レガシーとは、過去から今に残っているもののことです。英語の legacy をそのままカタカナにした語で、亡くなった人から受け取る財産、歴史が残した良いものと悪いもの、そして「まだ動いてはいるが世代の古い仕組み」という三つの顔を持っています。
この記事では、レガシーの意味を英英辞典の語義ごとに分け、ラテン語 legare(使者に任じる、遺言で贈る)までさかのぼる語源、heritage との線引き、辞書が示す発音と複数形、レガシーシステムやレガシーメディアという形容詞の用法までを整理します。日本語では「時代遅れ」という響きだけが強く出ていますが、英語の legacy にはそれとは正反対の顔もあるので、辞書の立てている語義を一度そろえておきます。
レガシーとは何か(結論)
レガシーとは、過去の出来事や人が残していったもののことです。英語の legacy は名詞と形容詞の両方で使われ、名詞なら「遺産」、形容詞なら「旧世代の」という具合に、品詞が変わると語感まで変わります。
Cambridge Dictionary は名詞 legacy に二つの語義を立てており、どちらも C2 の印が付いています。ひとつは、誰かが亡くなったあとにその人から受け取るお金や財産。もうひとつは、自分の歴史の一部であるもの、あるいは以前の時代から残っているものです。
後者の例文が、この語の幅をよく表しています。ギリシャ人は豊かな文学のレガシーを持っている、戦争は憎しみのレガシーを残した、という二つが同じ語義の下に並んでいます。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じ二本立てで、二つめを「過去に起きた出来事や行動などのために現在存在している状況」と定義しています。未来の世代は汚染と破壊のレガシーを残されることになる、という例文です。
つまり英語の legacy は、良いものを残すときにも、悪いものを押し付けるときにも、同じ語で表せます。日本語の「遺産」もそうですが、レガシーというカタカナ語になると「古くて重荷」の側に寄りやすいので、ここは意識して切り分ける必要があります。
レガシーの語源はラテン語 legare=「使者に任じる、遺言で贈る」
レガシーの語源をたどると、意外なところに出ます。Online Etymology Dictionary によれば、legacy が英語に現れたのは14世紀後半で、当時の意味は「任務のために送られた人々の一団」、つまり使節団でした。
中世ラテン語の legatia から入った語で、そのもとがラテン語の legatus「大使、使節、代理人」です。さらにその動詞が legare で、「任務を与えて送る、代理人に任命する、遺言によって定める」という意味を持っていました。
同辞典によれば、「遺言によって残された財産、遺言による贈与」という語義が現れたのは15世紀半ばのスコットランドです。使節団の意味から遺産の意味へ移るまでに、およそ100年かかっています。
なぜ使節と遺産が同じ語になるのかは、legare という動詞が「代理人に任命する」と「遺言で贈る」の両方を抱えていたことで説明できます。同辞典は関連語 legate の項で、この語がおそらく字義どおりには「契約によって結ぶ」であり、lex(属格 legis)「契約、法」と関係している可能性を示しています。
| 年代 | 意味 | 出どころ |
|---|---|---|
| 12世紀半ば | legate=教皇の公認された代理人 | Online Etymology Dictionary |
| 14世紀後半 | legacy=任務のために送られた人々の一団 | Online Etymology Dictionary |
| 15世紀半ば | legacy=遺言で残された財産(スコットランド) | Online Etymology Dictionary |
| 1690年代 | legacy-hunter=遺産をねらう人 | Online Etymology Dictionary |
Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄もほぼ同じで、後期中英語の語であり、とくに教皇使節としての代理人の職務や役職を表してもいた、としています。古フランス語 legacie、中世ラテン語 legatia「使節の職」、legatus「委任された人」、そして legare「委任する、代理に立てる、遺贈する」という並びです。
根まで下りると、印欧祖語の語根 *leg-「集める」に行き着きます。集めること、選ぶこと、そこから「法」や「委任」が枝分かれした、という筋道です。
レガシーの発音は /ˈleɡ.ə.si/ で最初に体重が乗る
legacy は3音節で、Cambridge Dictionary も Oxford Learner’s Dictionaries も、イギリス英語とアメリカ英語の両方を /ˈleɡ.ə.si/ と同じ発音で示しています。強く読むのは最初の leg です。
| 辞書 | 発音表記 | 備考 |
|---|---|---|
