アーカイブとは、歴史的な記録や文書のまとまり、そしてそれを保管しておく場所のことです。英語の archive をそのままカタカナにした語で、図書館や放送局の資料室から、メールソフトの「アーカイブ」ボタン、SNSの非表示保存まで、同じ1語が幅広く使われています。
この記事では、アーカイブの意味を英英辞典の語義からたどり、ギリシャ語 arkheion(役所・公共の建物)までさかのぼる語源、record との線引き、辞書が示す発音と数え方、ビジネスやITでの使われ方、そして動詞 archive の型までを整理します。日本語では「保存する」とだけ理解されがちな語ですが、英語の archive が背負っている中身を一度そろえておくと、英語で書くときにも読むときにも迷わなくなります。
アーカイブとは何か(結論)
アーカイブとは、①歴史的な記録のまとまり、②その記録を保管している場所、③日常的にはもう使わないデータを収めたコンピュータのファイル、の三つを指す語です。どれも「後で必要になるかもしれないから、手元から離してきちんと取っておく」という一点でつながっています。
Cambridge Dictionary は archive の第一の語義を、ある場所・組織・家族に関する歴史的な記録の集まり、と定義しています。添えられているのは archive film/footage/material という組み合わせと、これらの古い写真は家族のアーカイブに入れるべきだ、という例文です。
第二の語義は、歴史的な記録が保管されている場所です。地元のアーカイブで村の記録を調べてきた、という例文が並びます。第三の語義が、日常的に使う必要がなくなった電子情報や文書を保存しておくためのコンピュータファイル、です。
Oxford Learner’s Dictionaries も同じ並びで、政府・家族・場所・組織の歴史的な文書や記録の集まり、およびそれらが保管されている場所、を第一に置いています。the National Sound Archive、archive film、BBCのアーカイブは資料ではちきれそうだ、という例文が示されています。
つまり英語の archive は、中身(記録そのもの)と入れ物(保管場所)の両方を同じ語でまかなっています。日本語のアーカイブも同じ広がり方をしているので、ここは素直に対応すると考えて差し支えありません。
アーカイブの語源はギリシャ語 arkheion=「役所・公共の建物」
アーカイブの語源をたどると、最後に行き着くのはギリシャ語の arkhē、つまり「政府」です。Online Etymology Dictionary によれば、archives という名詞が英語に現れたのは1600年ごろで、当時の意味は「証拠として保存された記録や文書」でした。
道筋はこうです。フランス語の archif(16世紀。現代フランス語では archives)から入り、その元は後期ラテン語の archivum、複数形 archiva で、意味は「書かれた記録」、そしてそれらが保管される場所でした。
さらにさかのぼると、ギリシャ語の ta arkheia、つまり「公的な記録」に行き着きます。この arkheia は arkheion の複数形で、arkheion 自体の意味は「町の役所、公共の建物」です。そしてその元が arkhē、「政府」で、字義どおりには「始まり、起源、第一の場所」を表します。
同辞典は、英語で「公的な記録や歴史的な文書が保管される場所」という語義が立つのは1640年代だと記しています。つまり最初は記録そのものを指し、40年ほど遅れて場所の意味が加わった、という順番です。
Oxford Learner’s Dictionaries の語源欄は、17世紀初頭に「記録が保管される場所」の意味で入ったとしており、フランス語 archives、ラテン語 archiva・archia、ギリシャ語 arkheia、arkhē という同じ道筋を挙げています。動詞のほうは19世紀後半から、と付け加えられています。
アーカイブの発音は /ˈɑː.kaɪv/|米音は /ˈɑːr.kaɪv/
archive は名詞でも動詞でも、第1音節の ar を強く読みます。名詞と動詞でアクセントが移動する語ではありません。
| 品詞・辞書 | イギリス英語 | アメリカ英語 |
|---|---|---|
| 名詞(Cambridge) | /ˈɑː.kaɪv/ | /ˈɑːr.kaɪv/ |
| 動詞(Cambridge) | /ˈɑː.kaɪv/ | /ˈɑːr.kaɪv/ |
| 名詞(Oxford) | /ˈɑːkaɪv/ | /ˈɑːrkaɪv/ |
| 名詞(Cambridge米語辞典) | ― | /ˈɑr·kɑɪv/ |
気をつけたいのは第2音節です。kaɪv の母音は二重母音の /aɪ/ で、最後は /v/ の音になります。カタカナの「アーカイブ」は最後を「ブ」と読みますが、英語では上の歯を下唇に当てて出す /v/ なので、「ブ」と唇を閉じてしまうと別の音に近づきます。
もうひとつは第1音節の長さです。/ɑː/ はしっかり伸ばす母音で、イギリス英語では r を読まず、アメリカ英語では /ɑːr/ と r の色が付きます。「アーカイヴ」と書いたほうが近い、と覚えておくと通じ方が変わります。
語のレベルも辞書で確認できます。Oxford Learner’s Dictionaries は、歴史の記録という語義に C1、コンピュータの語義に C2 の印を付けています。トピック欄はそれぞれ History と Computers です。上級者向けの語ではありますが、使われる場面は日常のアプリ画面にまで下りてきています。
アーカイブの英語 archive は可算名詞で、複数形 archives が基本
Cambridge Dictionary は名詞の archive に [C]、つまり可算の印を付けています。そのうえで「also archives [plural]」と添えており、複数形でそのまま使う形が併記されています。
Oxford Learner’s Dictionaries も見出しに(also archives [plural])と書いています。Cambridge の米語辞典も同じく(also archives)です。三つの辞書がそろって複数形を併記している語は多くありません。
