リテラシーは、もともと読み書きができる能力を指す言葉です。今では「情報リテラシー」「金融リテラシー」のように、ある分野を正しく読み解いて使いこなす力という意味でも広く使われています。
この記事では、リテラシーの意味を語源からたどり、スキルや知識との違い、英語の literacy がどこまで同じ広がりを持っているのか、発音までを整理します。「情報リテラシーは和製英語ではないか」という疑問にも答えます。
リテラシーとは何か(結論)
リテラシーとは、文字を読んで書ける力のことです。これが土台の意味で、そこから広がって「ある分野の情報を読み解き、判断に使える力」という意味でも使われるようになりました。
単なる知識とは違います。知識は覚えている中身、リテラシーはその中身を使って目の前のものを読み解く力です。用語をたくさん知っていても、目の前の記事が信用できるか判断できなければ、リテラシーがあるとは言えません。
日本語では後者の広い意味で使われることが増えました。「リテラシーが低い」という言い方は、知識が無いことではなく、扱い方が身についていないことを指しています。批判として使われる場面が多いのはこのためです。
リテラシーの語源
literacy は「読み書きができること」という意味で1883年に記録されている、比較的新しい語です。形容詞の literate に、状態を表す語尾 -cy が付いて作られました。
その literate は、ラテン語の littera(文字)から来ています。同じ語からできた英語に literature(文学)、literal(文字どおりの)、letter(文字・手紙)があります。どれも文字にまつわる語です。
おもしろいのは、反対語の illiteracy のほうが古いことです。こちらは17世紀までさかのぼります。読み書きができないことのほうが先に問題として名前を与えられ、できることを表す語は後から作られました。
リテラシーの二つの意味
辞書には二つの語義が並んでいます。一つ目は「読み書きができる能力」。二つ目は「ある分野の知識、あるいはある種類の知識」です。日本語で使われる広い意味は、この二つ目にあたります。
一つ目の意味では、社会全体の状態を表す使い方が中心です。adult literacy(成人の識字)、literacy rate(識字率)のように、教育の話題で出てきます。国の発展を測る指標としても使われます。
二つ目の意味では、分野名を前に付けます。computer literacy、media literacy、financial literacy。どれも英語の辞書に載っている、あるいは英語圏で普通に使われる言い方です。日本語の「情報リテラシー」も、この作り方をなぞったものです。
情報リテラシーは和製英語か
和製英語ではありません。英語にも information literacy という語があり、図書館学や教育の分野で使われています。日本語で作られた造語ではなく、英語の言い方をそのまま取り入れたものです。
辞書にも computer literacy が例として載っています。Computer literacy is becoming as essential as the ability to drive a car.(コンピュータを扱う力は、車を運転する力と同じくらい欠かせないものになりつつある)という例文が出ています。
つまり「分野名 + literacy」という組み立て方そのものが英語のものです。日本語で新しく「◯◯リテラシー」を作っても、その分野名が英語で通じるなら、英語としても意味が伝わる可能性が高いということになります。
リテラシーとスキル・知識の違い
近い言葉と並べると、リテラシーが何を指しているのかがはっきりします。
| 言葉 | 指しているもの | 例 |
|---|---|---|
| リテラシー | 読み解いて判断に使う力 | その記事が偏っていると気づける |
| 知識 | 覚えている中身 | 用語の意味を言える |
| スキル | 訓練で身につけた技能 | 表計算ソフトを操作できる |
| 教養 | 広く身についた素養 | 分野をまたいで話ができる |
スキルとの違いが特にわかりにくい部分です。スキルは「できる/できない」で測れる操作の力、リテラシーは「読み解けるかどうか」という判断の力です。ソフトを使えることはスキル、そのデータが信用できるか見抜けることがリテラシーです。
リテラシーの発音とアクセント
literacy の発音は、英で /ˈlɪt.ər.ə.si/、米で /ˈlɪt̬.ɚ.ə.si/ です。強く読むのは先頭の li の部分で、カタカナで書くなら「リテラスィ」と最初に山が来ます。
日本語の「リテラシー」との差は三つあります。一つ目は最後を「シー」と伸ばさず、短く「スィ」と切ること。二つ目は真ん中の te が弱くなること。三つ目は米語では t が「ラ行」に近い音になることです。
米語で「リラスィ」のように聞こえるのは、この三つ目のためです。母音にはさまれた t が弱まる現象で、water や better でも同じことが起きます。この一つの規則を知っておくと、聞き取れる語が一気に増えます。
