コミットは、ある目標や約束に自分を強く結びつけることを指す言葉です。「結果にコミットする」という広告の言い回しで一気に広まり、今では会議でも「そこはコミットします」という形で使われます。
この記事では、コミットの意味をラテン語の語源からたどり、英語の commit が持つもう一つの顔、コミットメントとの違い、開発現場での使い方、発音までを整理します。英語で使うときに必ず必要になる前置詞にも触れます。
コミットとは何か(結論)
コミットとは、自分の時間や労力や名前を差し出して、ある目標や約束から降りられない状態に自分を置くことです。ただの意思表明ではなく、退路を断つ含みがあります。
「やる気がある」との違いはここにあります。やる気は気持ちの話ですが、コミットは行動と責任の話です。うまくいかなかったときに責任を引き受ける立場に立つ、というところまで含みます。
日本語では「結果にコミットする」という形が定着し、成果に責任を持つという意味で使われています。英語の commit to a goal とほぼ同じ発想で、この使い方に無理はありません。
コミットの語源
commit は14世紀後半の英語に入った語で、当初は「任せる、預ける」という意味でした。ラテン語の committere にさかのぼり、これは com(一緒に)と mittere(送る、放つ)を合わせた形です。
もとの意味は「一緒に送る、結びつける」でした。何かを誰かの手に送り渡す、という発想です。ここから「預ける」「任せる」という意味が出て、さらに「自分自身を差し出す」という意味へ広がりました。
同じ mittere から来た語に、mission(送られた任務)、transmit(送り渡す)、submit(下へ送る=提出する)、permit(通すことを許す)があります。この部品を知っておくと、com-mit が「一緒に送る」だと見えてきます。
英語のコミットが持つもう一つの意味
英語の commit には、日本語のコミットにはほとんど無い意味があります。悪いことをする、罪を犯す、という意味です。むしろ英語ではこちらのほうが日常的に出てきます。
He was sent to prison for a crime that he didn’t commit.(彼はやってもいない罪で刑務所に送られた)のように使われます。commit a crime、commit murder、commit fraud。どれも犯罪を「行う」という意味です。
この意味は、ラテン語の時代からありました。日本語のコミットが前向きな場面でしか使われないのとは対照的です。英語で I committed. とだけ言うと文脈によっては誤解を招くため、後ろに続く語まで含めて言い切る必要があります。
コミットに必要な前置詞
日本語では「コミットする」で完結しますが、英語では後ろに何を続けるかで形が変わります。ここが最もつまずきやすい部分です。
| 形 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| commit to 〜 | 〜に本気で取り組む | commit to the project |
| commit yourself to 〜 | 自分を〜に捧げる | commit yourself to a plan |
| commit + 罪名 | (罪を)犯す | commit a crime |
| be committed to 〜 | 〜に本気である | be committed to improving |
to の後ろには名詞か動名詞が来ます。commit to improve ではなく commit to improving です。この to は不定詞の to ではなく前置詞なので、動詞を続けるときは ing の形になります。ここは間違いが特に多い場所です。
ビジネスで使うコミットの意味
仕事の場面でコミットと言えば、目標や納期に責任を持つことを指します。「この数字にコミットします」と言えば、達成できなかったときの責任も自分が負うという表明になります。
英語でも同じ使い方があります。The government must commit itself to improving healthcare.(政府は医療の改善に本気で取り組まなければならない)。組織が主語のときは commit itself to の形がよく使われます。
なお、意見を明らかにするという意味もあります。commit yourself を否定形で使うと「態度をはっきりさせない」という意味になり、He refused to commit himself. で「彼は言質を与えなかった」となります。
開発現場で使うコミットの意味
ソフトウェア開発でコミットと言えば、変更を記録として確定させる操作を指します。書きかけの状態を、履歴に残る一つの区切りとして登録する、という意味です。
この使い方も、もとの語義から外れていません。「送り渡して確定させる」という中心の意味が、そのまま記録の確定に当てはまっています。データベースの分野でも、処理を確定させることを commit と呼びます。
