映画やSNSで見かける英語が、辞書を引いても意味が合わない。そんなときによく出てくるのが「スラング」です。ただ、スラングという言葉自体の意味があいまいなまま使われていることも少なくありません。
この記事では、スラングとは何かを定義から確かめ、俗語や口語との違い、使ってよい場面と避けるべき場面、そして辞書に載っている定番のスラングまでを整理します。
スラングとは何か(結論)
スラングとは、特定の集団や場面で使われる、くだけた言い回しのことです。英語の slang をそのままカタカナにした語で、辞書の見出しには載っていても、公式の文書や改まった場では避けられる種類の言葉を指します。
重要なのは、スラングは「間違った英語」ではないという点です。文法から外れているわけでも、意味が不確かなわけでもありません。使ってよい場面が限られているだけで、その場面の中では正しく通じます。
もう一つの特徴は、移り変わりが速いことです。数年で古く感じられるものもあれば、定着して普通の語になるものもあります。cool のように、もとはスラングだった語が今では辞書の一般的な語義として扱われている例もあります。
スラングの語源
slang という語が英語に現れたのは十八世紀の半ばごろとされ、はじめは特定の職業や集団だけで通じる言葉づかいを指していました。そこから意味が広がり、今のようなくだけた表現全般を指す語になりました。
語そのものの由来ははっきりしていません。北欧の言語との関係を挙げる説がありますが、確定していないというのが辞書の扱いです。英語の語の中では珍しく、語源の欄に断定が書かれていない語のひとつです。
日本語には「スラング」として入り、英語のくだけた表現を指す場面で主に使われます。日本語の中の俗語を指して「スラング」と言うこともありますが、その場合は英語由来という含みが薄れます。
スラングと俗語・口語・方言の違い
近い言葉が並ぶため、どれがどれか混ざりやすい領域です。分ける軸は、何によって限定されているかです。
| 語 | 何で限定されるか | 例 |
|---|---|---|
| スラング(slang) | 集団と場面 | 仲間内でだけ通じる言い方 |
| 口語(colloquial) | 話し言葉かどうか | 会話では自然、文書では避ける |
| 方言(dialect) | 地域 | その土地の言い方 |
| 専門用語(jargon) | 職業・分野 | その業界の中だけの言葉 |
口語とスラングはとくに近く、重なる部分があります。目安として、話し言葉なら広く使えるものが口語、使う人や場面がもっと狭く、改まった場では浮くものがスラングです。英英辞典では informal と slang というラベルで区別されており、slang のほうが限定が強いことを表しています。
スラングを使ってよい場面・避ける場面
スラングは、相手との距離と場の性質で判断します。距離が近く、場がくだけているほど自然になり、逆になるほど浮きます。
| 場面 | スラング | 理由 |
|---|---|---|
| 友人との会話 | 自然 | 距離が近く、場もくだけている |
| SNSの投稿 | 自然 | 話し言葉に近い書き方が前提 |
| 職場の雑談 | 相手による | 関係ができていれば自然 |
| 面接・商談 | 避ける | 改まった場で距離が遠い |
| メール・報告書 | 避ける | 書き言葉で記録が残る |
判断に迷ったときは使わないほうが安全です。スラングを使わなかったために失礼になることはありませんが、使ったために軽く見られることはあります。相手が使いはじめてから合わせる、という順番にすると外しません。
辞書に載っている定番のスラング
移り変わりの速い領域ですが、長く使われて主要な英英辞典に載っているものもあります。ここでは定着している例を挙げます。
| 表現 | 意味 | 使う場面 |
|---|---|---|
| cool | いい・かっこいい | 広く使える。ほぼ一般語 |
| awesome | すごくいい | 会話・SNS。米国で多い |
| hang out | 一緒に過ごす | 友人との予定の話 |
| chill | くつろぐ・落ち着く | 友人との会話 |
| my bad | 私のミスだ | 軽い謝り。改まった場では不可 |
| no worries | 気にしないで | 広く使える。豪州で特に多い |
この中では cool と no worries が最も安全で、初対面でも角が立ちません。逆に my bad は軽さが前面に出るため、仕事上の謝罪には向きません。同じスラングでも重さが違う、という点は押さえておく価値があります。
スラングによくある省略の型
スラングと並んで話題になるのが、話し言葉での縮め方です。gonna(going to)、wanna(want to)、gotta(got to)は、書き言葉では避けられますが、会話では非常によく現れます。
これらは厳密にはスラングというより、発音がそのまま綴りになったものです。英英辞典では informal のラベルが付き、話し言葉の表記として扱われます。聞き取りのためには知っておく必要があり、自分で書く場面では避ける、という扱いが実用的です。