Cambridge Business English Dictionary はもっとはっきりしていて、記録の集まりという語義に [C, usually plural]、つまり可算だが通常は複数形、と付けています。an archive of financial statements(財務諸表のアーカイブ)という例が挙がっています。
一方で、ITとインターネットの語義には [C] だけが付いています。メールソフトが作る1個のファイル、ウェブ上に置かれた1個の資料群を指すときは、単数で数えるということです。数え方が語義ごとに分かれている、と押さえておけば迷いません。
アーカイブと record(記録)の違い
辞書の定義文を並べると、archive と record の関係がはっきりします。archive の定義そのものに record が含まれているとおり、record が1枚1枚の記録で、archive はそれを集めて保管した全体です。
| 語 | 辞書の定義 | 語源の中心 |
|---|---|---|
| archive | ある場所・組織・家族に関する歴史的な記録の集まり/それが保管される場所 | ギリシャ語 arkhē「政府」 |
| record | 書き留める、あるいはコンピュータに保存して情報を将来のために残すこと | ラテン語 cor「心臓=記憶の座」 |
Cambridge Dictionary は動詞 record の「情報を保存する」語義を B2 とし、将来のために、書き留めるかコンピュータに保存することで情報を保っておくこと、と定義しています。彼女は身に起きたことを何でも日記に記録する、という例文です。
語源も対照的です。Online Etymology Dictionary によれば、record は1200年ごろの recorden にさかのぼり、ラテン語 recordari「思い出す、心に呼び戻す」から来ています。re- に cor(属格 cordis)=「心臓」が付いた形で、心臓が記憶の座と見なされていたことによります。learn by heart という言い方と同じ発想です。
つまり record は「覚えておく」から出発した語で、archive は「役所」から出発した語です。個人が心に留めるのが record、組織が公に残すのが archive、と考えると語感のずれが説明できます。
ビジネスのアーカイブは「もう使っていない記録のまとまり」
Cambridge Business English Dictionary の定義は、日常の英英辞典より一歩ドライです。archive を、もう使われていない記録の集まり、と定義しています。「歴史的な」という言葉すら入っていません。
例に挙がるのは an archive of financial statements、つまり財務諸表のアーカイブです。過ぎた期の決算書のように、価値はあるが日々は開かない書類を指しています。
| 語義 | 定義 | 数え方 |
|---|---|---|
| 一般 | もう使われていない記録の集まり | [C, usually plural] |
| IT | 日常的に使う必要がなくなった電子情報や文書を保存するコンピュータファイル | [C] |
| インターネット | 人が見られるようにネット上に置かれた文書やファイルの集まり | [C] |
動詞のビジネス語義は、将来また取り出せるように古い記録や文書を保存しておくこと、と定義されています。ここでも軸は「取り出せること」です。捨てるのではなく、取り出せる状態にして手元から外す。これがビジネス文脈のアーカイブです。
メールやデータのアーカイブは「削除」ではない
メールソフトやSNSのアーカイブを削除と同じだと思っている人は少なくありませんが、辞書の定義はまったく違います。Cambridge Dictionary の定義は、日常的に使う必要がなくなった電子情報を保存すること、です。消すとは書かれていません。
Cambridge Business English Dictionary はさらに具体的で、メールアプリのアーカイブ機能を使って、6か月より古いメッセージをアーカイブファイルへ移そう、という例文を挙げています。移す、であって、消す、ではありません。
同辞典のIT語義は、コンピュータ上の占有スペースがより小さい特別なファイルへ、日常的に使わない電子情報を保存すること、と定義しています。つまりアーカイブの目的のひとつは、使う場所を軽くすることです。
その性質がよく分かる例文も載っています。削除されたと思われていた31,000通のアーカイブ済みメールが、後になって見つかった、という文です。アーカイブしたものは消えていないので、あとから出てきます。
Oxford Learner’s Dictionaries のコンピュータ語義は、安全性と保全のために別の装置に保存された、コンピュータシステム上のデータの電子的な記録、としています。光学メディアは財務記録のような重要な企業データのアーカイブを保存するのに最適だ、という例文です。
動詞のアーカイブ=archive と派生語 archival・archiving
動詞の archive は [T]、つまり目的語を取る他動詞です。Cambridge Dictionary は、歴史的な記録や文書をアーカイブに保存すること、と定義しています。
例文は、このソフトウェアは企業がメールをアーカイブし、また取り出すのを助ける、という文です。archive and retrieve と対で使われている点に注目すると、保存と取り出しがセットの語だと分かります。
Online Etymology Dictionary によれば、動詞の archive は1819年から記録があり、「アーカイブのコレクションに綴じ込む、または入れる」という意味でした。archives という名詞から作られた動詞で、名詞の1600年ごろよりおよそ200年あとの登場です。
| 形 | 品詞 | 辞書が示す使い方 |
|---|---|---|
| archive | 動詞 [T] | 記録や電子情報をアーカイブに保存する |
| archived | 過去分詞・形容詞的 | archived e-mails(アーカイブ済みのメール) |
| archiving | 名詞 [U] | long-term archiving(長期のアーカイブ保存) |