| Cambridge Dictionary(名詞) | /ˈleɡ.ə.si/ | 英米とも同じ |
| Cambridge Dictionary(形容詞) | /ˈleɡ.ə.si/ | 名詞と同じ |
| Oxford Learner’s Dictionaries | /ˈleɡəsi/ | 複数形 legacies |
| Cambridge 米語辞典 | /ˈleɡ·ə·si/ | ― |
注意したいのは第1音節の母音です。/e/ は「エ」に近い短い音で、日本語の「レ」よりも口を横に開きます。カタカナの「レガシー」は最後の「シー」を伸ばしますが、英語の -cy は /si/ と短く切ります。
真ん中の -a- はあいまい母音の /ə/ です。ほとんど聞こえないので、実際の響きは「レガスィ」に近くなります。三拍目を伸ばさないことが、いちばん通じ方を変えるポイントです。
複数形は legacies で、Oxford Learner’s Dictionaries と Cambridge Business English Dictionary の両方が明記しています。y を i に変えて -es を付ける、規則どおりの変化です。
レガシーの意味①=亡くなった人から受け取る財産
Cambridge Dictionary が第一に挙げているのはこの語義です。誰かが亡くなったあとにその人から受け取るお金や財産、と定義しており、レベルは C2 です。
例文は、年配のいとこが彼女にささやかなレガシーを残していた、という文で、leave someone a legacy という型が示されています。おばからささやかなレガシーを受け取った、ホスピスにレガシーを残した、という例文も並びます。
Oxford Learner’s Dictionaries はこの語義に synonym inheritance と添えています。つまり法律的な「遺贈」にあたる語です。
同辞典のコロケーション欄には、動詞として bequeath(somebody)、leave(somebody)、get が挙がっています。前置詞は in a/the legacy と legacy from、決まり文句として heir to a legacy(レガシーの相続人)が示されています。
Cambridge Business English Dictionary はこの語義に LAW の印を付け、亡くなった人から個人や組織が受け取るお金や財産、と定義しています。多くの人が、生涯支援してきた慈善団体にレガシーを残したいと考えている、という例文です。
同辞典は demonstrative legacy、general legacy、residuary legacy という法律用語も関連語として挙げています。遺言の分野では、legacy がかなり細かく分類される語だということです。
レガシーの意味②=過去から残っているもの
日常でよく使われるのはこちらです。Cambridge Dictionary は、自分の歴史の一部であるもの、あるいは以前の時代から残っているもの、と定義しています。legacy of という型が示されています。
この語義の例文は、良い側と悪い側にきれいに分かれます。ギリシャ人は豊かな文学のレガシーを持っている、その小説が彼のレガシーになるだろう、が良い側。戦争は憎しみのレガシーを残した、彼らの口論は苦々しさのレガシーを残した、傷跡は水ぼうそうのレガシーだ、が悪い側です。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じ幅を持っています。若い音楽家たちへの彼の影響こそが、おそらく彼の最大のレガシーだ、という例文と、何世紀にもわたる放置のレガシーによって問題はいっそう悪化した、という例文が同じ語義の下に並びます。
同辞典のコロケーション欄は、形容詞として enduring、lasting、great を挙げ、動詞として bequeath(somebody)、leave(somebody)、leave behind を挙げています。前置詞は legacy from と legacy of です。
覚えておくと便利なのが legacy lives on という言い方です。彼女が亡くなったあと、家族は彼女のレガシーが生き続けるよう慈善団体を設立した、イギリスではオリンピックのレガシーがオリンピックパークのある東ロンドンで最も強く生き続けている、という例文が載っています。
Cambridge の米語辞典も、過去の出来事の結果であるもの、と定義し、内戦の苦い legacy、という例を挙げています。
レガシーシステム・レガシーメディアの legacy は形容詞
ITの現場で耳にする「レガシーシステム」の legacy は、名詞ではなく形容詞です。Cambridge Dictionary は legacy を形容詞 [only before noun]、つまり名詞の前でしか使えない語として別に立てています。
定義は、まだ存在している、あるいはまだ使われているが、その後に発明された他の似たものよりも前の時代のものである技術などを表す語、です。「使えない」とも「悪い」とも書かれていない点に注目してください。
