仮定法は、事実と違うことや、起こりそうにないことを述べるための形です。時制をひとつ過去へずらして表すのが特徴で、英語では subjunctive と呼ばれます。
この記事では、仮定法とは何かという定義から始めて、仮定法過去と仮定法過去完了の形、直説法との違い、I wish や as if の使い方まで順に整理します。
仮定法とは何か(結論)
仮定法とは、事実に反することや、実現の見込みが薄いことを述べるときに使う動詞の形のことです。時制をひとつ前へずらすことで、現実からの距離を表します。
If I were rich, I would buy a house. は「金持ちではない」という現実を前提にした言い方です。過去形の were を使っていますが、話しているのは今のことです。
この「時制をずらすことで現実から離す」という発想が仮定法の中心にあります。過去形は過去を表すためではなく、距離を表すために使われています。
仮定法と直説法の違い
同じ if でも、実際に起こりうることを述べる場合は仮定法にしません。この区別ができると使い分けが安定します。
| 種類 | 前提 | 形 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 直説法(現実の条件) | 起こりうる | If + 現在形, will + 原形 | If it rains, I will stay home. |
| 仮定法過去 | 今の事実と反対 | If + 過去形, would + 原形 | If I had time, I would go. |
| 仮定法過去完了 | 過去の事実と反対 | If + had + 過去分詞, would have + 過去分詞 | If I had known, I would have told you. |
明日雨が降るかもしれないという話は現実にありうるので直説法です。自分が鳥だったらという話は現実にありえないので仮定法になります。
仮定法過去の形と使い方
仮定法過去は、今の事実と反対のことを述べる形です。if 節を過去形にし、主節に would、could、might のいずれかと原形を置きます。
If I spoke French, I could work in Paris.(フランス語が話せたらパリで働けるのに)が典型です。実際には話せない、という前提が言外に含まれます。
be動詞は主語にかかわらず were を使うのが伝統的な形です。If I were you, I would apologize.(私があなたなら謝る)は決まり文句としてよく使われます。会話では was も使われますが、この I were you だけは were が定着しています。
仮定法過去完了の形と使い方
仮定法過去完了は、過去の事実と反対のことを述べる形です。if 節を had + 過去分詞にし、主節に would have + 過去分詞を置きます。
If I had left earlier, I would have caught the train.(もっと早く出ていたら電車に間に合っただろう)が典型です。実際には早く出ず、間に合わなかったという事実があります。
後悔や批判を述べるときによく使われる形です。You could have told me.(言ってくれてもよかったのに)のように、if 節を省いて主節だけで使うこともあります。
仮定法の混合型
if 節が過去のこと、主節が今のこと、というように時がずれる場合があります。これを混合型と呼びます。
If I had studied medicine, I would be a doctor now.(医学を学んでいたら今ごろ医者だろう)が例です。学ばなかったのは過去、医者でないのは今の話なので、二つの形を組み合わせます。
形は、if 節が仮定法過去完了、主節が仮定法過去になります。時を表す語(now、today)が主節に入っていることが目印です。
仮定法の I wish の使い方
I wish は、現実がそうでないことへの残念な気持ちを表します。うしろの時制のずらし方は if 節と同じ考え方です。
| 形 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| I wish + 過去形 | 今〜であればよいのに | I wish I had more time. |
| I wish + had + 過去分詞 | あのとき〜だったらよかったのに | I wish I had studied harder. |
| I wish + would + 原形 | 〜してくれたらいいのに(いらだち) | I wish it would stop raining. |
I hope との違いに注意します。I hope は実現しうることへの期待で、うしろは普通の現在形や未来形です。I hope you can come. と I wish you could come. では前提がまったく違います。
仮定法の as if の使い方
as if と as though は「まるで〜のように」という意味で、事実と違う様子を述べるときに仮定法を伴います。
He talks as if he knew everything.(彼はまるで何でも知っているかのように話す)では、実際には知らないという含みがあります。同じ時のことなら過去形にします。