文字の省略も同じ系統です。SNSで見かける短い書き方の多くは、打つ手間を減らすために生まれたもので、意味は元の語と同じです。読む力としては覚え、書く場面では相手を見て選びます。
日本語のスラングと英語のスラング
日本語にも同じ働きの言葉があります。仲間内でだけ通じる言い方、若い世代で先に広がる言い方、数年で古びる言い方。構造は英語とまったく同じです。
違いが出るのは、敬語の有無です。日本語には敬語という別の仕組みがあるため、改まった場では言葉づかいそのものが切り替わります。英語には敬語の体系がない代わりに、語の選び方と縮め方で距離を調整します。
この差があるため、日本語で丁寧に話す感覚をそのまま英語に持ち込むと、硬すぎる印象になることがあります。逆に、日本語のくだけた感覚のまま英語のスラングを多用すると、軽すぎる印象になります。調整のつまみが違う、と考えると扱いやすくなります。
スラングが一般語に変わるまで
スラングの一部は、使われつづけるうちに限定が外れ、ふつうの語になります。この移り変わりは辞書のラベルに現れます。はじめは slang、次に informal、やがてラベルそのものが消える、という順です。
cool がその代表です。もとは特定の場面で使われるくだけた語でしたが、今では主要な英英辞典に一般的な語義として載り、幅広い場面で使われています。同じように、はじめは限定されていた語が時間をかけて中心へ移る例はいくつもあります。
逆の動きもあります。広く使われていた言い方が、ある時期を境に古く響くようになり、使う人が限られていく。言葉が集団を示す目印として働くため、広まりすぎると目印としての価値が下がり、新しい言い方に置き換わる、という循環が起こります。
だからスラングを学ぶときは、一覧を丸暗記するより、辞書のラベルを見る習慣を作るほうが長持ちします。一覧は数年で古びますが、ラベルを確かめる手つきは古びません。
スラングを使った例文
友人との会話の例です。Do you want to hang out this weekend?(今週末、遊ばない?)。Sounds cool.(いいね)。どちらもくだけていますが、失礼にはなりません。
軽い謝りの例です。Sorry, my bad.(ごめん、私のミス)。同じ場面でも、仕事上のやり取りなら I apologize for the mistake. と言い換えます。同じ内容を、場に合わせて重さだけ変えている形です。
聞き取りの例です。I’m gonna call you later. は I am going to call you later. と同じ内容です。書くときは going to に戻します。話す側が縮めても、書く側が縮める必要はありません。
スラングのよくある間違い
一つ目は、意味だけ覚えて場面を確かめずに使うことです。スラングは意味よりも使う場面のほうが重要な語群で、意味が合っていても場が合わなければ通じ方がずれます。辞書で slang や informal のラベルを見る習慣があると避けられます。
二つ目は、古い教材で覚えた表現をそのまま使うことです。移り変わりが速い領域なので、十年前の定番が今は古く響くことがあります。定番として長く残っているものから使うほうが安全です。
三つ目は、地域差を考えずに使うことです。米国でよく使われるものが英国では通じにくかったり、逆だったりします。英英辞典には North American English、British English といった注記が付くので、そこを見て判断できます。
スラングについてよくある質問
聞いて分かる力としては覚える価値があります。映画や会話では避けて通れないためです。一方、自分から使う分は必須ではありません。読み取りは広く、発信は狭く、という配分が扱いやすくなります。
主要な英英辞典を引くのが確実です。語義の横に slang、informal といったラベルが付いており、どの場面向けかが明示されています。ラベルが無ければ一般語として扱われている語です。
別のものです。略語は長い語を短くしたもので、改まった文書でも使われます。スラングは場面が限られたくだけた表現で、長さとは関係がありません。両方に当てはまる語もありますが、分類の軸は違います。
場面が合っていれば、むしろ自然に響きます。問題になるのは、改まった場で使ったときだけです。場を読んで選べているかどうかが見られている、と考えるのが実態に近い理解です。
スラングのまとめ
スラングとは、特定の集団や場面で使われるくだけた表現のことです。間違った英語ではなく、使ってよい場面が限られている言葉です。口語より限定が強く、方言は地域、専門用語は職業で限定される点で区別されます。
移り変わりが速いため、聞いて分かる力として広く覚え、自分で使う分は定番に絞る。英英辞典のラベルを見て場面を確かめる。この二つを守れば、スラングで失敗することはほとんどなくなります。
出典
slang の定義・語源・用法ラベルは以下の英英辞典で確認しました。

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