例文は、多くの企業が、古いOSでしか動かないレガシーアプリを抱えているためにハードウェアを更新しない、という文です。どちらの processor も64ビットの新しいソフトに加えて32ビットのレガシーアプリを動かせる、という例文も載っています。
Cambridge Business English Dictionary の定義はさらに具体的で、レガシー製品やレガシーシステムとは、もう購入できない、あるいはあまり使われていないが、それでも一部の人や企業によって使われ続けているもの、としています。legacy computer/information systems という組み合わせです。
legacy media という組み合わせも辞書に載っています。Cambridge Dictionary の例文は、レガシーメディアは若い人たちのあいだで不信感を強めながら見られており、彼らはニュースをソーシャルメディアの発信者へ求めるようになっている、という文です。
さらに、主にアメリカ英語として航空業界の用法も立っています。1978年より前から存在していた古い航空会社を指す語で、この年を境にアメリカの航空会社は規制が緩められ、新しく安価な会社が生まれ始めた、と説明されています。legacy carrier、legacy airline という形です。
ビジネスのレガシーは「過去の行動と決定の結果」
Cambridge Business English Dictionary の第一の語義は、過去の行動と決定の結果として発展してきた状況、です。日常の辞書より一段ドライで、良し悪しの評価を含んでいません。
legacy of sth という型が示されており、この10年の政策が巨額の消費者債務というレガシーの原因だ、という例文が並びます。過去の判断が今の状況を作っている、という文脈で使う語です。
同じ語義には前向きな例文も載っています。その大統領の最大のレガシーは、人は努力すれば自らの暮らしを良くできるという、彼が常に発していたメッセージだった、という文です。オリンピックの成功は、その都市に恩恵という持続的なレガシーを残した、という例文もあります。
Oxford Learner’s Dictionaries の例文にも、彼女は父のレガシーを継ぐと語った、そうした態度は植民地時代からのレガシーだ、技術革新の大きなレガシー、戦時下の年月が遺した永続的なレガシー、といった文が並びます。
ビジネス文書で legacy を使うときは、この「積み上がってきた結果」という感覚をつかんでおくと、訳語を「遺産」に固定せずにすみます。
レガシーと heritage の違い
どちらも日本語では「遺産」と訳されますが、辞書の定義と語源を並べると役割の違いがはっきりします。legacy は「渡されたもの」、heritage は「受け継いだ文化そのもの」です。
| 語 | Cambridge Dictionary の定義 | 発音 | 数え方 |
|---|---|---|---|
| legacy | 亡くなった人から受け取るお金や財産/以前の時代から残っているもの | /ˈleɡ.ə.si/ | [C] |
| heritage | 過去に作られ今も歴史的な重要性を持つ、伝統・言語・建物などその社会の文化に属する特徴 | /ˈher.ɪ.tɪdʒ/ | [U](文化の語義) |
数え方からして違います。Cambridge Dictionary は legacy を [C]、heritage の文化の語義を [U] としています。legacy は一つ二つと数えられる具体的なもの、heritage は塊として捉える抽象的なもの、という差です。
語源も別の系統です。Online Etymology Dictionary によれば、heritage は1200年ごろに「相続されうるもの」の意味で現れ、古フランス語 heriter「相続する」を経て、ラテン語 heres(属格 heredis)「相続人」に行き着きます。祖先から伝えられた状態や条件という意味が加わったのは1620年代です。
つまり heritage の根は「相続人」、legacy の根は「委任・遺贈」です。heritage には人が誰かから受け取るという向きが最初からあり、legacy には誰かが誰かへ託すという向きが最初からあります。
使い方でも差が出ます。Cambridge Dictionary の heritage には cultural heritage という組み合わせと、人の人種的・民族的・宗教的・文化的な背景という語義があります。I am an American of Persian heritage. のように出自を語る語で、ここに legacy は使えません。
レガシーを使った英語の例文とよくある間違い
まず辞書の型をそのまま借ります。The war has left a legacy of hatred.(戦争は憎しみのレガシーを残した)、The Greeks have a rich legacy of literature.(ギリシャ人は豊かな文学のレガシーを持っている)。legacy of ~ が中心の型です。