| archival | 形容詞 [not gradable] | archival research(文書資料を使った調査) |
archiving は Cambridge Business English Dictionary に名詞 [U] として立っており、ディスクが壊れやすいということは、長期のアーカイブ保存に使えるほど信頼できないということだ、という例文が添えられています。不可算なので a や複数形は付きません。
archival は Cambridge の米語辞典に形容詞 [not gradable] として載っています。発音は /ɑrˈkɑɪ·vəl/ で、名詞と違って第2音節にアクセントが移ります。家族の歴史について archival research をしている、という例文です。very archival のように程度を付けられない語だという印も付いています。
アーカイブを使った英語の例文・コロケーション・よくある間違い
まず辞書に載っている組み合わせから押さえます。Oxford Learner’s Dictionaries のコロケーション欄は、形容詞として extensive、massive、rich を挙げています。大規模で中身の濃いアーカイブ、を言うときの定番です。
動詞との組み合わせは build、build up、create です。アーカイブは「作る」「積み上げる」もので、日本語の「アーカイブ化する」に近い言い方はこの三つで表せます。
例文もそのまま借りられます。We are collecting documents to build up an archive.(アーカイブを築くために文書を集めています)、He searched through the archives for previous owners of the house.(彼はその家の以前の所有者を探してアーカイブをくまなく調べた)、They are trying to create an archive of spoken language.(彼らは話し言葉のアーカイブを作ろうとしている)。
間違いの一つ目は、アーカイブを「削除」の意味で使ってしまうことです。辞書のどの語義にも「消す」は入っていません。消すつもりなら delete、片づけるつもりなら archive、と使い分けます。
二つ目は、組織の資料室を単数のまま the archive と言い切ってしまうことです。可算名詞ではありますが、Cambridge Business English Dictionary は [C, usually plural] としており、辞書の例文も the company archives、the BBC’s archives と複数形です。
三つ目は発音です。第1音節の /ɑː/ をしっかり伸ばし、後ろは /kaɪv/ と読みます。archival だけはアクセントが後ろの /ɑrˈkɑɪ·vəl/ に移るので、名詞と形容詞を続けて言うときに引っかかりやすいところです。
アーカイブについてよくある質問
まったく別です。Cambridge Dictionary は archive を「日常的に使う必要がなくなった電子情報や文書を保存すること」と定義しており、消すという語義は立てていません。Cambridge Business English Dictionary も「将来また取り出せるように古い記録や文書を保存しておくこと」としています。削除されたと思われていた31,000通のアーカイブ済みメールが後で見つかった、という例文が、その性質をよく表しています。
語義によります。Cambridge Business English Dictionary は記録の集まりという語義に [C, usually plural] を付けており、組織の資料室を指すなら the company archives のように複数形が基本です。一方、ITとインターネットの語義には [C] だけが付いているので、メールソフトが作る1個のファイルやネット上の1個の資料群は単数で数えます。
ギリシャ語の arkhē(政府)までさかのぼります。Online Etymology Dictionary によれば、英語の archives は1600年ごろに「証拠として保存された記録や文書」の意味で現れ、フランス語 archif、後期ラテン語 archivum を経て、ギリシャ語 ta arkheia(公的な記録)に行き着きます。arkheion 自体の意味は「町の役所、公共の建物」です。
record が1枚1枚の記録、archive がそれを集めて保管した全体です。Cambridge Dictionary は archive を「歴史的な記録の集まり/それが保管される場所」、動詞 record を「書き留めるかコンピュータに保存して情報を将来のために残すこと」と定義しています。語源も record はラテン語 cor(心臓=記憶の座)、archive はギリシャ語 arkhē(政府)で、個人の記憶と公の記録という対比になっています。
アーカイブのまとめ
アーカイブとは、歴史的な記録のまとまり、それを保管する場所、そして日常的に使わないデータを収めたコンピュータファイルのことです。語源はギリシャ語の arkhē(政府)で、arkheion は「町の役所、公共の建物」を指していました。英語の archives が現れたのは1600年ごろ、場所の意味が加わったのは1640年代です。
英語の archive は可算名詞ですが、組織の資料室を指すときは複数形 archives が基本です。IT・インターネットの語義では単数で数えます。動詞は他動詞で、1819年から記録があり、archive and retrieve のように保存と取り出しがセットで語られます。
いちばん大事なのは、アーカイブが削除ではないという点です。辞書はどの語義でも「取り出せる状態で手元から外す」と書いています。ここを取り違えなければ、英語でも日本語でもアーカイブという語の扱いを間違えません。
アーカイブの出典
archive の定義・語法・発音・語源は以下の英英辞典と語源辞典で確認しました。

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