞の原形です。日本語では「〜しよう」「〜しましょう」と訳され、勧誘の表現として紹介されることが多い形です。文法的な位置づけとしては一人称の命令文にあたります。
改まった場面では、短縮しない let us が使われます。会議の冒頭や式辞のように、書かれた原稿を読み上げる状況で現れる形です。会話でこの形を使うと、ややもったいぶった響きになります。また Let me see.(ええと)のように、let の直後が me になると、自分ひとりに向けた独り言に近い意味になります。
Let’s の否定は Let’s not です。Let’s not talk about it now.(今その話はやめておきましょう)のように、not は let’s の直後に入ります。うしろに him や her を置くと三人称の命令文になりますが、こちらは日常であまり多くありません。
命令文を丁寧に言い換える方法
命令文はきわめて直接的な形です。依頼として使うときは、そのまま出さずに助動詞の疑問文へ置き換えるのが最も安全な方法になります。
Can you 〜? は気軽な頼み方、Could you 〜? はそれより一段ていねいな頼み方です。Would you 〜? も同じくらい丁寧で、Would you mind 〜ing? まで来るとかなり配慮のある言い方になります。May I 〜? は自分が何かをする許可を求める形で、改まった場面に向いています。
命令文のまま使う場合は、please を添えると角が取れます。位置は文頭でも文末でもよく、文末に置くときは Open the window, please. のようにカンマで区切ります。ただし please は万能ではありません。急ぎの指示に付けても、指示であることは変わらない点は押さえておく必要があります。
書面ではさらに間接的な形が選ばれます。I would be grateful if you could 〜 のような言い回しは、依頼の中身を条件節に押し込むことで、直接の命令から二段階遠ざけた形です。かたい問い合わせメールで定型的に使われます。
命令文に付加疑問をつけて和らげる
命令文の末尾に短い疑問の形を足すと、言い切りの調子がゆるみます。命令から確認へ寄せる働きです。
Close the door, will you?(ドアを閉めてくれる?)のように、will you を付けるのが最も一般的です。can you を使うこともでき、Pass me the salt, can you? のような形になります。どちらも、相手の意向をたずねる形をかぶせることで、一方的な指示に見えないようにしています。
won’t you を使うと、和らげるというより押しが強まります。誘いかけの色が濃くなり、来てほしいという気持ちが前に出ます。一方、否定の命令文に付ける場合は will you が定型です。Don’t tell anyone, will you?(誰にも言わないでね)のように、否定文でも won’t ではなく will のままになります。
命令文を強める do の使い方
命令文の前に do を置くと、意味が強調されます。ただし強い命令になるのではなく、むしろ改まった丁寧さが加わります。
Do sit down.(どうぞおかけください)、Do come in.(さあお入りください)のような形です。動詞の原形の前に do を足すだけで、勧める気持ちが前面に出ます。日本語の「ぜひ」「どうぞ」に近い働きだと考えると使い分けやすくなります。
この do は、否定の Don’t に使う do とは働きが違います。否定の do は文法上どうしても必要な要素ですが、強調の do は無くても文が成立します。あってもなくても意味は通り、あると語気が加わる。ここが両者の分かれ目です。Do let’s start.(さあ始めましょう)のように、let’s と組み合わせた形も改まった場面で見られます。
命令文と平叙文・疑問文・感嘆文の違い
四つの文の型は、話し手が何をしようとしているかで分かれます。命令文はそのうち「動いてもらう」ための型です。
| 文の型 | 働き | 語順の特徴 | 例 |
|---|---|---|---|
| 平叙文 | 事実を述べる | 主語+動詞 | You open the window. |
| 疑問文 | たずねる | 助動詞+主語+動詞 | Do you open the window? |
| 命令文 | 行動を促す | 動詞の原形から始める | Open the window. |
| 感嘆文 | 驚きを表す | What / How から始める | How cold it is! |
この表で目を引くのは、命令文だけが主語を持たない点です。ほかの三つはいずれも主語を必要とします。主語が無いという一点で、命令文は見た目からすぐ判別できます。
命令文にあたる英語 imperative の語源
命令文を英語では imperative sentence、命令形は the imperative と呼びます。この imperative は「命じる」という意味のラテン語にさかのぼる語です。
形容詞の imperative は1520年代の英語に文法用語として現れ、後期ラテン語の imperativus を経て、ラテン語の imperare(命じる、徴発する)に由来します。imperare は in-(〜へ)と parare(準備する、整える)が結び付いた語で、さらにさかのぼると「生み出す、手に入れる」を表す印欧祖語の語根にたどり着きます。
同じ imperare から出た語に imperator があります。ローマで軍を率いる者を指した語で、英語の emperor(皇帝)や empire(帝国)はこの系統から生まれています。命令文の imperative と皇帝の emperor が親戚だと知ると、この語が持つ「上から命じる」という重みが腑に落ちます。名詞の imperative が文法用語として記録されるのは15世紀半ばで、哲学の用語として使われ始めるのは1796年です。
命令文のよくある間違い
つまずきやすい点は三つに絞れます。原形、否定、そして使いどころです。
一つ目は、be動詞を原形にし忘れる間違いです。Are quiet. とは言えません。Be quiet. が正しい形で、命令文では be動詞も必ず原形になります。
二つ目は、否定に not だけを使ってしまう間違いです。Not run. や Be not late. は成立しません。Don’t run.、Don’t be late. のように、否定には Don’t が要ります。
三つ目は、命令文をそのまま依頼に使ってしまうことです。文法的には正しくても、相手には強い調子に響きます。頼みごとの場面では Could you 〜? に置き換えるか、少なくとも please を添えるのが無難です。教科書で最初に習う形だからといって、実際の会話でそのまま多用してよい形ではありません。
命令文についてよくある質問
書いてはいけないわけではありません。ふつうは省きますが、強調したいときは You stay here. のように you を置けます。ただし指名する響きが強くなるため、使いどころは選んだほうが安全です。
入ります。let を使って作る一人称の命令文という位置づけです。日本語では「〜しましょう」と訳されるため勧誘表現として覚えられがちですが、文法上は命令文の一種として整理されています。
ある程度は和らぎますが、命令文であること自体は変わりません。より丁寧にしたいときは Could you 〜? や Would you mind 〜ing? のように、助動詞の疑問文へ形ごと置き換えるほうが効果があります。
会話では Don’t が普通です。短縮しない Do not はかたい響きになるため、掲示や注意書き、規則の文言など、書かれた文で選ばれます。意味は同じで、格式の差だけがあります。
命令文のまとめ
命令文とは、相手に行動を促す文の型です。動詞の原形で始め、主語を置かないのが基本形で、be動詞のときも be の形になります。否定は Don’t +動詞の原形で作り、Do not と書けば改まった調子になります。
Let’s は自分を含めた一人称の命令文で、否定は Let’s not です。強調の do を前に置くと、命令が強まるのではなく丁寧な勧めになります。命令文はきわめて直接的な形なので、依頼として使う場面では Could you 〜? や Would you mind 〜ing? に置き換えるか、付加疑問や please を添えて調子をゆるめるのが実用的な使い方です。
命令文の出典
命令文の形・否定形・let’s の用法・依頼への言い換え、および imperative の語義と語源は以下の英英辞典・文法解説・語源辞典で確認しました。

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