主節より前のことなら had + 過去分詞にします。She looked as if she had seen a ghost.(幽霊でも見たような顔をしていた)という形です。
仮定法で if を使わない言い方
仮定の意味は if がなくても表せます。書き言葉や決まった表現では、こちらの形もよく現れます。
| 表現 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| without | 〜がなければ | Without water, we could not live. |
| but for | 〜がなかったら | But for your help, I would have failed. |
| otherwise | そうでなければ | I was busy; otherwise I would have come. |
| 倒置(if の省略) | もし〜なら | Were I you, I would refuse. |
| to 不定詞 | 〜するとしたら | To hear him talk, you would think he is an expert. |
倒置の形は、if を省いて were、had、should を主語の前に出します。Had I known, I would have helped. は If I had known と同じ意味で、書き言葉でよく使われます。
仮定法を使った例文
今の事実と反対の例です。If I had a car, I would drive you home.(車があれば家まで送るのに)。If she were here, she would know what to do.(彼女がここにいれば、どうすべきか分かるだろう)。
過去の事実と反対の例です。If we had booked earlier, we would have got better seats.(もっと早く予約していたら、よい席が取れただろう)。
wish と as if の例です。I wish I could speak Chinese.(中国語が話せたらいいのに)。He acted as if nothing had happened.(彼は何事もなかったかのようにふるまった)。
仮定法のよくある間違い
一つ目は、if 節に would を入れる間違いです。If I would have time は誤りで、If I had time が正しい形です。would は主節側に置きます。
二つ目は、実現しうる話まで仮定法にする間違いです。明日の天気の話に If it rained, I would stay home. を使うと、雨は降らないだろうという含みが出てしまいます。
三つ目は、時のずらし方の取り違えです。過去のことなのに If I knew と言うと今の話になります。過去なら If I had known にします。
仮定法の覚え方のコツ
最初に押さえるのは、時制をひとつ前へずらすという一点です。今のことなら過去形、過去のことなら過去完了。この対応さえ覚えれば、細かい分類は後からついてきます。
次に、主節に would、could、might が入ることを型として覚えます。if 節と主節で使うものが違うため、両方に would を置かないという点だけ意識します。
最後に、実際に使う場面から入るのが近道です。If I were you(私ならこうする)、I wish I could(できたらいいのに)、I would have(〜していただろう)の三つは日常でよく出てくるので、丸ごと口に出して慣らしておくと実際の会話で生きてきます。
仮定法についてよくある質問
伝統的な文法では主語にかかわらず were を使います。会話では If I was のように was も広く使われており、誤りとはされません。ただし If I were you だけは were がほぼ固定です。
今、または未来のことです。形は過去形ですが、内容は現在の事実と反対のことを述べています。過去の事実と反対のことを言いたい場合は仮定法過去完了を使います。
可能性が低いことを表すときに if 節で使います。If you should need help, call me.(万一助けが必要なら電話してください)の形です。倒置して Should you need help, call me. とも書けます。
よく使います。If I were you、I wish I could、I would have done it のような形は日常会話に頻繁に出てきます。丁寧な依頼の Could you 〜? や Would you mind 〜? も、距離を取るという同じ発想から来ています。
仮定法のまとめ
仮定法とは、事実と反対のことや実現しにくいことを述べるために、時制をひとつ前へずらす形です。今のことなら仮定法過去、過去のことなら仮定法過去完了を使います。
if 節と主節で使う形が違い、would や could は主節側に置きます。実際に起こりうる条件は仮定法にせず直説法で表します。I wish、as if、without、but for、倒置といった形も同じ発想の上に乗っているため、時制のずらし方さえ掴めば全体が一本の線でつながります。
仮定法の出典・参考にした辞書
英語の subjunctive および conditional の定義・用法は以下の英英辞典で確認しました。

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