リテラシーの派生語と関連語
literacy の語族はまとまりがよく、形を並べると意味の関係が見えます。
| 形 | 品詞 | 意味 |
|---|---|---|
| literate | 形容詞 | 読み書きができる |
| literacy | 名詞 | 読み書きができること |
| illiterate | 形容詞 | 読み書きができない |
| illiteracy | 名詞 | 読み書きができないこと |
| literal | 形容詞 | 文字どおりの |
頭に付く il- は否定を表す部品です。l で始まる語に付くときは in- が il- に変わります。同じ規則で作られた語に illegal(違法な)、illogical(論理に合わない)があります。
リテラシーを使った英語の例文
教育の文脈での例です。Far more resources are needed to improve adult literacy.(成人の識字を高めるには、はるかに多くの資源が必要だ)。improve literacy で「識字を高める」となります。
数字で表す例です。The country has a literacy rate of almost 98%.(その国の識字率は98パーセント近い)。literacy rate は国際比較でよく出てくる決まった言い方です。
広い意味での例です。She was actively involved in programs to increase adult literacy.(彼女は成人の識字を高める活動に積極的に関わっていた)。program to increase literacy のように、目的を表す形で使われます。
日本でリテラシーが広まった背景
この語が日本で広く使われるようになったのは、扱う情報の量が急に増えた時期と重なります。何を信じるかを自分で選ばなければならなくなり、その判断の力に名前が必要になったからです。
その結果、日本語のリテラシーは「読み書き」よりも「見抜く力」の意味が前に出ました。識字率の話で使われることは少なく、情報の真偽を判断する文脈で使われることのほうが多くなっています。
ただし英語では、今も土台の意味が強く残っています。英語で literacy とだけ言えば、まず読み書きの話だと受け取られます。広い意味で使いたいときは、必ず分野名を前に添えるのが安全です。
リテラシーのよくある間違い
一つ目は、英語で literacy を単独で「判断力」の意味に使うことです。分野名が無いと読み書きの話に受け取られるため、media literacy のように前を補います。
二つ目は、人を指して「あの人はリテラシーだ」のように使うことです。literacy は状態を表す名詞なので、人には形容詞の literate を使います。He is computer literate. が正しい形です。
三つ目は、リテラシーが低いという言い方を人格の評価に使うことです。もとは身につけているかどうかの話であって、能力の優劣を決める語ではありません。日本語で使うときも、この線を越えないほうが誤解を招きません。
リテラシーについてよくある質問
識字率は literacy rate にあたる語で、リテラシーを社会全体で数字にしたものです。リテラシーは個人が持つ力そのもの、識字率はそれを集団で測った割合という関係になります。
IT literacy でも通じますが、英語圏では computer literacy や digital literacy のほうがよく使われます。IT という略語の使われ方が英語と日本語で少し違うため、迷ったら digital literacy が無難です。
基本は数えない名詞です。a literacy や literacies という形は通常使いません。種類を並べたいときは different types of literacy のように言い換えます。
語源は同じで、どちらもラテン語の littera(文字)から来ています。ただし意味は分かれていて、literal は「文字どおりの」という意味です。同じ根から出た別の枝だと考えるとよいでしょう。
リテラシーのまとめ
リテラシーとは、文字を読んで書ける力のことです。ラテン語の littera(文字)に由来し、1883年に英語で記録された比較的新しい語で、反対語の illiteracy のほうが先にありました。
そこから広がって、分野名を前に付けて「その分野を読み解く力」を表すようになりました。この作り方は英語のもので、情報リテラシーも和製英語ではありません。発音は先頭を強く、語尾は伸ばさず短く切る。ここを直すだけで通りがよくなります。
リテラシーの出典
literacy の定義・語源・発音は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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