名詞としても使われ、「コミットを一つ積む」のように数えられます。英語の commit は本来は動詞ですが、この分野では名詞としても定着しました。分野の中で生まれた新しい使い方です。
コミットとコミットメントの違い
コミットが動作、コミットメントがその結果として生まれる状態や約束そのものを指します。動詞と名詞の関係ですが、日本語では両方カタカナで使われるため混ざりがちです。
| 語 | 品詞 | 指しているもの |
|---|---|---|
| commit | 動詞 | 身を投じる動作 |
| commitment | 名詞 | 約束・献身・引き受けた責務 |
| committed | 形容詞 | 本気で取り組んでいる状態 |
| committee | 名詞 | 委員会(任された人の集まり) |
committee が同じ語族なのは意外に思えますが、「任された人たち」という成り立ちです。commit の「任せる」という古い意味が、この語には残っています。
コミットの発音とアクセント
commit の発音は、英米ともに /kəˈmɪt/ です。強く読むのは後ろの mit の部分で、カタカナで書くなら「カミット」と後ろに山が来ます。
日本語の「コミット」は先頭の「コ」を強く読みがちですが、英語では逆です。先頭の com は口をほとんど開かない曖昧な音で、軽く「カ」と流します。ここを直すだけで通りがよくなります。
語尾の t は、はっきり「ト」と母音を付けません。舌を歯ぐきに当てて息を止めるだけです。commitment /kəˈmɪt.mənt/ も同じく mit を強く読みます。派生語になっても強く読む場所は動きません。
コミットを使った英語の例文
取り組みを表す例です。I suggest that you take legal advice before committing yourself to a course of action.(方針を決めてしまう前に、法律の助言を受けることをすすめる)。commit yourself to の形です。
組織が主語の例です。The government must commit itself to improving healthcare.(政府は医療の改善に本気で取り組まなければならない)。to の後ろが improving と ing になっている点を確かめてください。
罪の意味での例です。He was sent to prison for a crime that he didn’t commit.(彼は犯していない罪で刑務所に送られた)。同じ動詞が、日本語では正反対の場面に見える二つの意味を持っています。
コミットのよくある間違い
一つ目は、commit to の後ろに動詞の原形を置くことです。to が前置詞なので、続くのは動名詞です。commit to increase sales ではなく commit to increasing sales とします。
二つ目は、目的語を落とすことです。英語の commit は他動詞として使われるのが基本で、何に取り組むのかを言わないと文が完成しません。近年は目的語を省く言い方も出てきていますが、書き言葉では避けるほうが無難です。
三つ目は、軽い意思表明に使うことです。英語の commit には退路を断つ響きがあるため、「ちょっとやってみます」の意味で使うと重すぎます。その場合は I’ll try や I’ll look into it を選びます。
コミットについてよくある質問
動作を言うならコミット、約束や責務そのものを指すならコミットメントです。「彼は本気で取り組んでいる」なら committed、「彼には約束がある」なら commitment を選びます。
和製英語ではありません。英語の commit がそのまま使われています。ただし英語には「罪を犯す」という意味もあり、日本語ではその面が使われないという違いがあります。
commit to results や be committed to delivering results と言えます。より自然に伝えたいなら、We take responsibility for the results. のように responsibility を使う言い方もあります。
promise は言葉での約束、commit は行動と資源を伴う関与です。約束しただけなら promise、時間や人や予算を実際に投じるなら commit を選びます。重みが違います。
コミットのまとめ
コミットとは、自分を目標や約束に強く結びつけ、退路を断つことです。ラテン語の「一緒に送る」に由来し、mission や submit と同じ語族に属します。
英語では「罪を犯す」という意味も日常的に使われ、取り組みの意味で使うときは to や yourself といった相棒が必要になります。to の後ろは動名詞。発音は後ろの mit を強く読む。この二点を押さえておけば形を間違えません。
コミットの出典
commit の定義・語源・発音は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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