人が主語になる型も定番です。leave someone a legacy(誰かにレガシーを残す)、bequeath a legacy(レガシーを遺贈する)、be heir to a legacy(レガシーの相続人である)。いずれも Oxford Learner’s Dictionaries のコロケーション欄に載っています。
形容詞として使うなら名詞の前だけです。legacy app、legacy media、legacy carrier、legacy computer systems、legacy infrastructure。Cambridge Dictionary が [only before noun] と明記しているので、This system is legacy. のような使い方はできません。
間違いの一つ目は、legacy をいつも否定的に訳してしまうことです。The novel will be his legacy. を「その小説が彼の負の遺産になる」と読むと逆になります。辞書の例文には良い側と悪い側が同じ数だけ並んでいます。
二つ目は、名詞と形容詞を取り違えることです。名詞の legacy は可算で複数形は legacies、形容詞の legacy は名詞の前にしか置けません。
三つ目は発音です。最後の -cy を「シー」と伸ばさず、/si/ と短く切ります。強く読むのは最初の leg で、真ん中はあいまい母音の /ə/ です。
レガシーについてよくある質問
どちらでもありません。Cambridge Dictionary の例文には、ギリシャ人は豊かな文学のレガシーを持っている、その小説が彼のレガシーになるだろう、という良い側の文と、戦争は憎しみのレガシーを残した、傷跡は水ぼうそうのレガシーだ、という悪い側の文が同じ語義の下に並んでいます。Cambridge Business English Dictionary も、巨額の消費者債務というレガシーと、都市に恩恵を残した持続的なレガシーを、どちらも例に挙げています。
形容詞です。Cambridge Dictionary は legacy を [only before noun] の形容詞として別に立て、まだ存在している、あるいはまだ使われているが、その後に発明された他の似たものよりも前の時代のものである技術などを表す、と定義しています。Cambridge Business English Dictionary は、もう購入できない、あるいはあまり使われていないが、それでも一部の人や企業によって使われ続けているもの、としています。
語源から違います。Online Etymology Dictionary によれば、legacy はラテン語 legare「任務を与えて送る、代理人に任命する、遺言によって定める」に由来し、heritage はラテン語 heres「相続人」に由来します。Cambridge Dictionary は legacy を [C]、heritage の文化の語義を [U] としており、数え方も分かれます。出自を語る I am an American of Persian heritage. のような文に legacy は使えません。
ラテン語 legare までさかのぼります。Online Etymology Dictionary によれば、legacy は14世紀後半に「任務のために送られた人々の一団」の意味で英語に現れ、中世ラテン語 legatia、ラテン語 legatus「大使、使節、代理人」を経て、動詞 legare「任務を与えて送る、代理人に任命する、遺言によって定める」に行き着きます。遺産の語義が現れたのは15世紀半ばのスコットランドです。根には印欧祖語の語根 *leg-「集める」があります。
レガシーのまとめ
レガシーとは、過去から今に残っているもののことです。英語の legacy は名詞としては「亡くなった人から受け取る財産」と「以前の時代から残っているもの」、形容詞としては「旧世代の」を表します。語源はラテン語 legare で、もとの意味は「任務を与えて送る、代理人に任命する、遺言によって定める」でした。
英語の legacy には良い側と悪い側の両方があります。豊かな文学のレガシーも、憎しみのレガシーも、辞書では同じ語義の下に並んでいます。日本語のカタカナ語だけを頼りに「時代遅れ」と訳すと、意味が反転する場面があります。
heritage との違いは根にあります。legacy は「委任・遺贈」、heritage は「相続人」から出発した語です。誰かが託したものが legacy、その社会が受け継いでいる文化が heritage、と押さえておけば、英語で書くときに迷いません。
レガシーの出典
legacy の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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